(注意:以下は09年4月1日のエイプリルフールに、ジャンク作品の目次に掲載した嘘最終章の再録です。
目次から直接リンクある形態ではなくなってるので、多少違和感あるかもしれませんが、そこらは御了承下さい)
「なぜですじゃ! なぜなんですじゃ、ウェールズさまーーー!!」
「あなたは誰よりも平和を願っていたはずだ! お考え直し下さい、ウェールズさま!!」
「パリー、ボーウッド……お前らは、そこでしばらく頭を冷やすんだな」
「いやぁすいませんね、二人とも」
「貴様、バーノン!」「ウェールズさまに仕える身でありながら諫言を忘れるなど、血迷りおったか!」
「いえいえ、見解の相違というやつでしょうかね。お互いにウェールズさまが仕えるべき主であることに変わりはありませんよ。ですが、それ故に殿下に求められたならば、私が返す言葉に否はありませんのでね」
「……行くぞ、バーノン」
「はっ、全ては殿下の御心のままに───」
かつての臣下を打ち捨て、皇太子はただ己が望む世界を手にすべく、暴虐の道を行く。
「おさらばです、父上」
「うっ……ウェールズ、貴様……」
戴冠式で王位を息子に授けた前王は、そのまま新王に殺され果てる。
「くくくっ……ふははははっ! ああ、そうだ。死んで償え、父王ジェームズ!!」
血に汚れた戴冠式。新王は血飛沫に染まりながら高らかに哄笑を上げる。
蒼白になり動揺する諸侯の中で、笑みを絶やさず新王の即位を歓迎する者がただ一人。
「……ああ、なんて面白い御方だ。どこまでもお仕え致しますよ、我が君、我が主上、我等が覇王、ウェールズ陛下」
かくして、かつての英傑は───覇道へ堕ちる。
アルビオン王国興亡記 最終章
「ふはははははっ! なんだ、なんだその醜悪な行動理由は!! くくくっ……ふはははははっ! 面白い、ああ面白い!」
「くっ、ジョゼフさま! お逃げ────あ」
ガリアの宮殿に降り注ぐ天の雷。倒れ伏すミョズニトニルン。
紅に染まる空を飛び立つ飛竜の群れが次々とブレスを放つ。
もはや抵抗する術なく、ただ殺され行くガリア軍。
それでも、狂王の哄笑は止まらない。
「ははははっ! 点ではなく面による制圧か、確かにこれは余の『加速』とて避けようがない。くくくっ……余から全てを奪い尽くすつもりか。ああ、それもいいだろう。ならば進むがいい! 世界に混乱を! 破壊を撒き散らせ! だがそれは思いのほか重い道だぞ、アルビオンの覇王──ウェールズよ!」
「……ふん。そんなことは、知ってるよ」
浮游大陸アルビオン。
大量の風石とエルフの技術者の協力を得て、大陸そのものを戦艦に見立てた奇襲攻撃。
天空の絶対要塞───機動戦艦アルビオン。
ガリア首都上空に展開した航空戦力の手で、電撃的になされた飽和爆撃により、
ガリアの宮殿グラントロワは一夜にして焔に包まれ消え去った。
「あの者は危険です。ガリアの狂王すら一蹴する程の狂気を備えながら、その知謀にも些かの衰えもない、強大にして凶悪な存在です」
ハルケギニア随一の大国はアルビオンに併呑された。
グラントロワを焼き尽くすと、ついでアルビオンの覇王は国内のあらゆる寺院へ兵を出す。
抗う術なく虐殺され行く神官たちの悲鳴により、ハルケギニアの大地は慟哭に染まる。
「でも姫さんは、ウェールズ王は良い人だって……。だから、俺はまだ……納得できない」
「サイト……ええ、そうね。私もそう。それにアンリエッタさまは、きっとウェールズさまのことが……」
「……あなたたちの想いを否定することは、私たちにもできません。しかし……」
「人は変わるものだよ、ガンダールヴ。特に親しい者を亡くしたものは尚更だ」
「親しいものを亡くした……?」
「アルビオンの前王が暗愚だったとは思わない。でもね、あの方は少し小心が過ぎた」
内乱鎮圧により拡大した王権をより確かなものとするべく、前王は愚かにも南部に手を出した。
圧倒的な王軍の兵力により南部を蹂躙しつくすと、これでようやく肩の荷が降りたとでも言うかのように、王位を息子へ譲り渡すと宣言する。
「前王にとっては息子を思いやった親心。でも、それはきっと、彼には決して許すことなどできない一線を踏み越えた行為だったのだろうね」
「どういうことだ、ジュリオ?」
「王位を譲り受けると同時、ウェールズ王はそのまま──前王の首を自ら撥ねた」
『っ!?』
「戴冠式は血に染まった。恐怖により諸侯を従えると、ウェールズ王はそのままガリアを一夜にして攻め滅ぼした」
「彼に一分の理もなかったとは、私も思いません。しかし、狂気に囚われた王に国を治めることはできない」
「だから、僕らロマリアも君たちに協力しよう。伝えて欲しい、トリステインの聖女に」
『あの天空の絶対要塞───アルビオンを攻略する術を』
世界の均衡を保つ力の天秤は、遥かに突出した一国の登場により、脆くも崩れさる。
「そうですか……ロマリアもアルビオン攻略戦に兵を出すと……」
「はい、陛下。猊下自らの確約を頂きました」
「でも姫さん、あんたはそれでいいのか? まだ他にも道が……」
「……ウェールズさまは、かつてわたくしに仰っていたことがあります。自分が悪意に呑まれ、ただ世界に破壊を振りまくような存在に堕ちるときがきたならば、そのときは容赦なく──君が僕を討てと」
『…………』
「全ては約束の為。だからこそ、わたくしは─────」
天空に座す絶対要塞アルビオンに対して、地上に兵力を展開した連合軍が正面から当たり敵兵を引き付ける。
死に満ちた戦場の裏で、少数精鋭の選抜部隊が密かにアルビオンに上陸し、王都を目指す。
「兄さんは変わってしまった。きっとそれは姉さんが逝ってしまったことが原因……。兄さんは、きっと許せなかった。心許した人たちを、自らの父親が手にかけた事実が……。でも、あの優しかった兄さんが、本心から世界を壊すことを望んでいるとは思えない。私は兄さんを止めたい。あの優しかった兄さんに戻って欲しい。でも、兄さんを止める力が私にはない……それが、とても悔しい……」
「テファ、お前……」
「ティファニア、あなた……」
「私に力を貸して、サイト、ルイズ───!」
錯綜する世界の意志。
ハルケギニアの大地を遥か高みより見下すアルビオン。
地を這う人々に抗う術はなく、それでも僅かな希望を掛けて、人々は天へと挑む。
「くっ……サイト、先に言ってくれたまえ。どうやら僕たちはここまでのようだ」
「ギーシュ!?」
「サイト、立ち止まっちゃダメ! ギーシュ達の想いを無駄にしないで!」
「くっ……くそぉぉぉぉぉおぉーーーーーーー!!!」
一人一人と欠け行く仲間たち。
それでも彼らの意志を思えば、ここで歩みを止めることはできない。
「やれやれ。格好つけちゃって」
「ふっ。それでも誰よりも愛しい君と最期まで共に在れるなら悔いはない! ああ悔いはないさ、モンモン!」
「だからモンモン言うなーーーっ!」
幾多もの犠牲の果てに辿り着いた、アルビオンの中枢。
風石とエルフの秘術により強化された始祖の遺産が運び込まれた白の宮殿の深遠。
「止まれないのか!? 本当にもう全てが遅いのかよ、ウェールズさん!?」
「ああ、もう遅い。彼女達は生き返らない。こんなことなら、チマチマと裏で動こうなんて思わずに、最初から全てを滅ぼしてしまえば良かったよ。結局、僕は馬鹿だったのさ。臆病だから、誰よりも護りたかった人達も、たった一人しか護れなかった」
「でも、それでも、世界を道連れに破壊をばら蒔こうなどいう考えは、絶対に、絶対に間違ってます、ウェールズさま!」
「まあ、そうなんだろうな、主人公。トリステインやゲルマニアは正直どうでもいい。父王を煽ったロマリアのクソ坊主どもを仕留めたら、後は君らの物語を好きに紡ぐがいいさ。
だがまあ、折角ここまで来てもらったんだ。君らには空中要塞アルビオンの真の力を見せてあげるよ。そう、アルビオンの雷を──」
「アルビオンの雷……?」
「ああ、そうだ。かつて始祖ブリミルが始めてアルビオンに降り立ったサウスゴータの地で発掘された天の雷。エルフの協力を得ることで始めて起動することが可能になった。かつて始祖の祈祷書に記された悪神ヴァリヤーグどもを討ち滅ぼした、天雷の輝きを再びここに!」
天空の絶対要塞アルビオンが黄金の輝きに染まる。
荒れ狂う大気がうねりを上げ天へと集い───天の雷が、ハルケギニアの全土へ降り注ぐ。
轟く雷撃の束は天を切り裂き、地を砕く。雷光の消えた世界に残るは、蹂躙され尽くした大地のみ。
「あっはっはっはっ! 素晴らしい!! 圧倒的な力だ! 最高のショーだとは思わないか!? はっはっはっは──!!」
「ああ、兄さん、ウェールズ兄さん、もう止めてーーー!」
「もう僕は──いやオレは止まれない。ああ、そうだ。止まれるはずがない!
間違ってるのはオレじゃない、この狂った───世界の方だっ!!」
アルビオン王国興亡記、最終章
「かつての『想い』も消え果てた、血潮に塗れる覇道編」
COMING SOON!!
「……という夢を見た」
「ここまで引っ張っといてまさかの夢オチですかい!?」
「やれやれ。いったい普段の私は殿下からどんな性格に見られているのでしょうねぇ、ボーウッド」
「いや、意外と的を得たキャスティングだと思うぞ、バーノン」
「まったく、なに考えてんだかね、うちのバカ皇太子は」
「あれ? でも兄さんの夢に出た……亡くなってしまった誰よりも大切な彼女って、もしかして……え? えーー!?」
あとがき
夢オチとか安易でサーセンwww
- 2007/07/16(月) 09:40:35|
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姉さん女房フラグ 乙!
・・・ところでマチルダ姉さんが所用で王都に来たとき、仕事をさぼる口実を見つけた
王子さんが、考え無しに、一緒に食事したり芝居みたり、いつも世話になってるから
宝飾品をプレゼント(前の誕生日の時、忙しくて行けなかったしティファも好きだろ)と、
都の貴族や関係者全員が「なるほど!」と言う振る舞いをやったら?
とりあえず、サウスゴーダの大公閣下と仲良くなりたがる貴族が群れを成すと思う
- 2009/04/02(木) 00:08:08 |
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