全手動軽文量産機

──A.L.M──

書庫へ戻る |  日記過去ログ |  アビス総合目次 |  ジャンク作品目次 |  お勧め一次創作 |  お勧め二次創作 |  掲示板 |  注意書き |

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告

TOA中編目次

二次中編
▼ もしも崩落後に断髪式がなかったら
  ──バンザイ、超振動ライフ──


基本的な前書き
  ゲームTales of the Abyss のアクゼリュス崩落後からの原作分岐もの、中編。
  特に変わろうとか決意せず、いつまで経ってもウダウダしてる、テンション変動激しい躁鬱ルーク
  長編と違って設定も原作準拠、全編安心して気楽に読める軽いノリ。
  ……ノリと勢いで突っ走っただけとも言う。一応、完結済み。


   前編 / 中編 / 後編 / エピローグ  (ALL-TEXT)   あとがき  [感想返信まとめ]


/掲示板/総合目次へ/
スポンサーサイト
  1. 2020/07/24(金) 00:40:34|
  2. TOA中編

バンザイ、超振動ライフ 前編



              【1】



 英雄になって師匠と一緒にダアトに亡命だぜっ!
 ルンルン気分でアクゼリュスに行ったら、師匠に裏切られました。
 しかも俺の超振動で虐殺かまされ、アクゼリュスは全滅という罠!

 ………ふぅ………鬱だ……。
 俺、もうマジで死んだ方がいいね。
 ああ……もう色々とダメ過ぎる。鬱だ。
 あー……もう、よし死のう。いますぐ死のう。

 適当な紐で首を括ろうとしたら、寸での所をティアに止められた。

「何をやってるの!」
「いや、ちょっと首を括ろうと……」
「ふぅ…………」

 なんだかものすごい勢いで溜め息をつかれた。

「あなた、バカ?」
「…………だ、だって、俺はもう死にてぇんだよ!!」
「死んで、また逃げるの?」
「…………お、俺は……俺は……」
「そんな事だからアクゼリュスは……っ───!」

 ティアが途中ではっとしたような顔になって言葉を止めた。
 よっぽどこっちがアレな表情をしていたらしい。
 ああ、気を使わせちまった。
 ……鬱だ。マジ死にたい。

「ごめんなさい……少し、言葉が過ぎたわ」
「…………」
「でも、撤回はしない。あなたは、間違ってるわ」

 その後、ティアと何を話したのかはよく覚えていない。
 ただ、このままこんな辛気臭い場所に止まってると死になくなってくるので、ティアに泣きついて一緒に地上に戻ることにした。
 一人で戻る度胸がなかったからだが、ヘタレとか言うな。

 別に地上に戻って何があるという訳でもないが、鬱のままでいるのも限界だった。
 ブタザルが僕も行くですのーと能天気に着いてきたけど……正直、ちょっとうざかったです。



              【2】



 地上に戻ったらガイの奴と再会した。
 ガイは俺みたいなクズのためにジェイド達と別れて合流してくれたらしい。

 うぉっー!! なんかもう死にたくなるほど嬉しいぜ!!

 あーもうなんか空が飛べそうなくらいに、気分は最高にハイってやつだぜぇっ!

 躁状態になって理性が飛んだ俺が滝壺に頭から身を投げようとした所を、ティアとガイの二人係で全力で止められた。

「あのな、お前何やってんだよ!」
「いや、なんかきっと空も飛べるはずというか……」
「はぁ……」

 もうものすごい勢いで溜め息をつかれました。

「辛いのはわかる。だが、死ぬのはダメだ」
「……でもさぁ、ガイ。俺、なんかもう生きてる理由が見出せないんだよ」

 つらつらと、アクゼリュス崩落後の自分の心境を語った。

「犯した罪の意味とか、償いの方法とか、色々と頭に浮かぶけどさ。どれも答えは一つなんだよ」
「……そうか」

 つまりただでさえ鬱になってる頭が死ねと命じるわけだ。

「俺、頭悪いしさ。マジで、どう動いたもんかわからねぇんだよ……」
「……人間、何が一つでも死ねない理由があれば、生きていられるもんだぞ?」

 俺の頭をポンポン撫でると、ガイは俺の側を離れた。

 改めて、ガイの言葉の意味を考える。
 死ねない理由……か。

 そんなものが、都合よく見つかればいんだけどなぁ……



              【3】



 ようやく地上に戻ったところで、何故かダアトに向かうことになった。
 ちなみに、洞窟出た所でジェイドと合流した訳だが、ずっと無視されております。
 俺にはしゃべる価値もないということか?
 ……うん、否定できませんね。
 あー……マジ死にたい。

「……何を考えているんです?」

 鬱りながら海を眺めていたらジェイドが背後に立っていた。

「うん、ちょっと俺って死んだ方がよくねぇ? とか考えてた」
「……導師を助けるまで自重してください。その後なら幾らでもどうぞ」

 死ぬのは結構ですが、志気が下がるのだけは御免ですからねぇと肩を竦められた。

 ……うん、それもそうですね。
 きっと俺みたいなクズが死んでもガイは落ち込んでしまうだろう。
 死んでもいいよと肯定されたのはひどく気分が落ち込んだ。
 でも正論だったので、とりあえずイオンを助けるまで自殺は我慢することにした。

 よし、気分一新! イオンを助けよう!!
 よーしよしよしよし! 目的出来たら何だかオラ、テンションが上がってきたぞっ!

 ヒャッホウー!!

「ルークのやつ、どうしちまったんだ?」
「……また躁状態に戻ったのね」
「やれやれ……厄介な人です」


 教団に着いたところでアニスと合流した。

「アッシュ? ……って、なんだルークか。何で居るの?」

 素で存在を疑問視されました。
 だが! 使命感に燃える今の俺には何の問題にもならん!!

「はっはっはっ! イオンを救出するために決まってるだろ。いざ行かん、イオンを助けにー!!」

 俺は天高く剣を突き出し、皆の先頭に立った。
 カッコイイですのご主人様ーとミュウの上げる声に俺のテンションはますます鰻昇りだぜ!!

「キモっ! ……な、なんでこんなテンション高くなってるの、ルークのやつ?」
「……まあ、いろいろあったのさ」
「……ええ、いろいろあったのよ」
「ノーコメントです」


 ジメジメした教団本部を俺はそれこそハイテンションで一気に駆け抜けた。
 立ちふさがる教団兵をちぎっては投げ、ちぎっては投げ、ばんばん突き進む。

「助けに来たぜ、イオン!!」
「ルーク?」
「へっへっへっ! 心配する必要はもう何もねぇぜ! 俺がいりゃもう百人力だぁ!!」
「そ、それは心強いですね」

 俺は口からつばを飛ばしながら、ちょっとラリった薬中のような酩酊感に酔いしれた。

 なんだかイオンがドン引きしてるように見えなくもなかったが、気にしないことにした。

 とりあえずイオンは救出できた訳だし、何の問題もあるまい。

「……ルーク」

 部屋の奥から響いた声に、俺の意識が凍り付く。

 そこではナタリアが俺の顔を見据えていた。

 やばいやばい。なんか凄い勢いでテンションが落ちてきた。

 アッシュはナタリアに昔プロポーズしてる訳で、俺はアッシュの代わりに王都に居た。
 これまで散々ウザがってたけど、ナタリアは美人さんな訳で、悪い気はしなかった訳ですよ。
 むしろ俺ってモテル? とか増長してましたよ。

 でも、はい、全部人違いでした。

 はははっ───って、全然、笑えねぇぇぇっ!!

 もう死のう。今すぐ死のう。調子こいてた過去の俺を全力で絞め殺したいね。

 そのまま剣で身体を貫こうとした所を、ナタリアに全力で止められた。

「何を考えてるんですの、ルーク!!」
「う、いや、だって、俺の勘違いっぷりに死にたくなったというか……」

 ポツリポツリと、アッシュの居場所を奪ってた自分の罪悪感を打ち明ける。

「ふぅ……何を言うかと思えば、そんなことですか」

 全てを聞き終えたナタリアは、なんだか意外なほどにあっさりと被りを振った。

「いや、でもさ……」
「まったく私が悩んでる暇もありませんわね。いいですか、ルーク」

 ナタリアは腰に両手を添えながら、俺に向き直る。

「あなたも私の幼馴染みであることに、何も変わりはありませんわ」

 微笑む彼女の表情が胸にドキューンっと来た。
 あれ、なんかドキドキが停まりません。
 え、もしかして俺、ナタリアに惚れちゃった? 

 え、嘘……これってマジですか?





……続けぇ!
  1. 2007/06/03(日) 01:30:00|
  2. TOA中編
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

バンザイ、超振動ライフ 中編



               【4】



 そんな訳でナタリアに惚れちまった俺は生きる理由を見出した。
 でもナタリアが惚れてるのはアッシュのデコッパゲの野郎だ。

 もう好きな相手に惚れてる奴が居るってのは言葉に出来ない類のモヤモヤが胸の内に込み上げる。
 もうあいつどうしてくれようかと頭の中でアッシュを百回ほど刺し殺した所で、船が故障した。

 修理にはある程度の物資が必要だと言うことで、近隣の港としてケテルブルクに上陸した訳だが。

 しかし、寒い! マジ寒い!! デラ寒い!!

「こんな腹筋丸出しの変態ルックで居たら軽く百回は凍死できるぜっ!!」
「けっこうなことじゃないですか」

 ……同意されてしまった。

 それはそれで物哀しいと思ったが、言われてみればそれもそうだと思えてきた。
 うん、とりあえず人間関係を整理してみよう。

 アッシュ=ナタリアの王子様でラブラブ。ダークヒーロー。
 俺=幼馴染みとして扱わないでもない。ジェノサイダー。

 ……改めて考えると、絶望的な戦力差だよな。
 うぅ……もうマジ死にたくなった。

 凍死……それもいいかもな。

 この雪国の知事と面会したりもしたのだが、俺は終始上の空だった。

 知事の話が終わった後で、ジェイドの言葉に感銘を受けた俺はさっそく試してみることにした。
 ホテルで部屋に行く皆と別れ、一人外へと向かう。

 しかし、ホテルの外に出た俺を、怪しい黒服集団が取り囲みやがった。

 ま、まさか……こいつら、俺のケツを狙ってやがるのか!?
 こいつはやべぇ!! ガチホモの臭いがぷんぷんするぜっ!

 戦々恐々しながら為す術なく拉致されて、運び込まれた先は知事邸でした。

 あれ、おかしいなーと思っていたら、ジェイドの妹であるネフリーさんが目の前に出てきた。

 はて……? これはもしかして、あれなのだろうか?

「……何をしているんですか?」
「え、いや、人妻の熟れた身体を俺の若さで慰めようと……」

 譜術の一撃が俺の股間を掠めて飛んだ。
 背後で、一瞬で凍り付いた家具が爆ぜ割れる音が響いた。
 服を脱ごうとしていた俺の動きは完全に止まる。

「次はないですよ?」
「もう二度と致しません!」

 誠心誠意の土下座をかます俺に、ネフリーさんも何とか怒りをおさめてくれた。

 そして始まる本題は、レプリカ技術開発者、ジェイドの嬉し恥ずかし過去話でした。
 しかし、話を聞く限り兄さんの天才っぷりを自慢してるようにしか聞こえない。
 これは……もしかして、あれだろうか? 所謂一つのブラコン自慢?

「ルークさん、あなたはどう思いますか?」
「そりゃまた凄いお兄さんですね。ゲヘヘ」
「……ともかく、私の話は以上です」

 なんだか蛆虫でも見るような蔑みの視線を送られた。でもちょっと快感。

 話を締め括ったネフリーさんに、俺は追い出されるようにして屋敷の外に出た。

「ネフリーに話を聞きましたね?」

 うおっ、ジェイド!?
 待ち構えていたかのようにジェイドのやつが立っていた。

「な、なんのことかなぁ……?」
「……まあ、いいでしょう」

 ちょっと言葉にできない空気が俺たちの間を続く。

「じゃ、じゃあ、俺はちょっと試してみたいことがあるかそろそろ……」
「わかりました。あ、それとルーク。この街で死ぬことは許しませんよ?」

 ネフリーの手間が増えますからねぇ、と凄い目で脅された。

「SirーyesーSirー!!」

 本能の促す警告に従って、俺は全力で敬礼を返していた。

 しかし……なんだかんだ言ってジェイドもシスコンだよな。



               【5】



 そんなこんなで、ようやく帝都に着いた訳だが、早速死にたくなった。
 もう……なんか今回ばかりはマジで限界。

 何があったかというと、森でガイが俺に斬りかかってきたのだ。

 一応、六神将に操られてたって話だが、事はそう簡単にすまないらしい。
 何でも、もとからそういう類の感情抱いてないと、操れないそうな。

 あの善人の見本のようなガイにまで殺意抱かれてるってどんな悪党よ?
 ……はい、もう死にたくて仕方ないです。

 そんなこんなで鬱になった俺は、港から海面をじーっと瞬き一つせずに眺めていた。

「……また死にたくなったの?」

 気付くと、隣に立ったティアが俺に小さく問い掛けていた。

「……なんか、よくわからなくなった」
「わからない……?」

 どこかきょとんと目を見開くティアの瞳を見据えながら、俺は自分の胸の内を明かす。

「自殺するのも一つの手だけど、むしろガイに殺されるなら、それも悪くないかもって……」
「バカぁっ!」
「へぶらばぁっ?!」

 頬を思いっきり右ストレートで撃ち抜かれた。
 あ、鼻から血がドクドク。

「そんな簡単に命を割り切らないで!」
「な、何だよ、ティアだって俺ん家に襲撃仕掛けたとき、あれ絶対特攻だったろ!」
「あ、あれは兄を止めるために仕方なく……」
「やっぱそうじゃねぇーか!」
「それでも今のあなたの行動は認められないわ!」

 ヒートアップした罵り合いは数十分間の間続いた。

 とりあえず結論として、カレーに福神漬けは必ず付けるということで合意した。

「……あれ、俺らって何の話してたんだっけ?」
「あら……?」



               【7】



 いや、なんか今の俺はスゲェ勢いでテンション上がってます。
 疑うことなかれ、なんと今の俺は空を飛んでいるのですよ!!
 ひゃっほうっ! もうマジで感動もんだぜっ!!
 感動のあまり外に飛び出したいぐらいだぜ!

「飛び下りたりするなよ、ルーク」
「ま、まさか俺がそんなことするわけないだろ!」

 集まる疑惑の視線に俺はあさっての方向を見据えることでしのいだ。

 そんなこんなで、降り立った崩落中のセントビナーで人助け。
 髭老人以下、民間人を助けることに成功した俺たちだったが、崩落は依然停まらない。

「どうすんの?」
「そうね……預言から外れた事象が起き始めた今なら、お祖父様も動いてくれると思うわ」
「ああ、テオドーロさんか」
「確かに、まずはユリアシティの住民に対策があるか尋ねておきましょうか」

 そんな訳で、俺たちはまたぞろあの陰気臭い街にまた向かう事になるのであった。



               【8】



 魔界でいろいろやって地上に戻ってきたら、そこは戦場だった。

 って、なんじゃそりゃ!?

 もう、かなりの大戦争状態です。
 人間がゴミのように死んで行ってます。悲惨だ。
 あーあー、もうこりゃダメだな。
 鬱だ。
 平和のために死のう。今すぐ死のう。

 急激に鬱が入り始めた所で、ぷるぷると握り拳を作って震えていたナタリアが顔を上げた。
 俺の襟首をものすごい力で掴んでな。

「戦争を止めましょう!!」 
「がふっ!?」

 ちょっ、そこ、襟、絞ま……っ?!

「ルーク、本陣へ向かいますわよ!!」
「…………」

「……あの、ナタリア。ルーク、白目を向いてるんだけど」

「ま、まあ、ルーク!!」
「と、とりあえず治癒をしましょうナタリア」


 渾沌したルークを囲みわいわいガヤガヤ。


「……あーあ、あれ完全に決まってるよね」
「……な、ナタリアは意外と力が強いからな」
「……まあ、ルークが死にかけるのはいつものことですからねぇ」


 やれやれと外野三人は肩を竦めるのだった。



               【9】



 はっと意識を取り戻したら、砂漠の街にいました。

 どういう状況よ……?
 しきりに首を傾げる俺に、ナタリアがちょっとどもりながら説明してくれた。
 それによると、ここに最高指揮官が居るらしい。俺たちは彼に直接掛け合って、停戦命令を出して貰おうという計画だそうな。
 何故かここに至るまで俺の意識は飛んでるのだが、ナタリアが言うならその通りなんだろうな。うん。

「うん、ナタリアが言うなら俺、信じるぜ」
「うっ……そ、そうですか」

 ナタリアは胸元を押さえ、顔を真っ赤にさせて顔を俯けてしまった。
 うんうん、照れてるのか。ナタリア可愛いよナタリア。

 まあ、実際は罪悪感に打ちひしがれていただけなのだが、俺は全然気付かなかった。


 ともあれ、ケセドニアでジェイド達と合流。
 最高指揮官に掛け合って停戦させようとしたら、そいつはモースと話していやがった。

 俺とナタリアは必死になって戦争の停戦を訴えた。
 しかし、それもモースに妨げられた。

「ご一同、偽の姫に臣下の礼を取る必要などありませんぞ」
「無礼者!! いかなローレライ教団の大詠師と言えども、それ以上の侮辱はキムラスカ・ランバルディア王国への侮辱となろうぞ!!」

 ナタリアの惚れ惚れするようなリンとした一括にも、モースは余裕そのものといった表情だ。

「私はかねてより敬虔な信者から懺悔を受けていた。曰く、王妃のお側役との間に生まれた女児を……おそれ多くもすり替えたと。この話はすでにしっかりとした証拠も添え陛下にもお伝えした。バチカルに行けば陛下は───」
「ちっ、ふざけた戯言を抜かしてんじゃねぇよこの典型的中年体系がぁ───!!」
「げぷろがぁっ!?」

 死にやがれぇっと俺が放った本気のテンプルに、モースが凄まじい勢いで鼻血を吹き出す。

「ちょ、お前、大詠師である私にこんなことをして、ただで……」
「まだまだぁっ!!」
「がぁふ! げふんっ!?」

 俺は頭を振り子のように揺らしながら、左右から連打を続けざまに放つ。

「こ、これは……!?」
「ガイ、何か知っているのですか?」
「上半身で∞の軌道を描きながら、身体の反動を利用して左右の連打を叩き込む……間違いない、こいつはデンプシーロールだ!?」
「まっくのうち! まっくのうち!」

 ガイの解説とアニスの声援を受けながら、俺は最後の一発を叩き込んだ。

「……ふっ、ナタリアを愚弄する奴は万死に値する。これぞ正義、俺のジャスティス」

 決めポーズを取る俺に、カッコイイですのーご主人様ーとミュウが合いの手を入れる。ふっふっふっ、もっと讃えよ。

「る、ルーク。た、大変だ。皆さん、ひとまず僕は教団に戻ります。後の処理は任せて下さい」

 イオンが冷や汗を掻きながら、いろいろと裏工作するべく気絶したモースを連れて、ダアトに戻って行った。

 ……あれ、もしかして俺、けっこうやばいことやっちまった?

「当たり前でしょう……バカ」

 ティアが呆れ顔で額を押さえていた。うっ……返す言葉もないぜ。

 ともあれ、その後は避難民の受け入れの打ち合わせとかをケセドニア商人ギルドのアスターとしていた。

《───おい、クズ! 聞こえるか!!》

 打ち合わせの最中、なんか変な電波が飛んできたが無視。

《聞こえてるんだろ! 無視するんじゃねぇ! 応えろっ!!》

 徹底的に無視。

 そうして無視していたら、アスターの屋敷を出たところで、後頭部をいきなりぶん殴られた。

「さっさと応えろ、このクズがっ!!」
「ってぇー!? なんだとこのデコッパゲがぁっ!!」
「ハゲ───っ!? こ、このレプリカ野郎!!」
「なんだとこのオリジナル野郎がぁっ!!」

「───お止めなさい、二人とも!!」

 罵り合う俺達をナタリアが止めた。

 数十分間もの間、正座をさせられ、延々とナタリアにお説教を受けました。

 でも、ちょっと快感。
 
 ゲフンゲフン……と、ともかく、その後はアッシュからの情報で、遺跡に潜る事になった。
 何でも各地のセフィロトは地殻を通して繋がってるので、遠隔操作できるらしい。
 戦場が崩落する可能性がある今、ダオ遺跡でパッセージリングを操作するべしってことらしい。
 そんなこんなで遺跡に向かった俺たちは、何とか戦場を無事に降下させることに成功したのだった。



              【10】



 何故かよくわからないのだが、ダアトでイオンと話をしていたらバチカルに拉致られた。

「さぁ、お覚悟をお決めなさい」

 キムラスカの高級官僚になんか小難しい話を諭された後で、この毒杯煽って死ねと言われた。
 ナタリアにまで毒をすすめやがるのがイラっと来たが、武器は取り上げられ抵抗できない。
 なので、ナタリアの分の毒まで奪って俺は一息に飲み干してやった。

 愛の為になら死ねるぜ!

 と、言葉だけなら浪漫を感じることもできるだろうが、実際にやっちまったらそんな余裕は皆無。

「ルーク!?」
「あがががが……」

 毒に顔を真っ青にして、俺は身悶えながら天井に手を伸ばす。
 あ、もう死ぬ! こりゃやばい! マジやばい!!

 本気で死にそうだなぁーと思った所で、乱入したティア達に助けられた。

 なんとか一命を取り留めた所で、ティアのお説教が炸裂。

「バカァっ!」

 今回ばかりは言い返す言葉も見つからず、素直に謝る事になってしまった。
 でも……うん、俺も無駄に死にたいわけじゃないのかもしれないなぁと最近思えてきた。
 これも一つの進歩ってやつだろうかね?

 とりあえず、バチカルを追われた俺たちは湿原経由でベルケンドまで逃げ出すのだった。



……全力で続く!!

  1. 2007/06/03(日) 01:00:31|
  2. TOA中編
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

バンザイ、超振動ライフ 後編



              【11】



 なんかベルケンドでヴァン師匠と再会したらクズ呼ばわりされました。
 あれ……俺の耳が悪いのかなぁと聞き直したけど、本気で蔑すんだ目で見られた。

「劣化レプリカに用はない」

 ……鬱が急激にぶり返してきましたよ。

「お前は預言通りに歴史が進んでいると思わせるための捨て駒に過ぎない」
「その言葉、取り消して……っ!」

 ティアが俺のために言い返してくれたが、もうなんか凄い勢いで鬱だ。
 うぅ……もう死のう。マジで死のう。

 しかし自殺する暇もなく、部屋に突入してきたアッシュによって、師匠との対決は避けられた。
 でも、激しい鬱に襲われた俺は宿屋に一人引き籠もりました。

 そんなこんなで、俺が宿屋に引き籠もってから数日が経過。
 突然、扉が強引にこじ開けられた。

「な、なんだ? って、アッシュ!?」
「いつまで惚けてやがる! テメェはこいつらを連れて、さっさとシェリダンに向かえ!」

 現れたアッシュの野郎は老人三人を俺に押しつけると、シェリダンに向かえと引き籠もっていた俺のケツを宿屋から蹴り出しやがった。

「ルークさん、お昼ごはんはまだですかいね?」
「いや、お昼ごはんはもう喰っただろ……」

 そんなこんなで、今の俺は老人たちの世話をしながら、貨物船に乗っております。

 な、何やってるんだろうな、俺……?



              【12】



 シェリダンで皆と合流した俺達は、改めて王都に向かうことになった。

 しかも、これ、俺の提案です。

「やっぱりキムラスカとマルクトの連中にも話通しておく必要があると思うんだ。うん、仲間外れよくない。イジメ、かっこわるい」

 そんな風に久しぶりに皆と再会して、テンションがいやにハイになってた俺が提案した意外なほどにマトモな提案に、みんなもさして異論はないと賛成ムード。

 じゃあ今すぐにでも向かおうかとなった所で、ナタリアが申し出た。

「少しだけ……考える時間を下さい」

 ナタリアが言うなら仕方ない! もう幾らでも時間を作りますぜっ!!

 前言を即座に覆す俺の変わりように、皆がものすごい冷たい視線を向けてきたが、俺は気になりません。

 そんなこんなで、俺たちはシェリダンに一泊することになった。
 いまこそ、ナタリアを慰め落とすときだぁっと息巻いていた俺は、翌朝、一人物憂げな表情で外に向かうナタリアを発見した。
 タイミングを見計らって慰めようとナタリアの後をストーキングした所で、なんとアッシュの野郎が出てきやがった。

 くっ……死ね! もう死ねアッシュ死ねぇっ! 
 頭の中で百回は捻り殺してやりながら、そっと様子を伺っていたら、二人はなんだか良いムード。
 昔したプロポーズの言葉を言い合ってますよ。

 ……もう死のう、まじで死のう。

 トボトボと宿屋に戻った所をティアと遭遇。

「……盗み聞きは良くないと思うわ」
「ほ、ほっといてくれぇ!! 俺はハートブレイクでもう死にそうなんだよ!」
「……は、ハートブレイク?」
「ああそうだよ失恋だよ! 恋もしたことないやつにこの気持ちはわからねぇだろうよ!!」
「バカァっ!!」
「へぶらばぁっ!!」

 また殴り飛ばされました。

 気付いたら王都に出発する時間になってましたよ。

 なんだか凄い元気を取り戻したナタリアの笑顔の綺麗さに泣きたくなった……



              【13】



 和平が結ばれました。

 うん、なんか驚くほど早くここまで来ましたよ。

 なんかナタリアと伯父さんもすごい順当に仲直りしました。
 俺の存在はもうなんというか空気?
 なんか俺居なくてもよくねぇと改めて死にたくなった……。

 でも死んでる暇もないくらい慌ただしく動いた後で、改造したタルタロスで地殻に突入することになった。
 何でも、地殻振動停止装置を積んだタルタロスを地殻に静めることで、魔界のマントルが硬化して、外郭大地が降下しても泥の中に沈まなくなるそうな。

 改造も終り、いよいよ出発って段階で、六神将の襲撃が来たーっ!!

「わしらのことは気にするなっ!!」

 もうとんでもない数が死んでいく中、俺たちは苦渋をのんでシェリダンを後にした。

 本気の死ぬ気ってのは、あーいうのを言うのか……。
 俺は自分の薄っぺらさに、ちょっと衝撃を受けていた。

 そして数日後、何とか突入ポイントに着いて、地殻に突入した。
 そこまではよかったのだが、脱出の段階になって突然、襲撃が来やがった。

「この艦をお前たちの墓標にしてやるよ!」

 こうして六神将の一人、疾風のシンクと戦闘は始まった。

 でもさすがに六体一では無理だったようで、あっさりと決着は着いた。
 やっぱ戦いは数だよな、兄者!

「くっ……」
「そ、その顔は……!?」

 戦闘終了後、仮面を落したシンクの素顔に衝撃の事実が判明。

「やっぱり、あなたも導師のレプリカなのですね」
「あなた、も……? ───まさか、イオンさまっ!?」
「ええ、僕も導師───オリジナル・イオンのレプリカなのです」

「「「な、なんだってー!?」」」

 さらにイオンの衝撃発言が続いた。

 つまりイオンとシンクは俺の御同類、オリジナルの複製体ってことだ。
 二人の性格の違いに、同じレプリカでも色々あるもんだなぁと一人感心していたら、シンクにすんげぇ視線で睨まれました。

「……忌ま忌ましい、なんで、レプリカの癖に、こいつはこんな能天気にしてられるんだ」
「いや、そう言われても……」

「代用品にすらならないレプリカはクズさ。結局、使い道があるやつだけが、お情けで息してるってことさ……」

 そう言い残すと、シンクは自ら地殻に身を投げた。

 ……本当の絶望ってのは、あーいう状態を言うんだなぁと、俺はかなり打ちのめされた。



              【14】



 シンクとの戦闘後、地殻でティアがローレライに憑依されてぶっ倒れた。
 何が起こったのかとベルケンドで検査して貰ったら、やばい事実が判明。
 何でも、パッセージリングを起動するごとにティアの身体に障気が浸透されていくらしい。
 もうこんなことやってる場合じゃねぇだろと俺はティアを説得にかかった。

「もう身体ヤベェ─んだろ? もうパッセージリングの起動なんてしてる場合じゃねぇって!」
「……でも、私以外に起動できる人は居ないわ」
「そんなのどうにでもなる! 他の方法を探せばいいだけだろ? 怖くねぇのかよ?」
「……それが必要なら、私はやるだけよ」
「怖いなら怖いって言えよ! 俺ならびびって無理だね。もう逃げるね」
「……あなたと私は違うわ」
「っ! ああそうかよっ! もう勝手にしろっ!」


「…………バカなのは……私ね」


 結局、喧嘩別れに終わってしまった。
 くそっ、こんな事が言いたいわけじゃないんだけどな……



              【15】



 ティアが行方不明になったと思ったら、アッシュの野郎とヴァン師匠に会っていた。
 わ、わけがわからねぇと思うが、本当のことだ。頭がどうにか、なりそうだ。
 なんかこの後に及んで、師匠を説得できるか試してみたらしい。

「でも、もう兄に私の言葉は届かなかった」
「……だろうな」

 やはりまだ気まずい空気が漂ってるね。うん。

 その後も代替手段が見つかるはずもなく、ティアがパッセージリングを起動して廻った。


 ちなみに、どうでも良いことだが、ダアトのパッセージリングを起動する際に、モースが亡くなっていることがわかった。
 死因は脳溢血とか言う話で、わりとポックリ逝ったそうな。
 医者によると、少し前に頭に受けた何らかの衝撃が原因で、血管が切れたんだろうという話だ。
 少し前に頭に受けた衝撃……ん、なんだか微妙に心当たりがあるような気がしないでもないが、まあ、きっと気のせいだろう。俺には何の関係もない話だよ。うん。そうに違いない。そう思おう。

 知らない方がいい真実ってのもあると思うんだよ。うん。


 ともあれ、こうして順調にパッセージリングを起動して廻った俺たちは、ついに最期のパッセージリングがあるロニール雪山に辿り着いた。
 最期ってことで絶対に六神将が居るだろうとは思っていたが、案の定待ち構えていやがった。

 それぞれが、これが最後とばかりに、因縁のある相手と会話を交わす。

「イオンさま……邪魔しないで……」
「アリエッタ、僕は……」
「イオンさま! アリエッタなんかにお話することないです!」

「ティア、来てしまったか」
「教官、私は兄の極論にはついていけません。それを止めることが出来ない自分も歯痒いけど、止めようともしないあなたも……軽蔑します」
「……では、もう私も容赦はすまい。閣下の敵は殲滅する!」

「お姫様は城でおとなくしていればよかったものを」
「私を侮辱しないで! 私には父の代わりに全てを見届ける義務があるのです!」
「……父、か。どちらにせよ相容れぬのであれば、力ずくでも止めるのみ!」

 ん……? 一連の会話の一つに俺は違和感を覚える。
 イオンとアニスがアリエッタと話すのや、ティアとリグレットが話すのは理解できる。
 でも、なんでラルゴはナタリアに絡んでやがるの?
 不審に思っていると、ラルゴのナタリアに向ける視線になんだか不穏なものを感じるぜ。
 まあ、まさか……な。

「来ますよ!」

 ジェイドの警告と同時に、俺の疑問は解決することなく、戦闘が始まった。

 突進してきたラルゴと前衛の俺は激しく剣戟を交わす。
 何度かやり合っていると、突然、ラルゴの胸元からペンダントが雪原に落ちた。
 ペンダントはロケット式らしく、落下の衝撃で開く。

「なっ……これは……!?」

 ペンダントの中には、金髪のちっちゃい女の子の肖像画が入っていた。

「くっ……!」

 一瞬俺の勘違いを疑ったが、ラルゴが焦ったようにペンダントを拾い上げたことで、このペンダントがラルゴのものであることに疑いを挟む余地はなくなった。

「くっ……ラルゴ、お前まさか……!?」
「──っ! ……気付いたか、小僧」

 明らかな動揺を見せるラルゴに、俺は疑惑を確信に変える。

「どうした、ラルゴ」
「どうしたの、ルーク?」

 突然戦闘を止めて、静かな睨み合いをはじめた俺たちに、他の連中も戦闘の手を一時的に中断して、俺たちの様子を怪訝そうに伺う。

「……みんな、落ち着いて聞いてくれ。俺も信じたくなかった。でも、今のラルゴの反応、さっき落したペンダントに入っていた小さい女の子の肖像画、そして何よりもナタリアに向ける視線から、俺の疑惑は確信に変わった」

「わ、私に向ける視線ですか……?」

「ああ、そうだ。……ラルゴ。前々から、お前がナタリアに向ける視線はずっと気にはなってたんだ。単なる敵を見るものとは、明らかに違う感情を含んだ視線だったからな」

「……もはや否定することは許されんか。認めよう。俺は──」

「お前は年下しか愛せない病気! ずばりナタリアに惚れてやがるなっ、このロリコンがぁっ!!」

「ああ、そう俺はロリコ……って、アホかぁーーっ! 全・然・違うわぁボケェッッ!!!」

 俺のあまりに的確な指摘に、ラルゴが過剰なまでのノリ突っ込みで否定を返してきた。
 ふっ……だが、俺がそんな戯言に惑わされるはずもない。今更白々しいにも程があるぜ。

「だったら、お前が時折ナタリアに送っていた熱い視線に、その大事に大事にもってるペンダントに入れてたちっちゃい女の子の肖像画はどう説明するつもりだよ?」
「うぐっ……そ、それは……っ!?」

 言いよどむラルゴに、場の空気が一気に冷えきっていく。

「……アリエッタ、こちらに下がりなさい」
「う、うん。わかった」
「リグレット!? アリエッタ!?」

 リグレットがアリエッタを背後に庇うのを見て、ラルゴがとてつもないショックを受けている。

「た、確かに、ラルゴって教団でもみょうーに私たちみたいなちっちゃい女の子に優しかったけど、まさかそんな下心があったなんて……っ!?」
「優しい足長オジサンの仮面を被って、心の中ではロリッ娘ハーレム万歳ってか? くっ……さすがは黒獅子ラルゴ!」
「いやぁー私もラルゴが時折ナタリアに向ける視線には気付いていましたが、まかさそんな理由があったとは、予測もつきませんでしたねぇ」
「きょ…教団のオラクルを代表する師団長が……そんな嗜好の持ち主だったなんて……っ………ふ、不潔よっ!!」

「ち、ちが……」

 一斉に向けられる蔑みの視線にラルゴは否定を返すが、誰も聞いちゃ居ない。

 同時に、これまで両手を握りしめて、顔を真っ赤にさせてプルプル震えていたナタリアが顔を上げる。

「神聖な戦いの場であるというのに、この私をそんな目で見ていたとは最低ですわね!!」
「ぐはぁっ……!?」

 ナタリアの一言を最後に、ラルゴは胸を押さえてその場に崩れ落ちた。どうやら効果は抜群だ。

「そうだ。ナタリアだけじゃねぇ! そのペンダントのちっちゃな女の子にも謝れぇ! その娘に謝れぇこのロリコンがっ!」

「う、ぅうう……お、おお、俺はぁロリコンなどではないわぁぁ───っ!!」

 突然、ラルゴが泣き叫んだかと思えば、とてつもない勢いで俺に向けて突進して来やがった。
 同時に、リグレットとアリエッタもラルゴからちょっと距離を取りながら、攻撃を再開する。

「げふっ……!? がはぁ……!! でぶろぱぁ……!?」

 順に、ラルゴの槍の一閃に吹き飛ばされて、リグレットの銃弾に弾かれながら、着地点でアリエッタの譜術に直撃した際に上げた俺の悲鳴だ。
 すさまじいまでのラルゴの気迫に後押しされた六神将達の猛攻は止まるところを見せない。

 雪の中に頭から突っ込みながら、もうこりゃ死んだなぁとぶっちゃけ思ったね。

 しかし、そんな俺の視界に、目からドバドバ涙を吹き出しながら槍を手に荒れ狂うラルゴに追い詰められたナタリアの姿が映った。ラルゴの背後にはリグレットとアリエッタがひかえ、他者の手出しを完全に牽制している。

 こ、このままではナタリアがヤられる……!? それはもういろんな意味で!!

「くっ──ナタリアに手を出すんじゃねぇぇぇ──このペドフィリアがぁ──っ!!」

 俺の中で爆発的に高まる力が溢れ出し、突き出した両手の先から放たれた。

「なぁっ──閣下っ!?」
「うぅっ──イオンさまぁ!?」
「ぐぉっ──だから、俺は、ロリコンじゃ、な───」

 天を貫く超振動の光に飲まれ、六神将は三人ともカケラも残さず消し飛んだ。

 ふぅ……何とかなったか。ひゃっほう超振動万歳っ!!

「り、リグレット教官」
「うっわぁー、アリエッタ超悲惨ー」
「当然の報いですわね」

 女性陣三人のコメントを受けた後で、引きつった顔でガイがジェイドに尋ねる。

「……い、幾らなんでも超振動を人間相手に使うのはどうなんだ、ジェイド?」
「……まあ、別に六神将が相手ですし、どうでもいいんじゃないんですか?」

「くくくっ、その通り! よく後味のよくないものを残すとか、人生に悔いを残さないだとか、便所のネズミのクソにも匹敵するくだらない物の考え方をする者がいる。──だが、この俺にそれはない!」

 そう、この俺にあるのはシンプルな、たったひとつの思想だけよ!!

「愛の為に勝利する! 過程や、方法なぞ、どうでもいいのだぁっ!」

 剣を天に突き出して、俺は雄叫びを上げた。カッコイイですのーとミュウが同意の声を上げた。ふふふっ、もっと讃えよ。

「いやぁー惚れ惚れするような外道っぷりですねぇ」
「さ、さすがにそれはぶっちゃけ過ぎだろ、ルーク」

 超振動を使った影響か、かつてないほどにテンションが高まった俺の様子に、ガイが乾いた笑みを洩らし、他の皆もかなり呆れを含んだ視線を向けてきた。それでも、今の俺はテンション上がりまくってるから全然気にならんね。

 しかし、これで戦闘は終了したんだ。このままいつまでも決めポーズを取ってる訳にはいかない。
 そろそろ移動しようかという話しが出ようとした───そのとき。

 不気味な振動音が雪山を貫いた。

 振動音は雪山の頂上付近から響いてくる。

『…………あ』

 見上げた先で、凄まじい勢いで押し寄せる雪崩の猛威が視界に映った。
 うん……さすがにこんな雪山で超振動は威力が高すぎたようです。

 あーこりゃ死んだなぁーと思いながら、俺達は白い悪魔に飲まれるのだった。


 が、しかし。


 悪運だけは無駄に強いらしく、重症らしい重症を追うこともなく、俺たち全員ものの見事に助かった。
 それどころか押し流された先で、セフィロトに続く扉を発見したりする運の良さと来たもんだ。

「なんか出来過ぎだよなぁ……」
「別に都合が悪いわけではないので、良しとしましょう」
「ん、まあ、そうなんだけどな」

 確かに都合が悪い訳ではないので、俺も特に気にしないことにした。
 後はそのまま特に妨害が入るでもなく、呆気なくパッセージリングにまで辿り着いた。

「んで、またこいつを操作すればいいのか?」
「ええ、よろしくお願いします、ルーク」

 パッセージリングに向けて俺が超振動を放ち、操作を終えると同時───大地が揺れ動く。

「な、なんだ?」
「パッセージリングを見て!」

 パッセージリングから頻りにアラームが鳴ってやがる。

「やってくれましたね、ヴァン謡将……」
「何が起きたんだ、ジェイド?」

 ジェイドが言うには、何でもヴァン師匠が罠を仕掛けていたらしい。
 このまま放っておくと、大地はぜんぶ崩落して、魔界の泥に飲まれて、ジ・エンド。

 さすが師匠、抜け目がないね。

 しかし、せっかく鬱病治りかけてたってのに……何ともままならねぇもんだよなぁ。



              【16】



 決戦前夜──省 略!

 ……いやまあ、何だ。一つだけ起こった事を記すなら、もう死にたいとは思わなくなった。
 そんな気分になるようなことが、色々とあったりしたわけですよ、うん。



              【17】



 そんなこんなで、ついにアブソーブゲートまで行き着いた俺たちは師匠と対峙する。

「……何故お前がここにいる? ここに来るべきは、私と共に秩序を生み出すべきアッシュ──オリジナル・ルークだ」
「……どうしても、止めないつもりか?」
「ふっ……私の邪魔をするな、レプリカ風情がっ!」
「くっ!」

 こうして師匠──いや、ヴァンとの最後の戦闘が始まった。

 ヴァンはもうやばいぐらい強い。でら強い。まじ強い。
 押されまくった所で、俺はさらにヴァンの人外攻撃をマトモに喰らっちまった。

「がはぁっ!?」
『ルーク!!』

 ああ、こりゃ死んだなぁと思った。

 意識を失いかけた俺の視界に、ヴァンに追い詰められたティアの姿が映った。

 ──プチンッ。

「この──シスコン顎髭野郎がぁぁ───!!」

 世界を白光が染め上げる。天を貫く光の柱に飲まれ、ヴァンが驚愕に顔を歪めた。

「ばかなぁっ?!」

 俺の石破ラブラブ超振動によって、カケラも残さず吹き飛んだヴァンの最期の言葉がそれでした。
 ……ん、なんというか、意外と小物っぽい最期の言葉でした。

 黙祷。

 まあ、それはともかく、今回の決め台詞。

「ヴァン、てめぇの敗因はたった一つだぜ。たった一つの単純シンプル な答えだ」

 ヴァンの消えた方向を睨み据え、手にした剣を突き付ける。

「てめぇは、俺を、怒らせた」

 ズギューンッと効果音を背負いつつ、俺は決め台詞をはいた。

「…………あ」

 そんな自分に酔っていた俺の耳に、ティアのちょっと間の抜けた声が届く。
 なんだなんだと視線を向けると、ティアはパッセージリングを見上げ、その顔をさぁと青ざめさせていた。
 ついで、ゲートを凄まじい振動が襲い始める。

「…………へ?」

 この段になって、俺たちはようやくティアの視線を追ってパッセージリングのあるはずの場所を見上げ──凍り付く。

『げっ!?』


《──クズがっ! 何をやってやがる! ヴァンを倒したなら、さっさとパッセージリングを起動しろ!》
「アッシュか。……いや、俺もそうしたいのは山々なんだけど、まことに言い辛い事にね」
《……何だ?》
「ヴァンを倒したのはいんだけど、パッセージリングも一緒に消し飛んだ」
《───?!?》

 混乱した思念が帰ってくる。
 うん、でもマジでどうしようね。

「ど、どうする!?」
「ど、どうすんの!?」
「ど、どうしたらいいのでしょう?」
「ど、どうするの!?」

「さて、どうしたもんか」
「どうしましょうかねぇ」


 最初は混乱する皆の言葉で、後の二つは状況が切迫しすぎて緊張感なくなった俺とジェイドの言葉。
 うん、いろいろと末期。

 こりゃもうそろそろ人類滅んだなぁーと思い始めた所で、光がセフィロトから降り注ぐ。

「──ルーク、私の言葉を聞いて欲しいですのー」

 降り注いだ光の先に居たミュウが突然、いやに落ち着きはらったダンディな声で話しかけてきやがった。

「……どうしたんだ、ミュウ? そんなキモイ声だして?」
「私はミュウじゃないですのー、ローレライですのー」

 ローレライ……とな?

「って、第七音素集合意識体のローレライかよ!?」
「その通りですのー」
「こ、今度はミュウを媒介にしたのか? 意外と節操ないのな」
「今は外聞に拘ってる余裕はないですのー」

 ミュウを媒介にしてるせいか、語尾がやたらとウザイ。
 込み上げるイライラを我慢して、問い掛ける。

「そんで何の用だ?」
「この状況をどうにかする方法を授けるですのー」

 ローレライによると、何でも今から俺に送る鍵を使うことで、ローレライを音符帯に送り届ける。そうすることで、大量の第七音素が空に駆け昇る過程で大地の一斉降下は上手く行き、障気そのものも消し飛ばされるらしい。その上、地殻振動の原因となっているものが丸々なくなることで、魔界の大地が完全に固まるという話だ。

 あまりに出来過ぎた話だが、まあ、その代わりというか、俺の肉体は力の過剰行使で音素乖離を起こすらしいけどな。

「……そんな!?」
「そりゃ……本当にそんなことが出来るのか、大佐?」
「……確かに、それほどの力を行使すれば、可能でしょうね」
「でも、そうしたらルークは……?」

 言葉を交わす皆を横目に、俺もどうするべきか考える。

 マジで、どうしたもんかね?

 ……と、考えるまでもないか。

「まあ、そういうことらしいから、みんなじゃあなー」

『軽っ!?』


「る、ルーク、ちょっと軽すぎやしないか?」
「まあ、俺はいつもこんなもんだろ」
「……まあ、そうだな。いつもお前はそうだったな」
「あばよ、親友」
「いや、そうじゃない。またな、、、 、親友」

 俺とガイは互いの手を打ち鳴らし、しばしの別れを告げた。


「今回ばかりは本気で戻って来れませんよ?」
「それでも、さ。他に手もないんだろ?」
「……そうですね。やれやれ、私は少しあなたのことを見くびっていたようです」
「そうか? きっとジェイドの評価は正しいと思うけどなぁ」
「いえ、あなたは私などよりもよっぽど価値がある。できることなら、生き残って欲しかった」
「へへへっ……そうか。じゃ、なにがなんでも生き残らないとな」
「ええ、それでは、また後で」

 珍しくも俺を評価したような事を告げるジェイドに、俺はかなり照れながら別れを終えた。


「ルークって本当に軽いよね」
「まあな。でも、辛気臭くなくていいだろ?」
「……まあ、そうだよね。はぁーイオン様になんて言おう」
「まあ、イオンにはよろしく言っといてくれ」
「うん、わかった。でも、後でルークが自分できちんと説明してよね」
「あーはいはい、わかったよ」

 アニスの遠回しな激励の言葉に、俺はいつものごとく安請け合いを返した。


「ルーク……本当に、実行するのですね?」
「ナタリア……うん、まあ、まだ生きてて欲しい人とか居るしな。特に、な、ナタリアとか……」
「ルーク……あなたの幼馴染みであること、わたくし誇りに思いますわ」
「…………あ、うん、そうね」

 俺の一世一代の告白はさらりと流されました。
 あーもう絶望した! ナタリアのど天然っぷりに絶望した!!

 傷心の俺はローレライの送ってきた鍵をかなり投げやりに受け取り、よろめきながら譜陣を展開し始める。

「……ルーク」
「ティア……あ、そうだ。ちょっと手を伸ばしてくれないか?」
「? ……いいけど」

 伸ばされたティアの手を取って、触れた箇所から障気を引っ張り上げる。引き剥がされた障気に汚染された第七音素が俺の身体に定着した。

「これは……?」
「よし、もう障気の汚染は大丈夫だ、ティア」
「どういうこと……?」
「第七音素同士は引き合うだろ? だから、ティアの障気に汚染された第七音素は、俺が引き受けて音符帯までもっていくよ」

 鍵を受け取った影響で、ローレライの知識が俺の中に流れ込んだから可能になった芸当だった。
 もう大丈夫だと笑いかける俺に、ティアは目を潤ませながら、押し殺した声を上げる。

「そんなことされても、私、嬉しく、なんか…ない……っ!」
「……そうか。まあ、ティアなら、そう言うか」

 だがまあ、ティアには世話になった。これくらいのお節介はさせてほしい。

「ルーク! 私は───」


「じゃあ、またな、みんな」


 その日、人々はセフィロトから天に向けて駆け上る光の柱を目撃した。




……まだ続くよ
  1. 2007/06/03(日) 00:30:18|
  2. TOA中編
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

バンザイ、超振動ライフ エピローグ



              【18】



 ───それは『ここ』ではない『どこか』。

 ───この世から隔絶された、とある奇妙な空間で交わされた、二人の会話。


「ルーク」
「ぅーん……って、あんた誰だ?」

「私が第七音素集合意識体、ローレライである!!」
「……はぁ……ローレライ」
「私が第七音素集合意識体、ローレライである!!」
「いや、それはもうわかったから!」

「うむ、そうか。ルーク、スコアとは如何なるものだと考える?」
「また唐突だな。未来の可能性だろ?」
「それも間違っていないが、絶対に外れることのない預言だ」
「でも、外れたぞ?」
「うむ。少し言葉が足らなかったか。外れることがない預言とは、すべての預言の根源たる星の記憶のみを指す。なぜ外れることがないと言えるかと言えば、起きた結果を受けて、預言の内容そのものが刻一刻と変化するからだ」
「うっわ……なにそれ、サギくさい力だな」
「うむ。だが事実だ。アカシックレコードの絶対性とはその程度のものでしかない。結局の所、事態が起きた後に見れば、すべての預言の原文は正しいものに修正されているのだからな」

「教団の言ってることは、間違いじゃねぇけど正しくもなかったってことか」
「うむ。ちなみに、ユリアはこのアカシックレコードを常時垣間見る力があった。彼女はこの力をもって、後世は世界中の賭博場を巡りウハウハになった」
「なんか色々とユリアのイメージが台無しだーっ!!」

「まあ、雑談はここまでにしておくとして、そろそろ本題に入ろうか」
「しかも本題じゃなかったのかよ! つ、疲れる。……そんで、何の話しだよ?」

「君の助力もあって、私もようやく音符帯に昇ったわけだが、まだ完全ではない。不純物があるためだ」
「不純物?」
「ルーク、君だ」
「俺……?」
「不純物を取り除くことで、私は完全になれる」

「えーと、つまりどういうことだ?」
「つまり望むなら、君は地上に戻ることができるということだ」
「え、マジで!?」
「うん。で、どうする? 戻っとく?」
「なんか突然軽っ!?」

「なんだ戻りたくないのかね?」
「い、いや、戻りたい。いえ、戻りたいです、はい」
「うむ。素直で宜しい。では……」

「えっと、そこでなんで釘バットを取り出しますか?」
「これは聖剣《えくすかりぼるぐ》。これを脳天に打ちつけることで君は目覚める」
「えーと、やっぱりこの話はなかったことに……」
「もう遅い」
「ちょ、ま───!?」




          ぴぴるぴるぴるぴぴるぴ~♪






              【19】




 ───はっ!?

 な、なんか物凄い原初的な恐怖を伴う理不尽さを体験したような気がするが……思い出してはいけないと本能が全力で警告を発してるので、とりあえず気にしないことにしよう。

 それよりも、だ。

「……ここっていったいどこよ?」

 とんでもない数の人々が俺に視線を向けていた。
 何故か場違いなまでに荘厳な雰囲気ただよう聖堂の中心に、俺は一人突っ立って居ます。

 ここって……教団の聖堂か?

 礼拝日だったのか、教団の司祭から信者まで凄まじい数がこの聖堂に詰めている。
 天に向けて駆け昇る光の柱と共に現れた俺に、誰もが仰天しているようだ。

「か、彼はなんだ……?」
「ひ、光の柱の中から現れたぞ」
「おぉぉぉ……天の御使いの降臨じゃ」

 向けられる視線に気押されるまま固まってると、司祭の一人が俺に近づいて来た。

「あ、あなたさまは、いったい……?」
「あー……それよりも、ちょっと聞きたい事があるんだが、いいか?」
「は、はぁ……私に応えられることなら」

「俺達が外郭大地を降下させてから、どんくらい経ったかわかるか、あんた?」
「大地を降下させた……? ……っ──!? なんと、では、あなたさまはあの聖なる炎の光!?」
「うん、まあそうだけど……って、なんだぁっ?!」

『ぉぉぉっぉぉぉっ!!』

 司祭の発した一言に、周囲に佇む信者たちのざわめきがこれまで以上に激しくなる。

 な、なんかこれって、ちょっと危険な領域にまで高まっていないか?

 周囲の信者の熱気にかなり気押された俺の様子を見て取ってか、司祭が任せておけとばかりに俺に頷き返す。

「皆のもの、落ち着きなさい!」

 俺と話していた司祭はざわめく信者達の前に出ると。

「粛々と聞け! この御方こそは聖なる焔の光!! ローレライより使わされた、救世主の再来に他ならないっ!!」

 とんでもねぇ発言をかましやがった。

『うぉぉぉっぉぉぉっ!!』

 おまけに信者達もそれを訝しむでもなく、何故か一斉に歓声を上げてやがります。

 拳を振りかざし熱弁する司祭の一言一言に、信者は一喜一憂して歓声を上げる。

 こ、こいつは……ヤベェ! 俺の本能がビンビン警告を送って来る。

 こ、これがカルトの熱気ってやつなのか……!? 

 とてつもなく狂的な熱気に浸る群衆に、俺は一人恐ろしいと戦慄する。
 しかし、そんな俺の様子に気付く気配もなく、かなりいっちゃってる瞳になってきた司祭が俺を振り返る。

「さぁ、救世主殿! あなたさまの武勇伝を皆にお聞かせ下さい!!」
「え、いや、あの……」
「さぁ、さぁさぁさぁ!」
「その、俺は……」
「さぁ!!」



               ~数十分後~



「───こうして俺は超振動の力をもって世界を救ったっ!」

『うぉぉぉっぉぉ──!!』

「さぁ、俺を神と崇めよ愚民共っ!!」

『バンザァァーイ! バンザァァーイ! 超振動バンザァァーイ!!』


 ……ものの見事にカルトの雰囲気に飲まれた俺の姿があったとさ。




 こうして、俺が教団からカルト的歓待を受けること数時間。

 教団に帰還したティアと俺はばったり再会。

 調子に乗りに乗りまくっていた当時の俺は、再会時にかなり空気読めてない発言をかました。

 これを受けて涙目になったティアが譜術で反撃、しこたましばかれた後で、俺はようやく正気に返るのだった。がくり。




              【20】




 ……と、まあそんなこんなで、帰還時にも色々なことがあった訳だが、俺が地上に帰って来てから既に数年が経った。

 俺の惚れた相手は順当にアッシュと結婚。きっと毎日セクロス三昧なんだろう。
 くっ……死にたい!

 ちなみにアッシュがインゴルベルト名を継いだことで、ルークという名前は正式に俺だけのものになった。

 俺は公爵家を継いで、ベルケンド領を相続している。
 ファブレの家が領地があるのに王都に居たのは、俺が王都に軟禁されてたからだ。
 軟禁も既に有名無実なものと化していたので、もはやこのまま王都に止まる理由もない。
 これ幸いとばかりに、俺は自宅をベルケンドに移して引き籠もった。
 日夜研究所に通いつめ、ベルケンドの譜業技術は世界一ィィィッッ!! を目指している。

 それと俺が帰還したときカルト的熱気に煽られて、神と崇めよと言い放った影響か、時折教団信者が俺を崇めに来る。
 生き神様じゃぁーと通りすがりの老人達に拝まれたりすると、正直、かなり死にたくなります。

 スコアの絶対性が崩れた今、目に見えた新たな信仰対象探してた教団にとって、俺の登場は渡りに船だったのだろうが、拝まれるこっちとしては勘弁して欲しかった。

 また俺の神発言の影響で、調子にのってた俺をノシたティアが聖女さま呼ばわりされていたりもする。
 教団から押しつけられた聖女の責務として、ティアは週に一度必ず生き神認定された俺の所に来るはめなってしまった。

 そんな理由もあって、俺とティアは週に一度、何をするでもなく顔を合わせて、お茶を飲む。
 ティアと茶を飲むのは和むので悪くはないんだが、最近彼女の来る頻度が増しているような気もする。

 特に用があるわけでもないのに、いったいどういうつもりなんだろうな?
 そんな事を前に遊びに来たガイに尋ねたら、すごい微妙な顔された。なんでだろうな?

 まあ、こういう疑問も、生きていればこそのものなんだろうけどな。

「なにを書いてるの?」
「ん? まあ、日記みたいなもんだ」
「日記……?」

 ふぅんと声を上げて、ティアはちょっと小首を傾げた。

 庭先に設置されたテラスに穏やかな風が流れ、春の訪れを告げる。

 ちなみに、今もそんなティアとのお茶会の時間だ。
 教団でも上位に昇り詰めつつあるティアはけっこうストレスが溜まっているようで、お茶会の間、俺は主に聞き役に廻る。
 俺の生き神認定の件に関して愚痴を言われたりもするが、何だかんだ言って、ティアはここに来ることを止めようとしない。
 口には出さないが、特に何をする訳でもないこの一時が、彼女も意外と気に入ってるのかもしれない。

 思えばこれまで色々なことがあった。

「どうしたの? 今度は突然ニヤニヤし始めて……?」
「いや、別に大した事じゃねぇーよ」

 俺は笑みを浮かべながら彼女の質問をはぐらかす。

 しかし、いまだ世界は終わることなく、今日も今日とて日は昇る。

「本当かしら……?」
「ああ、嘘じゃないって。本当に大した事ない、どーでもいいことさ」

 あくまで疑いの目を向ける彼女に軽く応えながら、俺はゆっくりと、日記のページを閉じた。






Tales of the ABYSS

もしも断髪式がなかったら
──バンザイ、超振動ライフ──

終 わ り


  1. 2007/06/03(日) 00:03:22|
  2. TOA中編
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:1
 次のページ
書庫へ戻る |  日記過去ログ |  ジャンク作品目次 |  アビス一覧目次 |  お勧め一次創作 |  お勧め二次創作 |  掲示板 |

FC2Ad


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。