全手動軽文量産機

──A.L.M──

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エピローグ  「家族ジャングル」




 光に包まれた聖都ダアト。街を行き交う人々は誰もが明るい顔で、めでたそうに言葉を交わす。

「……あれから二年か」
「長いようで、意外と短かかったよね」

 ダアトの大聖堂の控室。テラスで壁に背を預けながら、ガイとアニスはこれまでの二年に想いを馳せていた。
 世界の復興に向けて、それこそやることはいくらでもあった。

 墜落したホドの大地はそのまま沈むことなく海上に残されている。
 いまだ人が住めるまでに整備されていないが、ガイはこの二年の間、ホド島の復興に尽力を尽くしていた。


“まあ、そう気負わずにゆっくりと、俺たちの日常を取り戻して行こうじゃないか”

 後にホド島の復興を成し遂げることになる再興の雄、ガイラルディア・ガラン・ガルディオス伯爵の残した言葉だ。


「それでも、今日という日を迎えられたことを幸せに思いますわ」

 日向のような満面の笑みを浮かべながら、幸せそうに微笑むナタリアの言葉に、ガイとアニスは彼女の相方に話を振る。

「だってさ、アッシュ」「だってよ、アッシュ」
「……う、うるせぇっ!」

 豪華なドレスを着込んだナタリアの向かいに立つ、これまた珍しく礼服を着込んだアッシュの姿があった。

 普段ならこんなからかいの言葉をかければ、直ぐに斬りかかって来られてもおかしくないのだが、今日だけは例外だった。

「アッシュが恥ずかしがるのもわかるけど、怒らない怒らない」
「ああ。なにしろ今日は二人の結婚式だからなぁ」

 緊張緩和の流れから、二人の結婚式は両国の代表も招かれ、聖都で盛大に祝われることになっている。
 ガイとアニスは式を目前に控えた二人を見据えながら、感慨深そうに何度も首を頷かせる。

「うんうん。ようは世界を救うにも一人じゃダメだってことかもな」
「だよねぇ。やっぱり最後は、時々世界を救っちゃう、恥ずかしい言葉がないとね」
「それはいったい何ですの?」

 不思議そうに首を傾げるナタリアに、ガイとアニスは互いに顔を見合わせる。浮かぶのは人の悪い笑みだ。

「ふっふっふっ。それはね~」
「ああ。そいつはな~」

 ニヤニヤと言葉を勿体ぶるアニスとガイ。そんな二人の背後に、突如降り立つ影。

「愛、ですね」

「って、大佐!? い……何時の間に」
「……というか、いい年して、よく断言できるな、大佐」

 あまりに突然の登場に動揺するアニスと呆れたようにつぶやくガイに、ジェイドはニヤリとメガネを押し上げた。


“これまでも、あえて人の意表をつこうとしたような覚えは一度もありませんよ。ですが、私の創り出したもので、誰かが驚く顔を想像するのは……まあ、それなりに一興かもしれませんね”

 後にプラネットストームに代わるエネルギー源として、内部に蓄積したフォン・パワーを任意で放出可能なクレーメルケイジを考案した、ジェイド・カーティス博士の残した言葉だ。


 そんな二人を余所に、ナタリアは告げられた答えに目を輝かせた。

「まあ、愛! 素晴らしいですわ」

「だってよ、アッシュ」「だってさ、アッシュ」「だそうですよ、アッシュ」

「もうどうとでも言えっ!」


“あの日、ナタリアと交わした約束が、すべてを失った俺に残された唯一の絆だった”

“理想にとらわれ過ぎることは危険なことかもしれません。それでも、決して理想を忘れてはいけない。そう私は思います”

 後にキムラスカ王国の黄金期の一つを築くことになる名君、ルーク・フォン・アッシュ・キムラスカ・ランバルディア国王と、その王妃、ナタリア・ルツ・キムラスカ・ランバルディアの残した言葉だ。


 二人の式には教団も全面的な協力を申し出ていた。結果として、史上初のダアトの大聖堂を使用した結婚式が上げられることになった。教団としても、信仰の要であったスコアが消失したことで、新たな体制を作り上げようと必死なのだろう。


“冠婚葬祭は生活と切っても切り離せない関係にあるからねぇ~”

 後に導師に就任し、生活に密着した教団の新体制改革に尽力した、聖女アニス・タトリンの残した言葉だ。


「ところで、ティアは来ておりませんの?」
「ああ……ルークが居ないからな」

 バツが悪そうに頭を掻くガイ。それに誰もが納得といった様子で顔を頷かせる。

「そっか。なら、仕方ないよね」
「ええ。仕方ありませんね」
「ふん。来ないなら来ないでいい」
「もうアッシュ!」

 夫婦喧嘩は犬も喰わないとばかりに、三人は距離を取る。

「結局、こんなめでたい日にまで、あいつはあいつだったってことだろうな」
「まあ、彼の登場が遅れるのはいつものことですからね」
「本当に~大遅刻だよね」

 全員が揃って、空を見上げた。



                  * * *



 式場に向かう男女が二人、何事か言い争いながら街中を駆ける。
 二人の後を追って、二匹の獣が転がるように地を駆けながらついていく。

「まったくこんな日に寝坊するなんて!」
「だぁーすまねぇって何度も謝ってるだろ!」

「もう……ばかぁっ!」
「ぐっ…………くっ、返す言葉がねぇぜ」

 僅かに怯んだ後で、青年は隣で息を切らし始めた相方の顔を見やる。

「ああーもうティア、アレだ! もうちょっと、こっち来い!」
「ルーク、何を……きゃ───!! る、るるる、ルーク、何を!?」

「もう時間がないんだ。そのまま、しっかり掴まってろよ」
「きゃぁぁ──────!?」

 土煙を上げながら、式場に駆け込む二人と二匹。

 鐘の音が鳴り響く大聖堂。開かれた扉から姿を表す式の主役。階段部分に立つ参列者。
 慌ただしい二人の登場にも、誰もが笑みを浮かべ、二人の登場を歓迎する。

 どうにか式の最後に間に合った二人を見据えると、ナタリアは悪戯めいた微笑を浮かべながら、手にしたブーケを空に舞い上げた。

 高く高く舞い上がるブーケ。それは遅れて到着した二人のもとに向かう。

 そして、ブーケはまるで最初から狙ったように、ルークの腕に抱きかかえられたティアの手の中に落ちるのだった。









                  ◆ ◆ ◆









 ファブレ公爵家は歴史に名高い名門だ。

 一般には、領地にチーグルとライガが共生する稀少なコロニーが存在する観光地としても有名だろう。

 そんな公爵家の広間には、代々受け継がれている一枚の絵画が存在する。

 大勢の人々が詳細に描き込まれており、誰を主役に据えた絵画なのか、専門家の間にも様々な意見が存在する名画だ。

 有力な説としては、絵画の正面、聖堂に至る階段途中に描かれた、式を上げる男女二人が主役ではないか、という意見がある。一人はファブレ家の特徴を色濃く現す目にも鮮やかな真紅の長髪をした青年、もう一人はちみつのように艶やかな金髪の女性。この説を推す者たちは誰もが一様に訴える。

 何しろ結婚式を描いた絵画だ。当然、式を挙げる男女が主役だろうと。

 しかし一方で、この意見に否定的な意見を返す者達も少なくない。

 聖都の大聖堂を背景に、集まった人々は誰もが笑みを浮かべながら、ただ一つの方向を見据えている。
 人々の笑みは、式を上げる男女ではなく、式場に駆け込むような姿で描かれた二人の男女に向けられている。
 一人はくすんだ色合いをした赤毛の青年、もう一人は馴れない礼服を着込む光の加減で銀に輝いて見える髪色の女性だ。

 彼女は青年の腕に抱き抱えられた状態で、空から舞い降りたブーケを胸元で受け取っている。
 式の参列者たちは、この二人の男女を見据え、誰もが微笑ましげな笑みを浮かべている。

 二人の顔はどちらも真っ赤に染まり切っており、この絵画を見る者は誰もが思わず顔を綻ばせるという。

 この絵画が描かれた時代は、歴史の転換点としても名高い、外郭大地が終焉を向かえた時代だ。
 プラネットストームを用いたエネルギー源からの転換が急がれた時代でも在り、絵画から窺い知れる穏やかな空気も、日常においてはより緊張感漂うものであったことが予想される。

 もはや歴史は流れ、彼らの存在した激動の時代も遠い昔のことだ。
 それでも、この絵画からは、彼らの生きた時代の息吹を感じ取ることができる。

 どのような世界にあれ、人は前を向いて生きることができるということなのだろう。


 世界が滅びる事はなく、絆はいつまでも紡がれていく。


 それはさながら生い茂った密林にそびえ立つ大樹のように。


 どこまでも絶えることなく、生命の系統樹は続いて行くだろう。


 そう、まるで、それは──────






TALES OF THE ABYSS  家族ジャングル───FIN.
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  1. 2005/04/14(木) 00:00:00|
  2. 【家族ジャングル】 エピローグ
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家族ジャングル、あとがき


そんな感じで、ついに家族ジャングルも完結。
ゲームが発売したのは2005年の12月! 書き出したのが2006年だから完結までは約二年!!
本当に……長かった。ちょっと放心状態入るぐらい、感慨深いですね。

最後まで付き合ってくださった読者の皆さんには深い感謝を! 本当にありがとうございました。


とりあえず以下は、執筆過程で起きた裏話を徒然と語って行こうと思います。


まずアビスで二次創作書こうと思った切っ掛けについて。

これはやはり原作エンドで『帰って来た人物』に関する原作者コメントを知ってしまったことが大きいですね。
もの哀しいエンドも嫌いじゃないのですが、アビスではルークが人間的に成長していく過程をずっと見守ってきたせいか、これまでにない凄まじいショックを受けましたよ。

うーわーアビスで大団円が読みてー! ええいくそう俺が書いてやるー! と衝動的に執筆開始。
最初は逆行ものを書こうと考えてましたが、プロットを弄くり回してる段階で一つの疑問が頭に浮かぶ。

ルークが過去に戻ったとして、その場合、ゲームで起きたルーク達の選択はどうなるのか? 

悩んだ結果、とりあえず第一部段階までの粗いプロット造って、性格改変ものとして原作の再構成を開始。
しかし、どうしてもあの疑問が頭から離れない。更に言えば、ローレライが最後に残した言葉も引っかかっていた。

───私の見た未来がわずかでも覆されるとは……驚嘆に値する

結局、ルーク達の行動でも僅かしか未来は覆せなかったのか。やるせなさにしんみりしかけた所で、ふと思い付く。
ん、待てよ。なら、その少しの変化が影響して、最終的にすべての大団円に繋がるような話の展開は造れないだろうか?

第一部終了段階になって、うんうん唸りながらプロットを弄り倒した結果、停滞世界と第八音素がプロットに登場。
こうして、性格改変ものと言いつつ、実はループ世界ものだったりした現行プロットが誕生した訳です。

その後も、ここまで来たら最後まで突っ走れとばかりに途中で思いついたネタはプロット変わってもドンドン詰め込んで行ったので、後半は凄まじいまでの独自展開の連続と相成りましたが、最終的に自分としては満足行くものが出来上がりました。
本気で思い付いたネタは全て注ぎ込んだので、もうアビスでシリアス入った二次創作は書けそうにないですけどねw


あとは原作にいなかったオリキャラに関するこぼれ話として、まずはオリキャラ第一号たるコライガについて。

第三部辺りから非常に存在感が薄くなったコライガさんですが、実は当初の予定だと第二部終了時点でルークと地殻に一緒に落っこちて、ローレライの鍵の修復材料になるというとんでもない死亡フラグが立ってたりしました。
なんとなくその場の流れでミュウと一緒にノエルに預けられたおかげで回避されましたが、よもやエピローグに顔を出せるようになるとは……連載ものはいろんな意味で作者にとっても予想外の連続だなぁと実感したものです。


続いて、もう一人のオリキャラたるアダンテのおっさんこと第六師団長カンタビレについて。

彼は前半過去にルークのちんぴら染みた性格の見本となった人物として、また後半はローレライ教団で起きた原作と異なる事象の体験者として、どうしても原作にないキャラが必要になった結果、やむを得ず登場したキャラだったりします。
当初は半オリキャラだった訳ですが……よもやファンダムで登場するとは思わなんだ。
最初は本気でやっちまったと慌てたものですが、まあ家族ジャングルの世界は再構築された原作世界の続きなので、一つぐらいはカンタビレが男に生まれてくる世界があってもおかしくないかもしれませんよね? などと誤魔化してみる。


以上、長々と語りましたが、とりあえずきりがなくなりそうなので、ここらで締めたいと思います。
それではご縁がありましたら、またよろしくお願いします。

2008年1月20日
  1. 2005/04/13(水) 23:46:54|
  2. 【家族ジャングル】 エピローグ
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