全手動軽文量産機

──A.L.M──

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 ──邂逅の追憶──



                 【1】



 戦っている。

 戦っている。

 戦っている。


 ───視界に網を掛けたようなノイズが走る。


 身体の外から、自身と〝何か〟の繰り広げる戦いを、ただ眺めている。

 自らの手にした音叉のような剣が、膨大な光を発する。

 未だ何者の意識にも染まっていない音素は、自らの身体の延長のようにたやすく制御できた。


 ───脳髄を掻き乱すような囁き声が聞こえる。


 収束した音素が、閃光を放ちながら、無数の斬撃となって〝何か〟を切り刻む。

 最中、戦場に残された一人の少女に気付く。

 思わず勢いで少女を庇った所で、〝何か〟から放たれた一撃を喰らった。


 ───視界を占める燐光が意識を掻き乱す。


 かなりの距離を吹き飛ばされたが、腕の中の少女に怪我は無いようだ。

 幸いなことに、〝何か〟の方も暴れるのに満足したのか、そのまま引き上げて行った。

 だが、もはや自分に起き上がる体力があるはずもなく、そのまま地面に倒れ伏す。


 ───視界に走るノイズが其の範囲を増していく。


 不意に、頭の裏がむず痒くなった。

 何処からか向けられる、視線を感じる。

 さっき勢いで庇った少女が、ひたとこちらを見据えていた。


 ───囁き声に、どこか喜色が入り交じるのを感じる。


 ひどく億劫だったが、額を抑えながら、いやいや顔を上げる。

 ……何だよ? こっち見んじゃねぇよ。

「…………」

 フルフルと首を振って、少女は無表情のまま否定を返す。


 ───燐光が、全身を緩やかに包み込んで行く。


 相手の反応に、一瞬イラッと来るが、声を上げる気力もなかった。

 意識が急激に薄れていくのを感じながら、勝手にしろと地面に伏せる。

 ちっ……もう……好きに……しやがれ…………


 視界全てがノイズに埋めつくされると同時───俺の意識は、掻き消えた。


 視界に映った少女の顔は無表情のまま、最後まで動かなかった。



                 【2】



 ん……またか。

 俺は深く溜め息を漏らし、ベッドの上から、知らない天井を見上げた。

 もう何か、意識飛ぶのもいい加減、馴れたな。

「ようやく気がついたか」

 あん? ……何だあんた?

 ベッド脇に置かれた椅子から、突然声をかけてきた相手に、俺は困惑した視線を向ける。

「やれやれ。命の恩人相手に礼もなしか」

 命の恩人……? なんだそりゃ?

 相手はこちらの言葉に、深々と厭味ったらしく溜め息をはいた。

 ……なんか、どーにも思い出せないけど、あんた俺の知ってる誰かに似てるよ。

「私に似ている者がいる? 止めてもらいたいものだな。君のような粗野な者の知人に似ているなど、怖気が走るというものだ」

 ……その無駄に嫌味っぽいところが、特にな。

「そうかね? まあ、無駄話はこれぐらいにしておこう。その分なら、意識もはっきりしているだろう」

 けっ……おかげさまでな。

「それは重畳だな。ともかく、君は覚えてないようだから説明するが、あの怪物との戦闘後、戦場に倒れ伏している君達を私が発見してね。ここまで運んで手当てさせて貰った。私も同じ集落に居たのだが、覚えていないのかね?」

 あー……すまん。何か、俺、記憶とかがはっきりしなくてな。

「……ああ、そうだったな。すまない。君の呼び名も、便宜的なものだったな、ローレライ。私は特に君と親しくしていた訳ではないから、覚えておらずとも何もおかしくないよ」

 そっか。まあ、ここまで運んで手当てとかしてくれたことには礼を言うよ、あんがとさん。

「こちらこそ、どういたしましてだな。……しかし、駆けつけるのが遅くなってしまったため、私は戦闘の最終局面しか見られなかったのだが……」

 ん? 何だよ突然、呆れたような顔でこっち見て?

「君は随分と、変態的な戦闘力を持っているのだな、ローレライ」

 ぶっ!? へ、変態的だぁ……!? あんた俺に喧嘩売ってんだろ!?

「そう聞こえたなら、すまないと謝ろう。だが、これが素直な感想なのだから仕方なかろう」

 ……もういいよ。

「そうか。では話を戻すが……サザンクロス先生のことは残念だった」

 ………………

「先生はこの集落の創設者で、卓越した技術を備えた譜業技師だった。国家に見捨てられた我々を救い上げ、生きる為に必要なものを伝授してくれた。とても得難い人だったよ」

 先生…………ってことは、あんた、あのじいさんの弟子とか何かだったのか?

「ふっ……残念ながら違う。私には、そこまでの才はなかったようだからな。簡単な手習い程度のものなら直接教わったこともあるが、サザンクロス先生が対外的にも弟子と認めた者は一人しかいなかった。私は先生の弟子に師事している、ある意味……孫弟子のようなものかな」

 孫弟子……か。あのトンチキなじいさんの弟子ねぇ……いったいどんな奴なんだか。

「私の師匠になら、既に君も会っているはずだよ。……そうだな、まだ礼を言ってなかったな。あの娘を救ってくれたことに関しては、この集落の誰もが君に感謝しているよ」

 ん……会ったことある? というか、俺が救って感謝?

「む……覚えてないのか、ローレライ? 君が戦場で救った──ユリアという名の少女だよ」

 あー……ああ、あの無口な奴ね。

 ──って、あんな小さな女の子が師匠っ!?

「彼女の才能は稀少だ。私たちの希望でもある。彼女に師事できるならば、年齢など些細なことだ。彼女を助けてくれたこと、集落の一同を代表して、深く感謝する」

 なっ……べ、別に頭下げる必要なんざねぇーよ!

 たまたま結果として、助ける形になっただけでだな…………

 と、ともかく、礼を言われる筋合いはねぇから早く頭を上げろって!

「ふっ……わかったわかった。なるほど、そういう性格か。……戦場での姿からは想像できんな」

 むっ……どーいう意味だよ?

「気にするな、ローレライ。君はさぞアルバートと気があうことだろう」

 アルバート? 誰だそりゃ?

 って、その名前も……なんか、どっかで聞いたことあるような気がするんだが……

「アルバートもユリアの弟子の一人だよ。なに、直ぐに会えるだろう。私の予測が正しければ、おそらく出会い頭で、君に喧嘩を吹っ掛けてくるはずだからな」

 ………いや、何で会ってもいないような奴に喧嘩売られにゃならねぇのよ?

「ふむ……ローレライ」

 な、なんだよ?

「多感な少年の心というものは……なかなかに複雑なものなのだよ」

 ……いや、訳わからんから。

「ともかく、今後とも宜しく頼む、ローレライ」

 ……なんか、すげぇ誤魔化され方したような気がするのは俺の気のせいか?

「もちろん、気のせいだ」

 嘘くさいまでに完璧な笑顔を持って、相手は答えた。

 …………あんま、ヨロシクしたくない。

「今後とも宜しく頼む」

 満面の笑みと共に、手が突き出される。

 いや、だから……

「今後とも宜しく頼む」

 笑顔はピクリとも動かない。

 …………その

「今後とも宜しく頼む」

 ………………


 最終的に、俺は相手の手を握り返すのだった。


 別に、まったく動かない笑顔とか、一切抑揚のない声とかが怖かったからじゃない。ないったらない。

 ………まあ、人生、あえて気付かないふりすることも大事だよなぁと思わないでもない今日この頃。


 ともかく、こうして俺は集落の生き残りと合流して、交遊を深めて行くのだった。


 時折視界に走るノイズが、思い出せと、深く訴える声を、強引に押し殺したまま───……








 欠けた認識が蘇ることはなく、使者はただ借物の追憶に沈む。


 終幕の刻は、近い。



  1. 2005/05/27(金) 03:42:15|
  2. 【家族ジャングル】  第七章
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