全手動軽文量産機

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威海に関するアレやコレ 其の五





威海公開

──列強の参入と帝国主義の終焉──



 高まる他の列強の不審感と要求を前に、ついに威海門を開く過程を示す公開実験が、世界的な場で行われることが決定した。

 どの国も当初伝えられた実験内容のあまりの荒唐無稽さに、失笑を漏らしたという。

 だが、単なる妄言と取るには、あまりに極東の島国の発展は急激なものだった。半ば以上興味本位で、列強の主賓は実験会場に足を運んだという。

「空理架学法による異次元空間へのゲート構築実験……? これは我々を馬鹿にしているのか?」
「空理架学……この国の言葉で言えば、現実では役に経たない理論で作られた、空想じみた学問体系。皮肉が効いてていいと思うけどね」

「…………やれやれ、この国のやつらは、なんとも理解し難い事をするものだ」
「東方の神秘、ヤオロズのゴッドというやつだろうか? トウゴウも軍神に数えられていたかな?」

「ふんっ……神が無限に存在し得るなどと信じる者たちが生み出した学問など、到底信用できたものではないな」
「だが、この国が出所不明の資源を大量に抱えていることは事実だぜ?」

「むっ……まあ、少なくとも何がしかの情報を本国に持ち帰る必要はあるか」
「最悪の場合は開戦も止むなし、だったかな」

「……欧州で大戦がようやく終わったばかりだ。少なくとも、もうしばらくの間、戦争は止めておきたいものだな」
「ああ、それに関しては同意するよ」


 実験会場には、各国の研究者も多数招聘され、実験が行われた。

 結論だけ言えば、実験は成功した。

 そして、この実験結果に、世界中が仰天した。まさしく、ひっくり返った。

 【威海】の存在は、既存の世界の枠組みを破綻させるに、十分過ぎる要素を備えていたからだ。

 わざわざ遠方に領土を求めずとも、門の発生技術までこぎつければ、【威海】という安定した資源地帯を自国の足元に確保することが可能だった。しかも、門の先に広がる世界は、手つかずの未踏の地であるのだ。

 驚愕の程が理解できるだろう。

 これまでのインフラ整備にやたらと資金がかかる上に、通商経路の維持に膨大な軍事費を必要とする植民地政策。安定した国内に、幾らでも管理可能な手つかずの領土を入手可能な【威海】。両者を比較すれば、どちらが好ましいものかなど言うまでもあるまい。

 結局、問題になるのは、金であるとも言える。

 列強はこぞって、この新規世界に関する情報を提出することを極東の島国に求めた。

 島国も他の列強との全面的な対立を嫌ってか、交渉に長けた同盟国経由で、威海の発生技術を段階的に公開していった。これはいまだ社会資本の面において、他の列強諸国との総力戦には耐えられない状態にあった島国の止む終えない判断だったと言われている。(一方で、このまま帝国主義が進んだ先で、他の列強との間に全面戦争が発生する可能性の芽を潰そうとしたという説もある)

 あまりにも呆気なく、威海に関する情報は世界中に広まって行った。その理由としては未だ諸説あるが、こうした威海関連の情報公開が、どこまでが政府主導の下、計画的に行われたものであったかは、疑問の余地が残る所だ。

 門の安定化技術に関しても、当初の政府方針としては、当面の間は情報公開の見送りが決定されていた。しかし、お人好しな国民柄とでも言うべきか、個人的に各国へ指導に訪れた研究者の手によって、気付けば世界中に広まっていた。

 ともあれ、こうして広まった威海の存在によって、ほとんどの列強は必要最低限の領土───安全保障上問題あると認められる場所───を確保すると、その他の重要度の低い領土に対して、次々と独立を認めていった(独立を認めると言えば聞こえはいいが、実質放り出したに等しい)

 こうして帝国主義は呆気ない終焉を迎え、世界中の国々は一斉に自国の勢力圏内に引き籠り、それぞれの国々が保有する【威海】の開発に明け暮れていった。(この開発過程において、かつての植民地から大量の人員が秘密裏に投入され、酷使されていたなど様々な黒い噂が囁かれているが、情報の真偽は定かではない)

 もちろん国家間の交流がなくなったことは意味しなかった。かつての宗主国と新興の独立国との間には経済的な支配関係が確立されていた地域も少なくなかったし、工業力における技術的な格差や、外部に市場を求める必要性も存在していた。

 しかし、それでももはや無理をしてまで外界に新たな領土を求めずとも、ある程度の【威海】を確保していれば、それぞれの国々が独自にやっていくことも、さして難しくはない程度の資源を確保することが可能となっていた。

 市場の拡大に伴う経済的な問題から生じた小規模の経済戦争ならば、それなりの頻度で発生したが、もはや総力戦と呼ばれるような、どちらの国にとっても疲弊しかもたらさない大規模な世界大戦は起こらなくなっていた。

 こうして、国家の予算の中でも最大の金食い虫たる軍事費は徐々に削減され行き、世界中の大味な軍事力が緩やかに衰退して行った中で、それは起きた。

 ───威海からの侵攻である。




  1. 2007/05/05(土) 00:10:37|
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