全手動軽文量産機

──A.L.M──

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バンザイ、超振動ライフ 後編



              【11】



 なんかベルケンドでヴァン師匠と再会したらクズ呼ばわりされました。
 あれ……俺の耳が悪いのかなぁと聞き直したけど、本気で蔑すんだ目で見られた。

「劣化レプリカに用はない」

 ……鬱が急激にぶり返してきましたよ。

「お前は預言通りに歴史が進んでいると思わせるための捨て駒に過ぎない」
「その言葉、取り消して……っ!」

 ティアが俺のために言い返してくれたが、もうなんか凄い勢いで鬱だ。
 うぅ……もう死のう。マジで死のう。

 しかし自殺する暇もなく、部屋に突入してきたアッシュによって、師匠との対決は避けられた。
 でも、激しい鬱に襲われた俺は宿屋に一人引き籠もりました。

 そんなこんなで、俺が宿屋に引き籠もってから数日が経過。
 突然、扉が強引にこじ開けられた。

「な、なんだ? って、アッシュ!?」
「いつまで惚けてやがる! テメェはこいつらを連れて、さっさとシェリダンに向かえ!」

 現れたアッシュの野郎は老人三人を俺に押しつけると、シェリダンに向かえと引き籠もっていた俺のケツを宿屋から蹴り出しやがった。

「ルークさん、お昼ごはんはまだですかいね?」
「いや、お昼ごはんはもう喰っただろ……」

 そんなこんなで、今の俺は老人たちの世話をしながら、貨物船に乗っております。

 な、何やってるんだろうな、俺……?



              【12】



 シェリダンで皆と合流した俺達は、改めて王都に向かうことになった。

 しかも、これ、俺の提案です。

「やっぱりキムラスカとマルクトの連中にも話通しておく必要があると思うんだ。うん、仲間外れよくない。イジメ、かっこわるい」

 そんな風に久しぶりに皆と再会して、テンションがいやにハイになってた俺が提案した意外なほどにマトモな提案に、みんなもさして異論はないと賛成ムード。

 じゃあ今すぐにでも向かおうかとなった所で、ナタリアが申し出た。

「少しだけ……考える時間を下さい」

 ナタリアが言うなら仕方ない! もう幾らでも時間を作りますぜっ!!

 前言を即座に覆す俺の変わりように、皆がものすごい冷たい視線を向けてきたが、俺は気になりません。

 そんなこんなで、俺たちはシェリダンに一泊することになった。
 いまこそ、ナタリアを慰め落とすときだぁっと息巻いていた俺は、翌朝、一人物憂げな表情で外に向かうナタリアを発見した。
 タイミングを見計らって慰めようとナタリアの後をストーキングした所で、なんとアッシュの野郎が出てきやがった。

 くっ……死ね! もう死ねアッシュ死ねぇっ! 
 頭の中で百回は捻り殺してやりながら、そっと様子を伺っていたら、二人はなんだか良いムード。
 昔したプロポーズの言葉を言い合ってますよ。

 ……もう死のう、まじで死のう。

 トボトボと宿屋に戻った所をティアと遭遇。

「……盗み聞きは良くないと思うわ」
「ほ、ほっといてくれぇ!! 俺はハートブレイクでもう死にそうなんだよ!」
「……は、ハートブレイク?」
「ああそうだよ失恋だよ! 恋もしたことないやつにこの気持ちはわからねぇだろうよ!!」
「バカァっ!!」
「へぶらばぁっ!!」

 また殴り飛ばされました。

 気付いたら王都に出発する時間になってましたよ。

 なんだか凄い元気を取り戻したナタリアの笑顔の綺麗さに泣きたくなった……



              【13】



 和平が結ばれました。

 うん、なんか驚くほど早くここまで来ましたよ。

 なんかナタリアと伯父さんもすごい順当に仲直りしました。
 俺の存在はもうなんというか空気?
 なんか俺居なくてもよくねぇと改めて死にたくなった……。

 でも死んでる暇もないくらい慌ただしく動いた後で、改造したタルタロスで地殻に突入することになった。
 何でも、地殻振動停止装置を積んだタルタロスを地殻に静めることで、魔界のマントルが硬化して、外郭大地が降下しても泥の中に沈まなくなるそうな。

 改造も終り、いよいよ出発って段階で、六神将の襲撃が来たーっ!!

「わしらのことは気にするなっ!!」

 もうとんでもない数が死んでいく中、俺たちは苦渋をのんでシェリダンを後にした。

 本気の死ぬ気ってのは、あーいうのを言うのか……。
 俺は自分の薄っぺらさに、ちょっと衝撃を受けていた。

 そして数日後、何とか突入ポイントに着いて、地殻に突入した。
 そこまではよかったのだが、脱出の段階になって突然、襲撃が来やがった。

「この艦をお前たちの墓標にしてやるよ!」

 こうして六神将の一人、疾風のシンクと戦闘は始まった。

 でもさすがに六体一では無理だったようで、あっさりと決着は着いた。
 やっぱ戦いは数だよな、兄者!

「くっ……」
「そ、その顔は……!?」

 戦闘終了後、仮面を落したシンクの素顔に衝撃の事実が判明。

「やっぱり、あなたも導師のレプリカなのですね」
「あなた、も……? ───まさか、イオンさまっ!?」
「ええ、僕も導師───オリジナル・イオンのレプリカなのです」

「「「な、なんだってー!?」」」

 さらにイオンの衝撃発言が続いた。

 つまりイオンとシンクは俺の御同類、オリジナルの複製体ってことだ。
 二人の性格の違いに、同じレプリカでも色々あるもんだなぁと一人感心していたら、シンクにすんげぇ視線で睨まれました。

「……忌ま忌ましい、なんで、レプリカの癖に、こいつはこんな能天気にしてられるんだ」
「いや、そう言われても……」

「代用品にすらならないレプリカはクズさ。結局、使い道があるやつだけが、お情けで息してるってことさ……」

 そう言い残すと、シンクは自ら地殻に身を投げた。

 ……本当の絶望ってのは、あーいう状態を言うんだなぁと、俺はかなり打ちのめされた。



              【14】



 シンクとの戦闘後、地殻でティアがローレライに憑依されてぶっ倒れた。
 何が起こったのかとベルケンドで検査して貰ったら、やばい事実が判明。
 何でも、パッセージリングを起動するごとにティアの身体に障気が浸透されていくらしい。
 もうこんなことやってる場合じゃねぇだろと俺はティアを説得にかかった。

「もう身体ヤベェ─んだろ? もうパッセージリングの起動なんてしてる場合じゃねぇって!」
「……でも、私以外に起動できる人は居ないわ」
「そんなのどうにでもなる! 他の方法を探せばいいだけだろ? 怖くねぇのかよ?」
「……それが必要なら、私はやるだけよ」
「怖いなら怖いって言えよ! 俺ならびびって無理だね。もう逃げるね」
「……あなたと私は違うわ」
「っ! ああそうかよっ! もう勝手にしろっ!」


「…………バカなのは……私ね」


 結局、喧嘩別れに終わってしまった。
 くそっ、こんな事が言いたいわけじゃないんだけどな……



              【15】



 ティアが行方不明になったと思ったら、アッシュの野郎とヴァン師匠に会っていた。
 わ、わけがわからねぇと思うが、本当のことだ。頭がどうにか、なりそうだ。
 なんかこの後に及んで、師匠を説得できるか試してみたらしい。

「でも、もう兄に私の言葉は届かなかった」
「……だろうな」

 やはりまだ気まずい空気が漂ってるね。うん。

 その後も代替手段が見つかるはずもなく、ティアがパッセージリングを起動して廻った。


 ちなみに、どうでも良いことだが、ダアトのパッセージリングを起動する際に、モースが亡くなっていることがわかった。
 死因は脳溢血とか言う話で、わりとポックリ逝ったそうな。
 医者によると、少し前に頭に受けた何らかの衝撃が原因で、血管が切れたんだろうという話だ。
 少し前に頭に受けた衝撃……ん、なんだか微妙に心当たりがあるような気がしないでもないが、まあ、きっと気のせいだろう。俺には何の関係もない話だよ。うん。そうに違いない。そう思おう。

 知らない方がいい真実ってのもあると思うんだよ。うん。


 ともあれ、こうして順調にパッセージリングを起動して廻った俺たちは、ついに最期のパッセージリングがあるロニール雪山に辿り着いた。
 最期ってことで絶対に六神将が居るだろうとは思っていたが、案の定待ち構えていやがった。

 それぞれが、これが最後とばかりに、因縁のある相手と会話を交わす。

「イオンさま……邪魔しないで……」
「アリエッタ、僕は……」
「イオンさま! アリエッタなんかにお話することないです!」

「ティア、来てしまったか」
「教官、私は兄の極論にはついていけません。それを止めることが出来ない自分も歯痒いけど、止めようともしないあなたも……軽蔑します」
「……では、もう私も容赦はすまい。閣下の敵は殲滅する!」

「お姫様は城でおとなくしていればよかったものを」
「私を侮辱しないで! 私には父の代わりに全てを見届ける義務があるのです!」
「……父、か。どちらにせよ相容れぬのであれば、力ずくでも止めるのみ!」

 ん……? 一連の会話の一つに俺は違和感を覚える。
 イオンとアニスがアリエッタと話すのや、ティアとリグレットが話すのは理解できる。
 でも、なんでラルゴはナタリアに絡んでやがるの?
 不審に思っていると、ラルゴのナタリアに向ける視線になんだか不穏なものを感じるぜ。
 まあ、まさか……な。

「来ますよ!」

 ジェイドの警告と同時に、俺の疑問は解決することなく、戦闘が始まった。

 突進してきたラルゴと前衛の俺は激しく剣戟を交わす。
 何度かやり合っていると、突然、ラルゴの胸元からペンダントが雪原に落ちた。
 ペンダントはロケット式らしく、落下の衝撃で開く。

「なっ……これは……!?」

 ペンダントの中には、金髪のちっちゃい女の子の肖像画が入っていた。

「くっ……!」

 一瞬俺の勘違いを疑ったが、ラルゴが焦ったようにペンダントを拾い上げたことで、このペンダントがラルゴのものであることに疑いを挟む余地はなくなった。

「くっ……ラルゴ、お前まさか……!?」
「──っ! ……気付いたか、小僧」

 明らかな動揺を見せるラルゴに、俺は疑惑を確信に変える。

「どうした、ラルゴ」
「どうしたの、ルーク?」

 突然戦闘を止めて、静かな睨み合いをはじめた俺たちに、他の連中も戦闘の手を一時的に中断して、俺たちの様子を怪訝そうに伺う。

「……みんな、落ち着いて聞いてくれ。俺も信じたくなかった。でも、今のラルゴの反応、さっき落したペンダントに入っていた小さい女の子の肖像画、そして何よりもナタリアに向ける視線から、俺の疑惑は確信に変わった」

「わ、私に向ける視線ですか……?」

「ああ、そうだ。……ラルゴ。前々から、お前がナタリアに向ける視線はずっと気にはなってたんだ。単なる敵を見るものとは、明らかに違う感情を含んだ視線だったからな」

「……もはや否定することは許されんか。認めよう。俺は──」

「お前は年下しか愛せない病気! ずばりナタリアに惚れてやがるなっ、このロリコンがぁっ!!」

「ああ、そう俺はロリコ……って、アホかぁーーっ! 全・然・違うわぁボケェッッ!!!」

 俺のあまりに的確な指摘に、ラルゴが過剰なまでのノリ突っ込みで否定を返してきた。
 ふっ……だが、俺がそんな戯言に惑わされるはずもない。今更白々しいにも程があるぜ。

「だったら、お前が時折ナタリアに送っていた熱い視線に、その大事に大事にもってるペンダントに入れてたちっちゃい女の子の肖像画はどう説明するつもりだよ?」
「うぐっ……そ、それは……っ!?」

 言いよどむラルゴに、場の空気が一気に冷えきっていく。

「……アリエッタ、こちらに下がりなさい」
「う、うん。わかった」
「リグレット!? アリエッタ!?」

 リグレットがアリエッタを背後に庇うのを見て、ラルゴがとてつもないショックを受けている。

「た、確かに、ラルゴって教団でもみょうーに私たちみたいなちっちゃい女の子に優しかったけど、まさかそんな下心があったなんて……っ!?」
「優しい足長オジサンの仮面を被って、心の中ではロリッ娘ハーレム万歳ってか? くっ……さすがは黒獅子ラルゴ!」
「いやぁー私もラルゴが時折ナタリアに向ける視線には気付いていましたが、まかさそんな理由があったとは、予測もつきませんでしたねぇ」
「きょ…教団のオラクルを代表する師団長が……そんな嗜好の持ち主だったなんて……っ………ふ、不潔よっ!!」

「ち、ちが……」

 一斉に向けられる蔑みの視線にラルゴは否定を返すが、誰も聞いちゃ居ない。

 同時に、これまで両手を握りしめて、顔を真っ赤にさせてプルプル震えていたナタリアが顔を上げる。

「神聖な戦いの場であるというのに、この私をそんな目で見ていたとは最低ですわね!!」
「ぐはぁっ……!?」

 ナタリアの一言を最後に、ラルゴは胸を押さえてその場に崩れ落ちた。どうやら効果は抜群だ。

「そうだ。ナタリアだけじゃねぇ! そのペンダントのちっちゃな女の子にも謝れぇ! その娘に謝れぇこのロリコンがっ!」

「う、ぅうう……お、おお、俺はぁロリコンなどではないわぁぁ───っ!!」

 突然、ラルゴが泣き叫んだかと思えば、とてつもない勢いで俺に向けて突進して来やがった。
 同時に、リグレットとアリエッタもラルゴからちょっと距離を取りながら、攻撃を再開する。

「げふっ……!? がはぁ……!! でぶろぱぁ……!?」

 順に、ラルゴの槍の一閃に吹き飛ばされて、リグレットの銃弾に弾かれながら、着地点でアリエッタの譜術に直撃した際に上げた俺の悲鳴だ。
 すさまじいまでのラルゴの気迫に後押しされた六神将達の猛攻は止まるところを見せない。

 雪の中に頭から突っ込みながら、もうこりゃ死んだなぁとぶっちゃけ思ったね。

 しかし、そんな俺の視界に、目からドバドバ涙を吹き出しながら槍を手に荒れ狂うラルゴに追い詰められたナタリアの姿が映った。ラルゴの背後にはリグレットとアリエッタがひかえ、他者の手出しを完全に牽制している。

 こ、このままではナタリアがヤられる……!? それはもういろんな意味で!!

「くっ──ナタリアに手を出すんじゃねぇぇぇ──このペドフィリアがぁ──っ!!」

 俺の中で爆発的に高まる力が溢れ出し、突き出した両手の先から放たれた。

「なぁっ──閣下っ!?」
「うぅっ──イオンさまぁ!?」
「ぐぉっ──だから、俺は、ロリコンじゃ、な───」

 天を貫く超振動の光に飲まれ、六神将は三人ともカケラも残さず消し飛んだ。

 ふぅ……何とかなったか。ひゃっほう超振動万歳っ!!

「り、リグレット教官」
「うっわぁー、アリエッタ超悲惨ー」
「当然の報いですわね」

 女性陣三人のコメントを受けた後で、引きつった顔でガイがジェイドに尋ねる。

「……い、幾らなんでも超振動を人間相手に使うのはどうなんだ、ジェイド?」
「……まあ、別に六神将が相手ですし、どうでもいいんじゃないんですか?」

「くくくっ、その通り! よく後味のよくないものを残すとか、人生に悔いを残さないだとか、便所のネズミのクソにも匹敵するくだらない物の考え方をする者がいる。──だが、この俺にそれはない!」

 そう、この俺にあるのはシンプルな、たったひとつの思想だけよ!!

「愛の為に勝利する! 過程や、方法なぞ、どうでもいいのだぁっ!」

 剣を天に突き出して、俺は雄叫びを上げた。カッコイイですのーとミュウが同意の声を上げた。ふふふっ、もっと讃えよ。

「いやぁー惚れ惚れするような外道っぷりですねぇ」
「さ、さすがにそれはぶっちゃけ過ぎだろ、ルーク」

 超振動を使った影響か、かつてないほどにテンションが高まった俺の様子に、ガイが乾いた笑みを洩らし、他の皆もかなり呆れを含んだ視線を向けてきた。それでも、今の俺はテンション上がりまくってるから全然気にならんね。

 しかし、これで戦闘は終了したんだ。このままいつまでも決めポーズを取ってる訳にはいかない。
 そろそろ移動しようかという話しが出ようとした───そのとき。

 不気味な振動音が雪山を貫いた。

 振動音は雪山の頂上付近から響いてくる。

『…………あ』

 見上げた先で、凄まじい勢いで押し寄せる雪崩の猛威が視界に映った。
 うん……さすがにこんな雪山で超振動は威力が高すぎたようです。

 あーこりゃ死んだなぁーと思いながら、俺達は白い悪魔に飲まれるのだった。


 が、しかし。


 悪運だけは無駄に強いらしく、重症らしい重症を追うこともなく、俺たち全員ものの見事に助かった。
 それどころか押し流された先で、セフィロトに続く扉を発見したりする運の良さと来たもんだ。

「なんか出来過ぎだよなぁ……」
「別に都合が悪いわけではないので、良しとしましょう」
「ん、まあ、そうなんだけどな」

 確かに都合が悪い訳ではないので、俺も特に気にしないことにした。
 後はそのまま特に妨害が入るでもなく、呆気なくパッセージリングにまで辿り着いた。

「んで、またこいつを操作すればいいのか?」
「ええ、よろしくお願いします、ルーク」

 パッセージリングに向けて俺が超振動を放ち、操作を終えると同時───大地が揺れ動く。

「な、なんだ?」
「パッセージリングを見て!」

 パッセージリングから頻りにアラームが鳴ってやがる。

「やってくれましたね、ヴァン謡将……」
「何が起きたんだ、ジェイド?」

 ジェイドが言うには、何でもヴァン師匠が罠を仕掛けていたらしい。
 このまま放っておくと、大地はぜんぶ崩落して、魔界の泥に飲まれて、ジ・エンド。

 さすが師匠、抜け目がないね。

 しかし、せっかく鬱病治りかけてたってのに……何ともままならねぇもんだよなぁ。



              【16】



 決戦前夜──省 略!

 ……いやまあ、何だ。一つだけ起こった事を記すなら、もう死にたいとは思わなくなった。
 そんな気分になるようなことが、色々とあったりしたわけですよ、うん。



              【17】



 そんなこんなで、ついにアブソーブゲートまで行き着いた俺たちは師匠と対峙する。

「……何故お前がここにいる? ここに来るべきは、私と共に秩序を生み出すべきアッシュ──オリジナル・ルークだ」
「……どうしても、止めないつもりか?」
「ふっ……私の邪魔をするな、レプリカ風情がっ!」
「くっ!」

 こうして師匠──いや、ヴァンとの最後の戦闘が始まった。

 ヴァンはもうやばいぐらい強い。でら強い。まじ強い。
 押されまくった所で、俺はさらにヴァンの人外攻撃をマトモに喰らっちまった。

「がはぁっ!?」
『ルーク!!』

 ああ、こりゃ死んだなぁと思った。

 意識を失いかけた俺の視界に、ヴァンに追い詰められたティアの姿が映った。

 ──プチンッ。

「この──シスコン顎髭野郎がぁぁ───!!」

 世界を白光が染め上げる。天を貫く光の柱に飲まれ、ヴァンが驚愕に顔を歪めた。

「ばかなぁっ?!」

 俺の石破ラブラブ超振動によって、カケラも残さず吹き飛んだヴァンの最期の言葉がそれでした。
 ……ん、なんというか、意外と小物っぽい最期の言葉でした。

 黙祷。

 まあ、それはともかく、今回の決め台詞。

「ヴァン、てめぇの敗因はたった一つだぜ。たった一つの単純シンプル な答えだ」

 ヴァンの消えた方向を睨み据え、手にした剣を突き付ける。

「てめぇは、俺を、怒らせた」

 ズギューンッと効果音を背負いつつ、俺は決め台詞をはいた。

「…………あ」

 そんな自分に酔っていた俺の耳に、ティアのちょっと間の抜けた声が届く。
 なんだなんだと視線を向けると、ティアはパッセージリングを見上げ、その顔をさぁと青ざめさせていた。
 ついで、ゲートを凄まじい振動が襲い始める。

「…………へ?」

 この段になって、俺たちはようやくティアの視線を追ってパッセージリングのあるはずの場所を見上げ──凍り付く。

『げっ!?』


《──クズがっ! 何をやってやがる! ヴァンを倒したなら、さっさとパッセージリングを起動しろ!》
「アッシュか。……いや、俺もそうしたいのは山々なんだけど、まことに言い辛い事にね」
《……何だ?》
「ヴァンを倒したのはいんだけど、パッセージリングも一緒に消し飛んだ」
《───?!?》

 混乱した思念が帰ってくる。
 うん、でもマジでどうしようね。

「ど、どうする!?」
「ど、どうすんの!?」
「ど、どうしたらいいのでしょう?」
「ど、どうするの!?」

「さて、どうしたもんか」
「どうしましょうかねぇ」


 最初は混乱する皆の言葉で、後の二つは状況が切迫しすぎて緊張感なくなった俺とジェイドの言葉。
 うん、いろいろと末期。

 こりゃもうそろそろ人類滅んだなぁーと思い始めた所で、光がセフィロトから降り注ぐ。

「──ルーク、私の言葉を聞いて欲しいですのー」

 降り注いだ光の先に居たミュウが突然、いやに落ち着きはらったダンディな声で話しかけてきやがった。

「……どうしたんだ、ミュウ? そんなキモイ声だして?」
「私はミュウじゃないですのー、ローレライですのー」

 ローレライ……とな?

「って、第七音素集合意識体のローレライかよ!?」
「その通りですのー」
「こ、今度はミュウを媒介にしたのか? 意外と節操ないのな」
「今は外聞に拘ってる余裕はないですのー」

 ミュウを媒介にしてるせいか、語尾がやたらとウザイ。
 込み上げるイライラを我慢して、問い掛ける。

「そんで何の用だ?」
「この状況をどうにかする方法を授けるですのー」

 ローレライによると、何でも今から俺に送る鍵を使うことで、ローレライを音符帯に送り届ける。そうすることで、大量の第七音素が空に駆け昇る過程で大地の一斉降下は上手く行き、障気そのものも消し飛ばされるらしい。その上、地殻振動の原因となっているものが丸々なくなることで、魔界の大地が完全に固まるという話だ。

 あまりに出来過ぎた話だが、まあ、その代わりというか、俺の肉体は力の過剰行使で音素乖離を起こすらしいけどな。

「……そんな!?」
「そりゃ……本当にそんなことが出来るのか、大佐?」
「……確かに、それほどの力を行使すれば、可能でしょうね」
「でも、そうしたらルークは……?」

 言葉を交わす皆を横目に、俺もどうするべきか考える。

 マジで、どうしたもんかね?

 ……と、考えるまでもないか。

「まあ、そういうことらしいから、みんなじゃあなー」

『軽っ!?』


「る、ルーク、ちょっと軽すぎやしないか?」
「まあ、俺はいつもこんなもんだろ」
「……まあ、そうだな。いつもお前はそうだったな」
「あばよ、親友」
「いや、そうじゃない。またな、、、 、親友」

 俺とガイは互いの手を打ち鳴らし、しばしの別れを告げた。


「今回ばかりは本気で戻って来れませんよ?」
「それでも、さ。他に手もないんだろ?」
「……そうですね。やれやれ、私は少しあなたのことを見くびっていたようです」
「そうか? きっとジェイドの評価は正しいと思うけどなぁ」
「いえ、あなたは私などよりもよっぽど価値がある。できることなら、生き残って欲しかった」
「へへへっ……そうか。じゃ、なにがなんでも生き残らないとな」
「ええ、それでは、また後で」

 珍しくも俺を評価したような事を告げるジェイドに、俺はかなり照れながら別れを終えた。


「ルークって本当に軽いよね」
「まあな。でも、辛気臭くなくていいだろ?」
「……まあ、そうだよね。はぁーイオン様になんて言おう」
「まあ、イオンにはよろしく言っといてくれ」
「うん、わかった。でも、後でルークが自分できちんと説明してよね」
「あーはいはい、わかったよ」

 アニスの遠回しな激励の言葉に、俺はいつものごとく安請け合いを返した。


「ルーク……本当に、実行するのですね?」
「ナタリア……うん、まあ、まだ生きてて欲しい人とか居るしな。特に、な、ナタリアとか……」
「ルーク……あなたの幼馴染みであること、わたくし誇りに思いますわ」
「…………あ、うん、そうね」

 俺の一世一代の告白はさらりと流されました。
 あーもう絶望した! ナタリアのど天然っぷりに絶望した!!

 傷心の俺はローレライの送ってきた鍵をかなり投げやりに受け取り、よろめきながら譜陣を展開し始める。

「……ルーク」
「ティア……あ、そうだ。ちょっと手を伸ばしてくれないか?」
「? ……いいけど」

 伸ばされたティアの手を取って、触れた箇所から障気を引っ張り上げる。引き剥がされた障気に汚染された第七音素が俺の身体に定着した。

「これは……?」
「よし、もう障気の汚染は大丈夫だ、ティア」
「どういうこと……?」
「第七音素同士は引き合うだろ? だから、ティアの障気に汚染された第七音素は、俺が引き受けて音符帯までもっていくよ」

 鍵を受け取った影響で、ローレライの知識が俺の中に流れ込んだから可能になった芸当だった。
 もう大丈夫だと笑いかける俺に、ティアは目を潤ませながら、押し殺した声を上げる。

「そんなことされても、私、嬉しく、なんか…ない……っ!」
「……そうか。まあ、ティアなら、そう言うか」

 だがまあ、ティアには世話になった。これくらいのお節介はさせてほしい。

「ルーク! 私は───」


「じゃあ、またな、みんな」


 その日、人々はセフィロトから天に向けて駆け上る光の柱を目撃した。




……まだ続くよ
  1. 2007/06/03(日) 00:30:18|
  2. TOA中編
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