全手動軽文量産機

──A.L.M──

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第三話 「今後の方針」


 公共事業の設立によって大規模な雇用を行い国内の資本投下を押し進めることで、国内経済の活性化と流通の発展を国家主導で押し進める。確か、地球でそんなことを提案した経済学者がいた筈だが……

「なんて名前だったかね……?」

「殿下、こちらの書類にもサインをお願いします」
「ん、わかった」

 机の上に山と積まれた書類。部屋を出入りする秘書官が途切れることはなく、見る見るうちに書類の山はより巨大なものへと変わっていく。

 見上げるだけで、げんなりしてしまう。なので、とりあえず手にした書類に意識を集中する。

(しかし、空中戦艦の存在も普通の船と同じものって考えれば、アルビオンって典型的な海洋シーレーン国家だよな)

 アルビオンの産業は飛行船による各国との貿易や輸送業務に依存している。というよりも、貿易に依存せざるを得なかった、というべきだろうか?

 浮遊大陸などというファンタジーな大陸が唯一の国土というだけあって、アルビオンの保有する地下資源は皆無に等しい。

 土の系統魔法による錬金が存在するため、平時の必要数には辛うじて届いていたが、戦争などが起これば、即座に足らなくなるだろう。

 資源を大量に抱え込んだ広大な領土を有する国々とアルビオンの間には、根本的な部分で覆しようのない国力差が存在することは否めなかった。

(まあ、要塞として見た場合、他国から攻め込むのは相当難しいだろうけど……内乱起こしてたら、世話ないよな)

 原作の展開が思い出されて、溜め息が口をつく。

 さらに言えばアルビオンは目立った産業が存在する訳でもない。前述した通り、錬金で足らない分の資源は、ひたすら他国からの輸入に頼っている。原作でヴァリエール公爵が言ってた通り、攻め込まれずとも、空路を封鎖されれば、いずれ干上がって何もできなくなるだろう。

 だが、ウェールズはなによりも、自国に目立った産業が存在しないことこそが問題と考えていた。いまだ近代的な産業が芽生えず、どの国家の産業も、中世の家内制手工業レベルに止まっているうちは、それでも良いだろう。

 しかし、既にゲルマニアなどといった、貴族平民問わず実力主義で登用する政策を押し進める国々が台頭してきているのが現状だ。このハルケギニアで、産業革命が起きるのも、そう遠い未来の話ではないだろう。

 いずれ必ず来るその日までに、何らかの基幹産業をアルビオンは独自に有している必要があるとウェールズは考えていた。

「……それにレコン・キスタの反乱が起こらなかったとしても、メイジを後方要員に転換していくのは必要だよな」

 産業革命に続くものは、貴族の枠に止まらない富裕層の誕生、爆発的な生産力の拡大、市場を求める経済戦争、平民でも扱える兵器の増産、そして、それらの果てに待つものは───平民による革命に他ならない。

 科学技術の発展が未熟なこの世界では、メイジの魔法が唯一の生活に利便性をもたらす技術である。革命が起こったとしても、社会整備や産業基盤に関わるメイジの魔法は必要不可欠なものとして残るだろう。

 現在から国家が主導して、メイジを研究員的な立場に組み込んで行けば、いずれ革命が起きたとしても、貴族は誰も縛り首だぁーなんてヒドイことにはならないはずだ。

「というか、メイジ使うなら後方だよな。戦場で使うなんて勿体ない」

 現在も戦場においては、空中戦艦による制空圏が確保できていなければ、いくら地上にメイジの大軍が展開していた所で、砲撃で一方的な殲滅が可能になっている。

 戦艦の運用そのものも、すべてをメイジに頼っている訳ではないため、平民で代替は可能だ。

 実際、空軍などは現時点においても、唯一平民が士官として身を立てることが可能な軍組織となっている。無論、艦長クラスは誰もが貴族に占められているが、一部の航海士や下士官には平民が既に存在するのだ。

 既に前例ができている以上、正式に士官としての教育を与えられた士官学校出の平民達の任官先としては、空軍が最有力候補になるだろうと、ウェールズは考えている。

 陸軍は貴族士官の塊なので、士官を配属するのは難しいだろうが、少し我慢するだけで、わざわざ金を払って集めなければ存在しない傭兵と違って、政府が雇った兵隊が常に配属されるようになるのだ。下士官程度なら、今後の交渉次第で幾らか譲歩してくるに違いない。

 また、生物である陸ガメを利用した『砲亀兵』などを用いずとも、陸上でも牽引可能な車輪付きの大砲を用意してやるか、固定砲台として活用するだけならば、砲手は平民で事足りる。

 平民がきちんと戦力になると証明してやれば、王軍において平民の定数は確実に増大していくことになるだろう。

「余ったメイジを後方に回して社会基盤を育成、軍で平民を活用することで諸侯や傭兵に頼らない常備軍を創設して内乱を牽制。でもガリアと戦争になっても現状の国力差から負けるのは確実、やるだけ無駄無駄。
 となると、やっぱり目指すべきは経済的な勝利、戦わずして勝つ、なんだろかねぇ」

 どっかの紅茶にこだわる紳士の国のごとく、世界の工場を目指すべきだろうか?

 少なくとも、いくつかの分野に跨がって、工業製品における世界的な規格品の地位を、早期のうちに国内企業が確立できれば、実質世界支配を達成したのと同じような状態だろう。

 統一規格、品質管理の概念を完全に導入するには、この中世世界ではかなりの苦労があるだろうが、今はまだそれなりの段階でいい。最低レベルのドットメイジであっても、容易に達成可能なレベルでいいので、統一規格を制定、大量の部品を精製させる。その後の検品や組み立てを行う者に平民を登用するだけでも、最低限のレベルだが、大量生産の概念をそれなりの規模で達成できるだろう。

「問題は何を作るかだが……やっぱり、船かね」

 平民士官のほとんどが空軍に配属されることを思えば、すぐに操舵する船が足らなくなるだろう。そこにメイジと平民を併用して、簡易的ながらも大量生産の概念を導入した、大量の船を製造することができる官営工場を当てれば、かなり大規模な需要が見込める。

 仮に船があまるようでも問題ない。艦砲を乗せない商船として民間に売り出せばいい。操舵手として平民士官を一時的に付けてやれば、平時で訓練を積むことも可能になると一石二鳥だ。

 更に言えば、船自体が官営工場で製造された製品なのだ。純粋に王家が稼ぎ出した税収に頼らない収益として、自由に使える予算を確保できる。そうして得た資金をもって、王族の権威を背景にした平民を組み入れた常備軍制度を更に充実させて行けば、国軍の軍事力を背景に、諸侯軍の規模を縮小して行くことも可能だろう。

 そこに、ウェールズがない頭使って捻り出した『構想』の下、密かに進行中である公共事業の成果が加われば……最終的に現状からすると、ある種革命的とも言える規模で、国内の経済活動を一気に拡大することも夢ではないはずだ。

「……まあ、どれもまだまだ先の話しだけどな」

 今はまだ、どれも実現するかどうかも定まらない、夢物語に過ぎなかった。

「とりあえず、小さいことから実績を積み重ねて、発言力を増して行くしかないか」

 実際、自分はまだまだ肉体的にも脆弱な子供に過ぎない。

 原作の開始時期まで、あと10年ぐらいだろうか?

 王族としての権威をフル活用しても、いったいどこまで行けることやら。

 はたして、原作の時点で、自分は生き残ることができるだろうか?

 ウェールズは今後の見通しを思うと、やはり溜め息が漏れてしまうのを、どうしても止められそうになかった。

  1. 2007/07/22(日) 21:31:14|
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