全手動軽文量産機

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第二話 「現状把握」


(やれやれ……この時点でも、それなりに派閥対立が起こってるのかよ)

 やってられないなと内心で愚痴を呟きながら、外面はニコニコと柔和な笑みを維持する。

 目の前では、寝込んでいた王子の快方を聞きつけた貴族達が挨拶に馳せ参じていた。

(おーおー良く言うもんだ。まあ、内心で何を思っているのかわかったものじゃないがな)

 挨拶を聞き流しながら、これまで何度となく考えた、今後の行動方針を頭に展開する。

 原作において、聖地奪還を掲げたレコン・キスタに王党派は破れた。
 敗因としては、軍部がレコン・キスタ側についたことが上げられるだろう。

(最終的にガリアの傀儡だったとわかった変な坊さんが、死体を蘇らせる指輪を使って人心鼓舞してたけど、あいつは所詮小者だ。さして重要な要素じゃないよな)

 軍部の掌握に失敗した時点で、アルビオン王家の負けは決まったようなものだろう。

 民草の平穏のためと出兵を撥ねつけた王家の志は立派だと思うが、人間は哀しいかな、権益に敏感なものだ。聖地奪還という軍部の発言力が増すような目標を掲げたレコン・キスタ側に、彼等が加わるのも道理というものだろう。

 それでも現代ならば、国家に対する反逆行為に当たるとして、軍の自制が働いた可能性もあった。しかし、無数に存在する諸侯の盟主として、王家が存在するのがアルビオンだ。軍に参加する者たちも、諸侯出身の貴族が大部分を占めるため、軍人たちのアルビオンという国家に帰属しているという意識は思いの他、現代よりも薄いものなんだろう。

 軍部の大半が反乱に加わった時点で、もはや王党派は単独で彼等に対抗できなくなっていたのだ。こうなってしまっては、仮に平民が王家を支持していたとしても、どうにもならない。ハルケギニアにおいて、戦争とは貴族のものだからだ。

(あぁー鬱だ。こりゃ相当厄介な問題だよな)

 軍を改革する必要性を改めて感じた。

(というか、レコン・キスタ側の主張を認めるってのはどうだ? ……いや、やっぱダメだな)

 一瞬頭に過った悪魔の囁きを即座に否定する。

 レコン・キスタの裏には大国ガリアがついている。仮に彼らの主張を認めた所で、アルビオンを良いように使い潰されるのが落ちだろう。魔道具を自在に操るミョズニトニルンがあちらに居ることも考えれば、最悪傀儡として意識を奪われる可能性すらあった。

(ともかく、軍を王家が掌握する必要があるのか。そんな事ができるのか?)

 長々と挨拶を続ける貴族たちが代わる代わるやってくる。だが、どいつも信用できそうになかった。

(くそっ! ともかく死にたくない以上、やるしかないのか)

 道は一つしかないとわかっていても、やはり気分が沈むのを止められそうになかった。


              * * *


 まず考えたのは、平民を軍で活用することだった。

 教育制度が充実していない以上、それなりの判断が要求される高級士官に貴族がつく必要性は認めよう。しかし、戦艦の運用要員に至るまで、一々貴族を用いる必要は感じられなかった。

「……というか、いずれ反乱を起こすとわかってる貴族の連中に高級士官を独占され続けてたまるかってんだよなぁ」

 アルビオン軍組織の編成表を眺めながら、溜め息をつく。

 やはりというか、案の定、高級士官はどこもかしこも貴族の名で埋めつくされている。

 当然だが、王政府直属の将軍や士官は誰もが貴族だ。彼等は平時も首都に屋敷を構え、有事の際は傭兵を指揮する立場に立つ。基本的に、彼等に近衛を加えた軍団が、王族を最高司令官に仰ぐ『王軍』と呼ばれる軍組織だ。

 他にも各地に大貴族が組織する『諸侯軍』と呼ばれる軍組織も存在する。彼等は有事の際にのみ、領民を徴兵し部隊を組織、土地を授けた王家との盟約に従い兵を出す義務を負っている。

 つまり、『王軍』で指揮される兵が戦いなれた傭兵であるのに対して、『諸侯軍』は普段鍬を握ってる戦のイの字も知らないような素人の農民兵ということになる。

 戦に長けた傭兵と、普段鍬を握ってるような農民では、錬度において比較にもならない。なら反乱起こっても大丈夫じゃねーか? とも考えられそうだが、ちょっと待って欲しい。

 逆を言えば、『王軍』には貴族士官しか存在しない訳で、敗局が一度濃厚になれば、指揮される傭兵は雪崩を打って逃げ出し、戦いたくても指揮する兵が存在しない、なんて言うお寒い状況が成立し得るのだ。

 さらに言えば、『王軍』に参加してる高級士官の大部分も、もとを正せば地方に領地を構える大貴族な訳で、『貴族による共和制』なんてエサで釣られた造反組がかなりの数出ることが予測される。

 それに対して、『諸侯軍』は領民ということもあって脱走は許されない。おまけに勢いづけば、破った王軍の指揮してた傭兵もどんどん吸収してデカクなる。勝てば勝つほどデカクなる。そうすると金払いもよくなって、商人も勝ち馬に乗る。軍需物資が放っておいても入ってくる。こうなるともーどうにもならない。

 そりゃ最終的に三百VS五万の負け戦にもなるってものだ。

「……まあ、これも一種のカケになりそうだけどな」

 平民を軍で活用するために、軍事教練を施す平民向け下士官育成学校を設立。

 各種関係施設の設立に必要な書類にサインをつけながら、ウェールズは苦い思いを飲み込んだ。

 軍において平民の存在感が増すことは、翻れば貴族の権威が揺らぐことに繋がる。最初のうちは平民に対する軽視もあって、あんなやつらに何も出来るものかと見なされ、さほど問題にはならないだろう。だが、徐々に軍務に就く平民の数が増していくことで、現状のポストを奪われる形になる貴族から相当の反発が発生する事が予想された。

 が、ウェールズはこの案を実行することを心に決めていた。

 どちらにしろ、このままの状態で原作の時系列に突入すれば、貴族達は反乱を起こすのだ。このまま何の行動も起こさないまま反乱を起こされることを考えれば、実力主義で登用していった平民の存在する常備軍を王党派の味方に引き入れた方が、まだマシというものだろう。

 上手く行けば、王家に対する不満を、平民と貴族の対立にすり替えることで、反乱の発生そのものをなくすことも可能かもしれない。

「……最悪の考えだけどな」

 自らの考えに吐き気がする。

 だが、生き残るためには仕方ない。

 それにレコン・キスタの主張だけは受け入れることができなかった。エルフから聖地奪還。個人で主張する分には結構なことだろう。対して原作でウェールズが言っていたような、戦果の拡大に伴い国土が荒廃し、平民が犠牲になることを憂いるという言葉。あれも尤もだと思う。

 しかし、レコン・キスタの背後には大国ガリアの影が存在する。聖地奪還もどこまで本気かわかったものではない。他国の干渉を許した時点で、見解の相違から発生した国内の政治闘争の枠を飛び出しているのだ。

「……縛り首は御免だよ」

 ぶるっと身体を震わせる。

 このまま王族としての権威を打ち出して、平民を早期の内から軍隊組織に取り入れ、アルビオン王軍の掌握と強化に務めるしかないだろう。

「……そう言えば、アンリエッタ王女とウェールズは原作だと恋仲だったか? 記憶にあんま彼女の姿が残ってないから、まだそこまで親しくなってる訳じゃないんだろうけど……彼女には、どう対応したもんかね」

 トリステインとアルビオンは王族同志が血縁関係にあるため、それなりに良好な関係を築けている。しかし、ゲルマニアとガリアに挟まれた位置に存在する彼の国の立地を思えば、内乱が起こった場合も、やはり原作通り援軍は期待できないだろう。

 そうした生臭い話を抜きにしても、なまじ原作での関係を知ってるため、どう対応したものか悩み所だった。

「……まあ、とりあえず保留だな」

 そもそも王女なんて接し方がわからんからなぁとヘタレたことを考えながら、ウェールズは思考を切り換える。

 それよりも、やはりガリアの存在が問題だった。

(内乱の体裁を繕ってるうちはまだいいが、ガリアが本気になって参戦してきたら、今のアルビオンの国力じゃ太刀打ちできない。どうしたもんかね)

 貿易立国として、飛行船を多数保有するアルビオンだったが、この時代、国土の差は厳然たる兵力差として存在する。

(……まあ、それでも平民が軽視されてるせいで、あくまで国の上位層、メイジの絶対数の違いでしかないのは僥倖だけどな)

 仮にガリアがゲルマニアのような政策を取り始めたら、もはや手に終えなくなるだろうが、これも考えても仕方のないことだ。

 ジョゼフが弟のオルレアン公を謀殺したのが、確か原作の三年~五年前のどっかだったはずだ。まだ時間はあると思っていいだろう。そもそもジョゼフの即位を阻めれば一番いいのだろうが、自国ですら碌に統制できてないような現状で、他国に手を出すような余裕はない。

「となると、やっぱり当面は軍の掌握と、社会基盤の整備を押し進めるしかない訳だ」

 新たな書類を手にとって、視線を落とす。

 書類の表紙には、デカデカとした文字で、官営企業の設立案、とだけ記されていた。


  1. 2007/07/22(日) 21:31:45|
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