全手動軽文量産機

──A.L.M──

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第二話 「一方その頃」


 アルビオンには万単位の軍勢が駐留できるような規模の軍港、あるいはそれに準じた機能をもった港が二つ存在する。

 一つは南部の軍港ロサイス。軍の工廠や空軍の発令所も存在する名実ともにアルビオン一の港だが、軍港という性質上、どこか硬質な印象を感じ取り、商人たちの中には敬遠する者たちも少なくない。

 もう一つは北部の港ダータルネス。主に国外から物資を仕入れた商船が積み荷を降ろすために停泊する港だ。広大な湖を利用した港に大小さまざまなフネが浮かぶ光景は、通常の海に浮かぶ船が泊まる港と何ら変わりない。

 ダータルネス港は戦時に軍の拠点として使われることも考慮されているが、平時においては商船ばかりが多数を占める。行き交う商船が次々と積荷を降ろし、露天では青空市が開かれ、様々な品々が売り買いされる活気に満ちた光景を目にすることができた。

 もっとも、それも二年前までの話だが。

 今やダータルネスは、急速な勢いで寂れつつあった。

 活気の欠けた港で、いままさに撤収作業にかかろうとしている商会があった。忙しそうに積荷をまとめる水夫の一人に、何故ここを離れるのか理由を尋ねれば、次のような答えが返るだろう。

「ダータルネス港を離れる理由ですか? へぇ。やっぱりウェールズ殿下の進めたコウキョウジギョウ……とか言いましたかね? そいつのおかげでアルビオン中に広がった定期便を使いたいってのが一番の理由でさぁ。
 ダータルネスは湖を利用して、どえらい数のフネが停泊できるってのが、これまでのウリでしたがね。今じゃ、国の外から仕入れたものをさばこうってなら、なんと言っても定期便のはしってる南部を経由するのが一番安上がりになりまさぁ。
 ウェールズ殿下のおかげで、港から先は高いカネ払ってまで、馬車使ってモノを運ぶ必要がなくなりやしたからね。おまけに定期便はフネ使ってるから届け先までつくのが早い上に、一度で大量にモノ運べるからその分安上がりときてる。
 まあ、貴族の皆様方にはわからない感覚かもしれやせんが、安くて早いってのは、やっぱり誰もが飛びつく理由になりまさぁね。これもウェールズ殿下さまさまってやつでさぁ」

 かなりおおざっぱな意見だが、これが商会を運営する者たちの意見の大部分を占めていたりする。

 もっとも拠点を移すにしても色々と面倒なことは多い。北部にもいずれ定期航路が引かれるんじゃないか? 当初は誰もがそう考え、いずれ航路が引かれるのを期待して、ダータルネスに止まる者たちも多かった。

 しかし、定期便の運行が開始されてから、既に二年の月日が流れた。

 南部以外にも次々と航路が展開されていく中で、一向にダータルネスを含む北部一帯に航路が展開される気配は見えない。国内にそれこそ網の目を張るように航路が展開されて行く中で、かたくなに北部一帯を統括する領主達が、航路の設定を認めようとしなかったからだ。

 結果として、商人たちは次々とダータルネスに見切りをつけ、拠点を他に移して行った。

 今や北部の拠点ダータルネス港は、急激な勢いで寂れつつあった。




               * * *



 まったくもって忌ま忌ましい。

 北部一帯を統括する大貴族──リーヴン伯は、ダータルネスの現状を報告する部下の言葉に額をひくつかせながら、重々しく口を開く。

「それで、お前たちは商人どもを引き止めるでもなく、オメオメと話だけ聞いて引き下がってきた訳か?」

 よもやそんなことはあるまいな? 目をギラつかせながら威圧する領主に、報告を上げた部下は背を丸めて縮こまりながら、額の汗を頻りに拭う。

「えー……しかし、お館さま。商会に手を出すのは得策ではありません。商人たちを無理やり押しとどめることができない以上、もはや仕方ないかと……」

「ふん! だからこそ、現状に対する打開策を示せといっているのだ!」

 あの若造がはじめた施策によって、一番のあおりを喰らったのがアルビオンにおける二大港の一つを有する北部だった。流通経路が整えられ、港が各地に分散した結果として、ダータルネスはいくつもの既得権益を失った。かつてはアルビオンにおいて有数の港に数えられていたダータルネスも、今や見る影もない勢いで急激に寂れていっている。

「かぁぁあ何とも忌ま忌ましい限りだ! あの若造めっ!!」

 ぺぺぺっぺっと唾を撒き散らしながら苛立つリーヴン伯に、部下が何かを決心したように顔を上げる。

「お館さま。もはや定期便を運用していないのは、東部と北部ぐらいのものです。やはりダータルネス港が完全に寂れる前に、ウェールズ殿下の申し出を受け入れるのが上策かと……」
「そんなことはわかっておるわ!!」

 そう、わかっている。自分とてバカではない。定期航路の受け入れがもっとも現実的な対応策であることぐらいは理解できる。それにあの若造の手腕は恐ろしいものがある。いずれ国王の地位につくのは確実。そんな相手の心証を損ねるのが長期的にみれば、いかに割にあわない行為かも想像がつく。

 しかし、感情的に納得できるかと言えば別ものだった。

 あの若造がすすめた一連の事業のせいで、北部が有していた権益の大半が崩されたのだ。これだけの損害を受けた以上、そうやすやすと相手に下るのは自身の矜持が許さなかった。リーヴン伯は半ば意地になって、定期航路の受け入れを拒絶していた。

「まったく、どいつもこいつも骨のないやつらばかりだ!」

 次々と航路の設定を受け入れる他の地方の領主ども。尻尾を振って定期便の運営に協力する愚かな下級貴族たち。どいつもこいつも気に入らない。

 ままならない現状に癇癪を起こして、目の前で縮こまる部下をひたすら怒鳴りつける。

 そこに、家令の一人が報告があると姿を見せた。話を中断されたリーヴン伯は苛立ちも露わに問い掛ける。

「どうした?」
「マンチェスター伯から使いの者がきております」
「なんだと?」

 マンチェスター伯と言えば東部一帯を統括する大貴族だ。面識だけはあったが、東部と北部という管轄する地の違いから、さして親交のない相手でもある。そんな相手から使者が来た?

 不審に想いながらも、とりあえず無視する訳にもいかないだろう。家令に通せと命じる。



「───おお、この出会いに感謝を始祖ブリミル!」
「お目通り頂けたことに感謝致しますわ、リーヴン伯」

 現れたのは、奇矯な雰囲気を漂わせる一人の司教と、どこか月夜のような暗い空気をまとった黒ずくめの女だ。呆気にとられるリーヴン伯を前に、司教の方がどこか芝居じみた大仰な仕種で名乗りを上げる。

「私の名はオリヴァー・クロムウェル。エルフどもに奪われた聖地を奪還する為に組織された、貴族連合の盟主を務めさせて貰っている」

 なんだこのイカれた坊主は? 最初に抱いたのは、そんな感想だった。

 聖地の奪還。それは始祖ブリミルに連なる者たちにとって、悲願と言えるだろう。だが過去に行われた幾度に渡る遠征も、そのことごとくが失敗している。今更聖地の奪還を掲げた組織が存在すると聞かされたところで寝耳に水、正気の沙汰とは思えない。

 だが相手が聖職者と言うこともあり、とりあえず鼻で笑い飛ばしたい気持ちを押さえながら、表面上の礼儀を通した言葉を返す。

「聖地の奪還を志す……ですか。そんな組織の盟主さまとやらが、私などにいったい何の用があると?」
「マンチェスター伯は私の友達だ。彼から、あなたも現状の体制を憂いる者達の一人だと聞いている。リーヴン伯、あなたも私の友達になって欲しい」
「友達……?」
「堕落した王家を廃し、ともに聖地の奪還を目指す仲間のことだ」
「!? じ、自分が何を言っているか、わかっているのか……!?」

 堕落した王家を廃し、聖地の奪還を目指す。それが意味する所は一つしかない。

 ───アルビオン王家の排除と、それに伴う貴族による共和制の開始。

「猊下の言葉に嘘はありません」

 内心の考えを読まれたようで、ぎょっとする。月夜のような雰囲気を漂わせる女が、目の前で交わされる二人の遣り取りを見据えながら、見る者の背筋を凍り付かせるような笑みをうっすらと浮かべていた。

「そうだとも。我等は国を越えて結ばれた貴族の連合。聖地奪還という志のもとに集まる憂国の士」

 身体を固まらせるしかないこちらを前に、クロムウェルと名乗った司教は、古めかしい指輪の嵌められた手に杖をとった。

「そのために、私は始祖より一つの力を授かった」
「始祖より力を授かった……?」

「そう、伝説の力───虚無を私は操るのだよ、リーヴン伯」

 告げられた言葉に、今度こそリーヴン伯は絶句した。



  1. 2007/07/21(土) 02:44:10|
  2. ジャンク作品
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:5

コメント

はじめまして。
ゼロの使い魔のssでは見たことのないタイプで、非常に面白いです。
マチルダやティファニアとのからみを楽しみにしています。
はやく出てきて~。

執筆がんばってください。
気長に待ってます。
  1. 2008/01/06(日) 22:33:59 |
  2. URL |
  3. 456 #-
  4. [ 編集]

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
  1. 2008/01/06(日) 22:48:05 |
  2. |
  3. #
  4. [ 編集]

面白い!

いやー! 面白い! 個人的な立ち回りよりこういう戦略政略で読ませるのはなかなかありません。期待して新作待ってます\(^O^)/
  1. 2008/01/23(水) 20:39:51 |
  2. URL |
  3. あき #uszzu23E
  4. [ 編集]

クロムウェルキター

はじめまして
ウェールズ憑依での歴史改編、しかもアルビオン(ブリテン)なだけに陰謀渦巻く(?)素敵ストーリーにwktkしております。
今回の話を読んで、何でこいつらとっとと暗殺しとかなかったんだろう?などという黒い疑問を抱いてしまいました。
まぁ、ヤっちまったら、状況証拠的に明らかにウェールズが犯人で却って反発買うだけっぽいんですけどね。
簒奪王くらいの権力基盤があれば其れも可能だったかもしれないのに・・・・・・
本当に惜しい、何故に十年早く生まれなかったウェールズ。
まぁ、これは原作にもいえますが、父王は結構なお年っぽいからウェールズにお兄さんぐらいいてもおかしくないんですけど。

それでは長文失礼しました。次回更新をお待ちしております。
  1. 2008/01/24(木) 23:47:39 |
  2. URL |
  3. Flan #PZngmIqU
  4. [ 編集]

感想

とても面白いです!!主人公のがんばりが報われるのかどうか、アンリエッタやティファニアがどう絡んで来るのかたのしみです。
次回の更新楽しみにしています。
  1. 2008/01/26(土) 15:28:07 |
  2. URL |
  3. 雪花 #-
  4. [ 編集]

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