全手動軽文量産機

──A.L.M──

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第三話「とある緩衝地帯の謀(はかりごと)」


 急速に北方の都市国家を併呑して成り上がった帝政ゲルマニア。
 始祖ブリミルの血脈を色濃く受け継ぐ歴史に名高いトリステイン王国。

 両国の境には、トリステイン側のヴァリエール公爵領と、ゲルマニア側のツェルプストー領。
 二大貴族の有する広大な領地が、隣接して存在していた。

 両国が戦争ともなれば、すぐさま互いの領地を巡って衝突する位置関係にある。
 そんな長年に渡り両家が紛争を繰り広げてきた、地域の一画。
 無造作に張られた天幕の下で、忙しなく動く人々の姿があった。


「ふぅ……やれやれ。何とか協定の調印までこぎ着けたな」

 最後の書類を片づけ、安堵の息をつく現場の責任者──リーヴン伯に、本国から送られてきた補佐官が称賛を口にする。

「あの厄介な二人を相手取り、交渉をまとめきる見事な手腕。さすがは北方の雄、リーヴン伯ですね」
「はっ、もはや道化に過ぎない身の上だがな」

 伯爵と言っても、代々継承してきた領地の大半が王領に編入されている。残るは名ばかりの爵位のみ。
 自嘲の入り混じった笑みを浮かべるリーヴン伯に、しかし補佐官は即座に否定を返す。

「いえ、リーヴン伯。それは謙遜が過ぎるというものですよ。ヴァリエール、ツェルプストー両家は互いを蛇蝎のごとく嫌い合っていました。今回、そんな両家が歩み寄る切っ掛けを作ったのが貴方であることに、何も変わりはありません」
「ふん……謙遜、か。ものは言いようだな」

 繰り返される純粋な称賛の言葉に、リーヴン伯はしかめ面で応じながら、今回の交渉が始まった経緯を脳裏に思い返した。


 トリステイン側のヴァリエール領、ゲルマニア側のツェルプストー領。両家の領土が隣接する潜在的な紛争地域。
 その一画にアルビオンが仲介者となることで、交戦の禁止された緩衝地帯を設け、交易の拠点候補を作り出す。
 それがリーヴン伯らアルビオンの使節団が、この地に派遣された目的だった。

 両家の隣接する領地の範囲は広大。隣接地域一帯、全てを防衛できるだけの戦力を維持することは、長年に渡り尋常でない負担を両家に強い続けてきた。

 対立を続けることの無意味さは、どちらの家もとうに理解していた。

 が、ときに意地は理屈をあっさりと凌駕するもの。

 積み上げられた対立の歴史は、そのまま殺し殺され殺し合う、仇と敵の連鎖を紡ぐ。両家が自発的に歩み寄るなど夢のまた夢。おまけに両家の本国も、このややここしい紛争地域に関しては、介入を諦めて久しいと来たものだ。

 そんな閉塞した状況に待ったをかけたのが、アルビオンから派遣されたリーヴン伯ら使節団の面々である。

 なぜ、アルビオンはこんな面倒くさい役割をわざわざ引き受けたのか?

 当初は胡散臭い目をもって迎えられた使節団だったが、会合を進める内に、協定内容にとある条項を含めるようアルビオン側が要請したことから、あっさりと両家の納得を得ることになる。

 定められた緩衝地域において、アルビオン資本の参入を許す。また交易の促進と拡大を図るべく、一部の関税や制限的な規則といった通商上の障壁を取り除くこと。

 つまり、紛争の調停を仲介する代わりに、上手く行ったらそこでの商売に一枚かませろという要求だ。

 多少の特典もあるならば、このような面倒くさい役割を率先して引き受けるのも理解できる話だった。

 かくして、交渉の糸口を掴んだ使節団の面々は、両家との折衝に明け暮れ続け、ようやく協定の調印までこぎ着けたのがつい先日のことである。

 あれだけの時間を掛けたのだ。導かれて当然の結果を引き出したに過ぎない。そう認識するリーヴン伯にとって、補佐官から受ける手放しの称賛は、素直に受け止め難いものがあった。

「それに閣下の折衝能力には、以前からウェールズ殿下も一目置いていると聞いています」
「ウェールズ殿下、か」

 更に続けられた言葉に、内心の複雑な想いを反映してか、リーヴン伯の口から意図せず苦い呻きが漏れた。

 レコン・キスタに参加した者たちの中でも、幹部に近い位置にいた自分たちの一族がまがりなりにも存続できたのも、すべては皇太子の取りなしがあればこそだ。自由に使い潰せる駒を手に入れるためだったと考えることも可能だが、それにしても随分と回りくどい。

「……やはり、不可解なものだな」

 思わず漏れた言葉に、補佐官がおやっと不思議そうに首を傾げる。

「まだ何か気になる点でもありましたか?」
「なぜ、あの皇太子は私などを使うのだろうな」

 今回の派遣にしてもそうだ。なぜ、わざわざ自分を使う必要があった?

 確かに、かつての決起者の筆頭幹部の一人が恭順していることを示すのは効果的だろう。
 外部への派遣ともなれば、国内の旧勢力と繋がりを持つのも難しくはなる。
 だが、それでもやりようによっては、いくらでも監視の目をかいくぐる方法は存在する。

 自分にその気がないことを見抜いているのかもしれないが、それにしても度量が広いというか、豪胆と言うべきか。

「不可解の一言に尽きる。あの皇太子が何を考えているのか、私にはよくわからんな」

 かぶりを振って、リーヴン伯は諦めの吐息を漏らした。呟かれた言葉は不遜とも取られ兼ねない内容だったが、補佐官はこれを諫めるでもなく、自身も苦笑を浮かべる。

「なるほど、そういうことですか。しかし、殿下に関する評価としては、よく聞く言葉ではありますがね」
「む、そうなのか?」

 かなり呆気に取られた。視線で真偽を問うこちらに、ええと補佐官はあっさり頷き返す。

「それに私の上役なら、続けてこう答えるでしょうね」

 だからこそ、面白いと。補佐官は微笑を浮かべながら、僅かに目を細めて見せた。

 面白いと来たか。リーヴン伯は顎先を押さえ唸りを上げる。記憶が確かなら、この補佐官の上司はサー・ヘンリ・ボーウッドと並び称される皇太子の腹心の一人、情報組織を統括するバーノン卿だったはず。

「……確かに、興味深い相手ではあるな。まあ、それに今更なにを思おうが、この立場が変わる訳でもない」

 こちらとしても上手く使われてやる以外に端から生き残る道はない。ならば素直に従うのが得策というものだろう。リーヴン伯は自身の置かれた現状を十分に理解していた。

「せいぜい家の再興のためにも、上手く使われてやるとするさ」
「ええ、その意気です。もともと殿下は好き嫌いで人事をするほど甘い御方ではありませんからね。閣下にそれだけの能力があると見込まれている。それだけは確かな事実です」
「ふん。だといいのだがな」

 あくまで鼻を鳴らすリーヴン伯に、補佐官はあくまで微笑を向ける。

「それに……」

 続けた言葉を僅かに切ると、補佐官は囁くような声音で、驚愕の事実を告げる。

「今回の件が成功すれば、次はおそらく東方となるでしょう」

 ロバ・アル・カイリエ。ハルケギニアの貴族にとって遥か彼方に位置する未踏の地。

「バカな!? 東方……だと……っ!?」

 沸き上がる動揺を必死に押さえつけながら、投げかけられた新たな情報の意味を咀嚼する。

「……いや、だが確かに、あの皇太子なら十分考えられる事態、なのか?」

 これまで皇太子の行ってきた施策を見るに、交易の拡大を重視してきたのは明らかだ。ならば、新たな交易路の開拓を最初から視野に入れていたとしても、何らおかしくない展開かもしれない。

 こちらの理解が追い付くのを待っていたのか、顔を上げたリーヴン伯に補佐官は頷き返す。

「今回の協定も足掛かりの一つ。殿下もリーヴン伯には、今後の交渉において、随分と期待されているようですよ」
「ぐっ……貴殿の言葉なら、きっと嘘はないのだろうな」

 このクソ忙しい状況ですら、まだ始まりに過ぎないということか。なし崩し的に主君と仰ぐ嵌めになった存在の人使いの荒さを思い、リーヴン伯はげんなりと顔をしかめた。

 これに補佐官は苦笑を浮かべながら、新たな仲間の登場を歓迎するように、優しくその肩を叩くのだった。



 こうして、日々は瞬く間に過ぎ行き、ついに協定調印の日を迎えた。


 既に何度となく交渉を重ねた上での調印式。今更、改めて話し合われるような内容は存在しない。

 だがヴァリエール公爵とツェルプストー家当主。同じ席につきながら、睨み合う両者の視線が和らぐことはない。


 何を眼付けてやがる、この野蛮人?
 ふん、そりゃこっちの台詞だ石頭。
 なんだと歴史も碌にない成り上がりのゲルマニア貴族如きがっ!?
 お、やるのか、この歴史だけが取り柄のトリステイン貴族めっ!?


 無言に包まれた天幕の中、視線のみで交わされる攻防に、剣呑な気配が周囲に溢れ出す。

 高まり続ける緊張感に、誰もが身動き一つ取れない。そんな中、慌ただしく調印式に担ぎ出されたウェールズは、同じ席の片隅で密かに溜め息を漏らす。

(あーあーひっでぇな。まあ、確かにこの二人を同時に相手にするのは、さすがのリーヴンのやつにも無理があったか)

 ウェールズは内心のげんなりした気持ちを面に出すことなく、自らをこの場に担ぎ出したリーヴンの判断が間違っていなかったことを改めて確認した。

 使えるものはなんでも使うという方針は、自身と通じるものがある。割り切ろうと思えば幾らでも割り切れる判断力の高さは、ウェールズがリーヴン伯を評価する一因となっていた。

 とりあえず、無言の対峙を続ける二人の間に割ってはいる。

「では、この協定を結ぶことに異存はありませんね?」

 両家の視線が、一瞬だけ、ウェールズに向かう。
 値踏みするような視線を受け流しながら、ウェールズが当たり障りのない微笑を浮かべることしばしの間。

 ヴァリエール家側の人間がムッツリした顔のまま頷く。
 ツェルプストー側の代表もしかめっ面のまま同意する。

 どこかほっとした空気が流れる中で、ウェールズの後を引き継ぐ形で、リーヴン伯が細かい事項を確認して行く。

「協定の条項としては、両家の隣接する領境に一定範囲で交戦を禁止、通商上の障壁を取り除かれた自由貿易地域を結成する。さらにオブザーバーとして、第三国となるアルビオンから、ウェールズ代表が使節団を派遣することになります。それでは、協定に調印を」

 両家の代表者が協定に調印する。見届けるはアルビオンの使節団。

 これといった盛り上がりに欠けたまま、この日、この瞬間、後に新たな貿易の可能性を示すことになる協定は調印された。



              * * *



 両家の領土が隣接する地域の一画に、交戦を禁止された緩衝地帯を設け、交易の拠点とする。
 ヴァリエール、ツェルプストー、両家にとっても得られる利益は大きい。
 交戦の制限された地域が存在するだけで、隣接する地域の投資は増大する。
 情勢の安定した地域が形成されれば、いずれは地域経済そのものの活性化や、生産性の向上にも繋がるだろう。

 一方が協定を破棄して、停戦地域に侵攻した場合、ウェールズがオブザーバーとして両家の調停に乗り出す。しかし、協定が維持され続ける限り、どちらか一方に肩入れすることもない。

 今回の協定にアルビオンが間に立つことがあっさりと受け入れられた裏には、緩衝地帯を形成することに関してはやぶさかでなくとも、実際に領地を接する両家だけで協定を維持できるどうかについては、どちらの家もまるで相手を信用できなかったことが大きい。

 周囲にしても、長年争いを繰り広げてきた両家が、生半可なことで手を結ぶとは到底思えなかった。
 仮に緩衝地帯が設定されることで自由な交易が保証されるとしても、いつ紛争が再会されるかわからないような地域に、進んで投資をしたがるような商人は少ないだろう。

 もちろん投機的なものほど、成功した際に得られるリターンは大きい。
 それなりの規模の投資は集まるだろうが、それでも友好国などの安定した地域との間で行われる取引とでは、雲泥の差が生じることは否めない。

 しかし、そこに第三国が仲介者となり、率先して自ら投資まで行うともなれば、話は大きく変わる。

 たとえ両家が互いに信用できなくとも、第三者の眼がある場所では、誰しも無茶な行動はなるべく自分からはとりたくないものだ。ましてや、調停役となるのは、内乱を驚くほどの短期間で鎮圧し、ますます精力的に空の覇者として君臨するアルビオン。

 さらに投資に関する問題も、アルビオンが進んで参入するとなれば、ある程度の信用は置ける。他の商会もこぞって後に続くはず。そうなれば、両家にとってもしめたもの。緩衝地帯を設定するだけで、自らはさしたる投資を行うこともなく、安定した交易地を得ることができる。

 第三者が噛む事で多少の優遇措置は取らざるを得なくなるが、このまま無意味な対立構造が延々と続くよりはよっぽどマシだ。

 協定を結ぶことで得られれるメリットとデメリットを検討した結果、現状よりは良くなるだろうと誰もが判断した。
 そんな妥協の産物として、今回の自由貿易協定は締結されたのだった。

「実際はアルビオンがいなくてとも成り立つ、詐欺まがいの手法なんだけどな」
「しかし、二国だけでは、信用に足る緩衝地帯を設けるにも一苦労どころの話ではなかったでしょう」

 帰りの飛行船の一室。ウェールズは工作先から合流したバーノンと、今回の交渉について話し合っていた。

 長年小競り合いを続けて来た両家が、地域間の信頼関係を形成するのは並大抵のことではない。
 このままアルビオンが何の介入もしなければ、両家の対立構造は延々と続いただろう。
 確かに、オブザーバーとして、第三者の調停は必須であったのかもしれない。

「まあ、そいつに関しても否定はしないさバーノン。ともかく」

 ハルケギニアの地図を目の前に広げたウェールズは、そこに一本の線を付け加える。

「これで良しと。ふむ、だいたい出揃ってきたな」

 地図はアルビオンを中心にして、現在展開されているハルケギニアの通商航路が書き込まれていた。
 アルビオンから始まった航路がトリステイン、ゲルマニアと続き、幾つかの小国を経由した先、地図の右端で途切れる。

 東方との境、メイジの天敵たるエルフ達が領有する大砂漠地帯の存在である。

「残る最後の問題は、エルフの連中が動かせるかどうか……か」
「どうにも理性的と言えば聞こえはいいですが、感情に乏しい連中のようですからね」

 これまでも、エルフ領には既に何回かに分けて使節団を派遣している。
 しかし、どうにも相手側の反応が鈍いことで、交渉は停滞していた。
 商売っ気が薄いというよりも、むしろこちらと交易する意義を見出せずにいるのではないかという報告もある。

 閉塞したコミュニティ内で、生活を維持できるならば、引き籠もるのも選択の一つだろうとウェールズも考えていた。
 先住魔法の存在を考えれば、完全に安定した循環型社会を形成するのも容易のはず。江戸時代のようなものだろうか?
 おまけに技術的にもこちらを圧倒していると来れば、わざわざ外と接触をもつ意義を見出せずとも、仕方のないことかもしれない。

「うーん……何とか交渉が成立する目処ぐらいは立つといいんだけどなぁ」

 半ばダメもとの交渉だ。国と国との付き合いは無理でも、小規模な商団の受け入れぐらいは認めてほしいものだ。最悪、東方までの交易路を開拓する上で、中継点の一つとして、通過を黙認させて貰うぐらいになるかもしれない。

「まあ、あんまり求め過ぎてもアレか。とりあえず今回の交渉締結を評価して、次のエルフ領行きの使節団代表は、リーヴンのおっさん推しとくかね」
「殿下もほとほと人使いが粗い御方ですねぇ」

 ニヤニヤと人の悪い笑みを浮かべながら茶々を入れるバーノンに、ウェールズは心外だと肩を竦めてみせる。

 レコン・キスタに参加した大貴族のほとんどは、王命により改易などといった厳罰に処されている。しかし、ただ従っただけの下級貴族達に関しては、処罰を免れた者たちも少なくない。

 だが、もとより領地を有さない下級貴族や領政に関わる官僚集団などは、自らの属する地方の大貴族に日々の糧を依存する存在だ。突然、仕えるべき相手がいなくなれば、処罰を下されずとも喰うに困ることになる。

 そんな追い詰められた下級貴族達や、改易の巻き添えを喰った家臣団に対して、ウェールズの統括する資本グループは積極的な雇用策を図っていた。

「向こうから使って下さいって言ってきてる人材がいるんだ。なら、どんどん有効に使ってやらないと勿体ないだろ?」
「左様でございますか」

 もちろんそうした人材の多くは、もとが謀叛に参加した陣営の人物だけあって、完全な信用は置き難い。それでも相手の資質を見極めて要所要所さえ押さえておけば、信頼はできずとも仕事を任せることは十分に可能であると、ウェールズは考えた。

 ようは、そこそこの水準にある人材を楽して手に入れたい。そんなウェールズが周囲を見渡したところ、ちょうど目につく位置に居たのが、たまたま彼らだったに過ぎない。

 しかし、期せず苦境へ追い込まれていた下級貴族達の多くは、そうしたウェールズの意図とは別に、一見すると「寛大な処置」以外のなにものにも見えない、皇太子から差し伸べられた救済策に対して感動した。感激した。本気で涙しちゃったのである。

 もとより参加などしたくもなかった反乱に駆り出された末、路頭に迷う嵌めになった身の上だ。王家に叛意した負い目もある。そんな所に、当の王家の人間から、当面の飯の保証と新たな職をセットで提示されたとなれば、ウェールズの人物像を見誤ったまま、心からの忠誠を捧げようとする者たちが大量に発生するのも、まあ、無理ない話なのかもしれない。

 最近のアルビオンの酒場では、噂を伝え聞いて大いに胸を篤くした者たちが、自国の皇太子の人となりを誇らしげに語りながら、杯を交わし合う光景を良く目にすることができるとかいう話もあった。

 すべて誤解である。

 噂とは、実に恐ろしいものであった。

「……さっきからどうも気になる反応だな。なんか問題でもあったか?」
「いえいえ、何も問題はありませんよ」

 バーノンは新たに傘下に加わった貴族の動向や、市井の下らない噂に至るまで、逐一把握して重要な情報を選別する位置に居る。
 前述した皇太子に関する噂に関しても勿論把握していたが、害になることもないと判断して放置していた。
 それでも、自らの仕える主が自身の評価を少しでも気にかける人物であれば、容易に耳に入るレベルの噂でもある。

 むしろ、それでこそ殿下というところですかね。ウェールズの自身に対するあまりの無頓着さに、バーノンはニヤニヤと笑みを深めるのだった。

「問題ないねぇ。お前が言うならそうなんだろうが、なんか怪しい反応だよ」

 胡散臭い反応を返すバーノンをしばし半眼で見据えていたウェールズだったが、直ぐにかぶりを振って頭を切り換える。ま、こいつが意味深なのはいつものことか。

「とりあえず、そっちに関してはそういう方針だから」
「了解です。こちらで大まかな指示は下しておきますな。殿下も、あまり根を詰めないよう気をつけて下さいよ?」
「あーはいはい、わかってるよ。仕事中にぶっ倒れるのは私としても御免だからな。くれぐれもよろしく頼むぞ、バーノン」
「はい。それでは失礼します、殿下」

 音もなく退室するバーノンの背中を見送ると、ウェールズは肩を大きく回しながら伸びをする。

「ふぅ……このままエルフと交渉が持てれば、大半の厄介事に解決の目処が立つかね」

 ガリアの切り札の一つとなるヨルムンガルドにしても、完全な開発には先住魔法が必須の存在。
 反射さえ掛けられていなければ、ただ動きが早いだけの改良型ゴーレム。幾らでもやりようはある。

 原作で火石と虚無の組み合わせが、両用艦隊を呆気なく薙ぎ払ったことも考えれば、可能な限りエルフ領とガリアの連携する可能性は絶っておきたいところだが……他にも問題は存在する。

 両者の連携が絶たれるということは必然的に、ガリアに代わりアルビオンがエルフ領に近づくことを意味するからだ。

「……そのとき、はたしてロマリアはどう動くか」

 ある意味、狂王以上に厄介な宗教国家の動向を思い、ウェールズは静かに瞼を閉じた。


  1. 2007/07/19(木) 00:30:00|
  2. ジャンク作品
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:15

コメント

更新待っていました!!
ウェールズが次に目を付けた地はヴァリエールとツェルプストーの境でしたか。
これは予想外でした。
しかもなんかここも大成長するフラグ立ってるし…
エルフとの交渉も味噌があれば、ロマリアさえうまくいけば大丈夫ですね。
エルフとは東方を介した密貿易にしてしまう手もありますし、責められてもこのウェールズなら
なんとかしてしまいそうだ。
続き楽しみにしてます。
  1. 2008/11/29(土) 23:08:32 |
  2. URL |
  3. 百人目 #Zd1t387I
  4. [ 編集]

初めまして、hunting groundです。

緩衝地帯に是非ともコンビニDMZを!
挨拶は「いらっしゃいませ、糞野郎共(ファキンガイズ)!!」でお願いします。

エルフ領の情報が少ないのでしたらとりあえず原作で出ている情報から他の部分を進めておいて、原作でエルフ領の情報が出るまで様子見してみてはいかがでしょうか?

また、ウェールズが基本迂闊だと書かれていましたが、ビダーシャルも相当なものですよ。ジョゼフが虚無だと気づいていなかったり、火石の使用法に考えがいたらなかったりとか。
まあ、基本思考停止型の人間(?)のようでしたので仕方がないことなのかもしれませんね。

あ、あとエルフ領の交易には料理を持っていったら如何でしょうか、エルフといっても三大欲求には勝てないでしょうし、ここでマルトー親父のターン!!
使節団にティファニアを同行させるのいいかもしれませんね。
  1. 2008/11/30(日) 20:30:46 |
  2. URL |
  3. hunting ground #t50BOgd.
  4. [ 編集]

そろそろ、時期的に原作開始の時間になりますね。
トリエステインの面々はどうからむのか、楽しみにしています。
  1. 2008/12/03(水) 00:42:24 |
  2. URL |
  3. とおりすがり #-
  4. [ 編集]

ここで味噌の出番なワケですね。
  1. 2008/12/04(木) 20:41:52 |
  2. URL |
  3. たか #AaIT8m4I
  4. [ 編集]

アルビオンってイギリスだから、ロマリアともめたらイギリス国教会っぽいのを作ってしまえば面白いかも。
  1. 2008/12/04(木) 22:59:14 |
  2. URL |
  3. タロ #etbfE.eg
  4. [ 編集]

>イギリス国教会
やった、これで離婚も重婚もやり放題だ(性的な意味で)
  1. 2008/12/05(金) 16:38:35 |
  2. URL |
  3. #onQl/FiE
  4. [ 編集]

アルビオンはイギリスの位置にあるから、まずヘルシング機関をつくらないと
  1. 2008/12/07(日) 22:06:46 |
  2. URL |
  3. リック #ZPy7yu16
  4. [ 編集]

ヘルシング機関を作るには、まず吸血鬼を配下にしないと
  1. 2008/12/10(水) 03:13:45 |
  2. URL |
  3. 謎怪 #zigoK5JE
  4. [ 編集]

吸血鬼を配下にするには、反乱兵を串刺しにしないと
  1. 2008/12/14(日) 18:25:24 |
  2. URL |
  3. 寒苦鳥 #-
  4. [ 編集]

聖地奪回戦争の英雄王のアンデット化による帰還ですね
  1. 2008/12/16(火) 00:54:51 |
  2. URL |
  3. #uZ4ICUpk
  4. [ 編集]

やっぱこのウェールズなら聖地奪還は望まないだろうからヘルシングはやっぱダメだな
  1. 2008/12/16(火) 01:00:14 |
  2. URL |
  3. リック #PPZyumDs
  4. [ 編集]

長い足を持つ船が必要ならコッパゲを誘致してオストラント号を早期就役させてしまえばいいじゃない
アンアンに魔法学園に変わり者がいるらしいね、同じ変わり者として話をしてみたいとか言って捻じ込んで
アルビオンの強大化した経済力、ウェールズの知識、コッパゲの力を持ってしたらオストラント号の大艦隊も夢じゃない!
  1. 2009/01/09(金) 10:17:22 |
  2. URL |
  3. 通りすがり #2ykNyDH.
  4. [ 編集]

反射付きオストランド号艦隊に原作3巻の東方の大砲を装備させてどこと戦うのか
  1. 2009/02/03(火) 14:07:48 |
  2. URL |
  3. #-
  4. [ 編集]

>反射付きオストラント号艦隊
どんな無敵艦隊!
  1. 2010/01/31(日) 23:28:56 |
  2. URL |
  3. #-
  4. [ 編集]

とりあえずご先祖様を英霊として召喚しませう
「問おう 貴公が私のマスターか?」
  1. 2010/02/23(火) 12:23:58 |
  2. URL |
  3. #YG9ONXHE
  4. [ 編集]

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