全手動軽文量産機

──A.L.M──

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番外その三『新年ネタで一本』




 ハルケギニアにおける新年の祝いは、始祖の降臨祭も兼ねて開催される。


「大晦日にまでこの惨状はないと思うんだ」
「……何かおっしゃりましたかな、殿下?」

 げっそりとつぶやいたウェールズのすぐ脇で、書類の処理に没頭していた侍従長パリーが、目だけいやにギラついた幽鬼めいた顔を上げた。

「いや、何でもない。何でもないよ、うんうん」
「左様でございますか……」

 どこか空々しいウェールズの返答だったが、殿下の突飛な発言はいつものことかと、パリーはすぐにやつれ切った表情で仕事へと戻った。

 この時期、アルビオンではサウスゴータの地に初めて降り立った始祖ブリミルに祈りを捧げようと、街道を行き交う人々で大陸中が賑わいを見せる。

 ウェールズが推進した航空事業の影響もあってか、今年は例年以上の人の入りが見込めそうだと、サウスゴータ家の当主も嬉しそうに語っていた。

 ようやく内乱を乗り越えた今年は、ウェールズ自身もマチルダやティファニアらと共に、モード大公が身内で開催する小規模な園遊会に出席して、最初だけでも落ち着いた雰囲気で新年を祝う予定になっていたのが、この惨状だ。

 ウェールズは執務室の惨憺たる現状を見回し、大きく溜め息をついた。

 折角の年の瀬だというのに、ウェールズは侍従長パリーを筆頭にした文官チームと共に、執務室で納期の迫った年末のさまざまな決算書類の処理に追われていた。書類の種類毎に幾つものスペースに区切られた部屋の隅には、蒼い顔した十数人もの文官達が倒れ伏す、死屍累々とした惨状が広がっている。

「しかし、もう新年なんだよなぁ……」

 まったくそうは思えない惨状だがな。ウェールズはついさっきまで考えていた益体もない思考に再び戻る。

(……まあ味噌から醤油もできたことだし、ついにアレを作る時期が来たってことかね……くっくっくっ)

 なにせ、年明けは無性にアレが喰いたくなるからな! かなり逝っちゃってる表情で、ぼそりと呟かれたウェールズの言葉を耳にしたものは、幸か不幸か、この部屋には誰一人として居なかった。


 翌日、ウェールズから各地の領主に向けて、皇太子が独自に所有する実験農場から収穫された米が、近衛のスクウェアクラスによる特殊な加工を施された状態で届けられた。この加工された米は『モチ』と名付けられ、その優れた携行性と腹持ちの良さからアルビオン全土に浸透し、身分の貴賤を問わず親しまれることになる。

 名目上は、時期がら備蓄が乏しくなる農村部の食糧事情を憂いたウェールズの特別な振る舞いとされた。

 が、実際は近衛を総動員して『モチ』を再現させたはいいものの、勢いに任せて造り過ぎて処分に困ったものを、ウェールズが各地の領主に頼み込んでアルビオン中にばら蒔いた。そんなグダグダな真相があったりする訳だが……まあ、いつものことである。


 閑話休題。


「さて……ともあれ、これぐらい処理出来てれば、とりあえず後はお前達だけで何とかなるかね?」

 寺院の打ち鳴らす鐘の音が鳴り響く中、ウェールズは積み上げられた決算書類の山を見上げ、パリーに問い掛ける。

「む、そう……ですな。後は新年を迎えた後、我等だけで十分に処理できるでしょう」
「なんか今回もすまないな、パリー。肝心の処理は、ほぼ任せる形になってしまうが」
「いえ、殿下には新年から数日掛けて各地で催される園遊会に顔を出す必要がありますからな。後は我々に任せて下され」
「そっか、ありがとうな。それじゃ、みんな後はよろしく頼んだぞ」

 亡者めいた呻き声ではあったが、部下達が確かな了承の返事を上げる。
 それを満足そうに聞き終えると、ウェールズは聖堂の鐘が鳴り響く中、執務室を後にした。

 最後の最後まで慌ただしい事この上ない、されど白の宮殿においては、もはや日常茶飯事となった光景だった。


















 第4.47部 番外その三 「ゴイスーでデンジャーな危機迫るよね、アルビオン(仮)」



















「ウェールズや……起きなさい、ウェールズや………」
「……ん……」

 遠くから響く声、優しく肩を揺する振動に、ウェールズは目を開く。


 ウェールズの目の前に、何故かブリーフ一丁で佇む小太り中年の姿があった。


「ハァハァ。起きましたね、ウェールズ」
「…………っ!?!?」

 あまりの衝撃にウェールズは目を見開いて絶句。

 否応なしに視界に飛び込む下半身は変態そのもの。上半身には一応長めのコートとTシャツを着込んでいるようだが。
 中に見える妙にぴっちりしたTシャツの中央には、漢字で『空中要塞』の四文字がデカデカと記されていたりする。
 ちなみに、背中から左右に伸びる天使の羽がパタパタと小刻みに蠢いて、その肥満体を空中に浮游させていた。

 陸に上がった金魚のごとく、口をパクパク開け閉めするしかないウェールズに、変態は自らの正体を告げる。

「ワタクシは殿下の治める王国キングダム 、『アルビオン』の精なのですよ」

 治める、国の精? ギギギと錆でも浮いたような動作で顔を上げるウェールズに、小太り中年はイイ笑顔で親指を立てた。

「いーーーやぁーーーーだぁーああああーーーーー!!」
「ああっ! 逃げないで逃げないでっ! 逃げないでっていうか引かないでっ!」

 涙目になって明後日の方向に駆け出すウェールズの肩を掴んで、アルビオンの精は必死に引き止める。
 説得の甲斐あってか、なんとか逃げるのだけは止めたウェールズに、アルビオンの精はゆっくりと語りかける。

「今日はガンバル殿下に、このワタクシ、新年の応援をしに参りました。さあ、この精霊様になんでも聞いてみなさい」

 ハァハァと荒い息をつきながら、ぼこりと突き出たお腹を叩くアルビオンの精。

 胡散臭い。とんでもなく胡散臭い。というか汗くさいっ!
 ウェールズは疑惑の視線でアルビオンの精を射抜きながら、とりあえず沸き上がる動揺を抑えて、相手の真偽を考える。

(……まあ、魔法なんてとんでもないものが存在する世界だ。国に精霊の一人ぐらいついてても、そうおかしな話でもないか)

 この相手が本物ならば、なにも聞かない方が損だろう。
 姿形はどう見てもおかしいが、とりあえずそれは脇に置いておく。

「なら、精霊サマ精霊サマ。一個だけ尋ねたい事が」
「ナンでしょう?」

「私はこっちに来てからなぜか不幸続きで、そらもうヒドイ有様なんですよ。気付いたらいずれ滅亡する国の王子になってるし、出会う部下は何故かムサイおっさんばかりだし、フラグが立ったかと思えば頭に死亡が必ずついてたりするしさぁっ!!」

 ずいずいと相手に詰め寄り言葉尻も熱く語りかけるウェールズに、アルビオンの精はやや気押されながら相槌を打つ。

「うっ、ウンウン。そ、そーね」
「そこで、精霊サマに一つ尋ねたい訳です。この先も私にはずーっとギャルもメカもエロもない、不幸にまみれた人生が待ってるんでしょうか?」
「……………」

 重苦しい沈黙が続くこと、しばしの間。
 至近まで詰め寄ったウェールズから顔を逸らして、アルビオンの精はボソリと一言。

「………まーね」
「うっわぁーーーーぁぁんんーーーーーーー」
「まっ、待ちなさいっ! お待ちなさいっ、ウェールズっ!」

 あっさりと肯定されたウェールズが駆け出すのを、アルビオンの精はお腹をボヨンボヨン揺らしながら必死に止める。

「ハァハァ……今のナシっ! ウソ! ノーカン! ノーカンよ!」
「……ううっ……マジですか、精霊サマ?」
「…………」
「何故に黙り込むかな!?」
「そ、そんな事よりもウェールズ、よくお聞きなさい!」

 ウェールズの肩をがしりと掴んで、アルビオンの精はまくし立てる。

「今年は貿易にばっかり専念して、ウハウハ言ってる場合じゃないのですよ!」
「へっ……?」

「今年のアルビオンには、なんともゴイスーでデンジャーな危機が迫っているのですよ!!」
「ゴイスーでデンジャー?」
「そうなのです。インダイレクトでデンジャーな危機とも言えますが、猶予はあまり有りません! さぁ、はやく目覚め行動に移るのです!」
「目覚める?」
「ウフフフ、お別れの時間が来たようです。名残惜しいですけど、くれぐれもガンバるのですよ、ウェールズや。さらば……」
「はぁ……」
「ギャーッこの私の首がモゲて中から水メイジ風の牛の頭が!!」
「え?」
「シャルルが最後の7日間を!?」
「え?」
「教皇に太っとい杖で世界扉開けてもらいなさい!」
「え?」
「ブリミルは亜人萌──」
「え──」




              * * *




「────はっ!?」


 豪奢な寝台。勢い良く毛布を撥ね除け、上半身を起き上がらせたまま、ウェールズは呆然と凍りつく。


「…………………………」


 窓から差し込む朝日を浴びながら、沈黙すること、しばしの間。


(……な、なんだか、とんでもない初夢を見たような気がするっ)


 凄まじいまでの戦慄がウェールズの全身を襲うが、肝心の夢の内容はまるで記憶に残っちゃいなかった。


 すべては、ついに原作開始時期も間近に迫った新年度。


 既にトリステイン南西部でガリアが盛大に暗躍しまくって久しい頃に見た、もはや手遅れなこと甚だしい初夢の内容だった。



  1. 2007/07/16(月) 10:00:00|
  2. ジャンク作品
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:7

コメント

あけましておめでとうございます

まさかのヘルシング笑
  1. 2009/01/01(木) 11:30:28 |
  2. URL |
  3. 硯市 #-
  4. [ 編集]

あけましておめでとうございます。

いや、これは無いわ。めっさ笑いましたがww
  1. 2009/01/01(木) 16:28:14 |
  2. URL |
  3. #-
  4. [ 編集]

あけましておめでとうございます。

今年一発目がこれwwww
  1. 2009/01/01(木) 23:55:46 |
  2. URL |
  3. #-
  4. [ 編集]

あけましておめでとうございます。

「水メイジ風の牛の頭」って、まさか「提督」に出てきたミノス?
  1. 2009/01/01(木) 23:57:51 |
  2. URL |
  3. めい #mQop/nM.
  4. [ 編集]

あけましておめでとうございます。

新年一発目からなんというカオスw いいぞ、もっとy(ry
本編のほうも期待しています
  1. 2009/01/02(金) 04:03:21 |
  2. URL |
  3. kkr #ZNK9dY9o
  4. [ 編集]

あけましておめでとうございます。

新年初っ端ありがとうございました。
ヘルシングは声優がすごいからDVDも見よう。
  1. 2009/01/02(金) 14:58:07 |
  2. URL |
  3. KIOSK #wiCHBZOk
  4. [ 編集]

ふう、ふう、十巻GET。
  1. 2009/03/30(月) 02:23:43 |
  2. URL |
  3. 抜刀 #3Vrs8CCM
  4. [ 編集]

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