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人類は接触しました その三


              【3】



『×月○日

 ついに人類は自らと同等あるいはそれ以上の知性を持った存在と接触を持った。
 はたして、彼らはいかなる存在なのか? 明日に調整を控えたいま、興奮をおさえきれない。
 一学者に過ぎない私だが、彼らと良好な関係を築いて行きたいものだ。


 ×月○日

 数人の妖精と親交を持つことに成功した。
 どうやら彼らは高度な科学技術を持ちながら、ひどく純朴な性格の持ち主のようだ。
 だがそれ故に、私たちは彼らに与える影響を慎重に検討した上で、行動しなければならない。
 彼らの先を歩むものとして、人類は模範を示さねばならないのだから。


 ×月○日

 プロジェクトの開始から一月あまりが経った。
 当初は見守るべき存在と彼らを見なしていた自分が、今は恥ずかしい。
 彼らは我等人類の遥か先を行く存在だ。人類は彼らに学ばねばなるまい。



 ×月○日

 彼らと議論を交わす過程で、興味深い話を耳にした。
 南太平洋に沈む巨大な都市の存在。何百年かに一度、海面に浮上することもあるそうだ。
 しかし、旧き神々とは何のことだろう? 何処かで聞いたことがあるような気もするのだが……?
 ともかく、彼らにも宗教的な概念が存在するとは驚きだ。


 ×月○日

 先日の話から、ふとした拍子で思いついた物語を、彼らと語り合った。
 それは子供時代に私がはまったコズミックホラーをもとにした話である。
 思いのまま語る私の話を聞いた彼らは、何やら考え込んでいる様子だった。
 なにか琴線に触れる部分があったのだろうか? 何にしろ、一時の退屈しのぎになれたなら幸いだ。



 ×月○日

 ……最近みょうな夢を見る。冒涜的な幾何学模様をもった存在が病的なまでに執拗な視線をこちらに向ける夢だ。
 相手の輪郭はぼやけて明確な形を理解することはできないのだが、沸き立つ宇宙的な恐怖を抑えられない。
 いったい、あの忌まわしき囁きはどんな意味をもっているのだろうか……?



 ×月○日

 まさか……彼らは実在した……? いや……そんなばかな……だが……。
 ああ、今日もまた夜が来る。



 ×月○日

 いあ いあ くとぅるふ ふんぐるい むぐるい くとぅるふ るる───』


 バタン。


 気付けば、わたしは勢い良くファイルを閉じていました。

「うわー……」

 もう、それしか感想が浮かびません。



 翌日、読み終えたファイルを片手に所長室を訪れたわたしを出迎え、おじいさんは感想を尋ねます。

「どうだった?」
「外宇宙の驚異を感じました」
「……まあ、何事も生真面に考えすぎるなということだろうな」

 それで済ませますか。

「ちなみに、著者の方はどうなりました?」
「ピンピンしてるぞ。なんかインスピレーションを受けたとかで、ホラー作家に転向してるが」

 調停官からホラー作家に転職。すごい方針転換もあったものです。

「最近わかってきたことだが、わたしたちが彼らに与える影響は思いのほか大きい。それは同時に、わたしたちも彼らから大きな影響を受けるということでもある。命の危機に繋がるような事態だけは何故か起こらんが、それ以外はなんでも有りと思っておいた方がいいだろうな」
「それにしても、限度はあるような気もしますが……」
「まあな。だが結局、彼らのことは彼らに任せるのが一番だ。わたし達にできることは、彼らの状況を把握して記録する。その程度に過ぎん」
「それでは調停官が存在する意味がないのでは?」
「もとから過度な干渉は禁じられている。確かに、彼らの技術力は素晴らしいものがあるが……」

 わずかに遠い目をすると、おじいさんはぶっちゃけました。

「まあ、アレだからな……」
「アレですか……」

 まあ、言いたいことはわかりますが。

「とりあえず、彼らを単なる学術的な観察対象と見るのではなく、身近な隣人として、自分なりに彼らとの付き合い方を見つけることから始めなさい」

 そう言われましても、困ったものです。
 学舎で受けた研修はまるで役に立ちそうにありません。いったい何から始めたものか。

「おじいさん」
「なんだ?」
「ヒントを。ヒントをプリーズ」

 他力本願ばんざーい。

 最も効率的な道筋を真っ先に導き出したわたしに向けて、おじいさんは何故か痛ましいものでも見るかのような視線を向けてきました。

「まったく……お前というやつは……まあいい。確か、お前はお菓子作りができたな」
「はい」
「彼らは甘いものが好きだ」
「はい?」

 惚けるわたしに、おじいさんは数度咳払いを挟むと、より簡単な言葉で言いなおします。

「つまり、まあなんだ、餌付けできるということだ」


 餌付けときましたか。

  1. 2009/09/20(日) 00:40:00|
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