全手動軽文量産機

──A.L.M──

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第一話 「始まりは唐突に」


「あーあ、暇だよな」
「そう言うなって、もうすぐ交代だろ?」
「ったく、折角軍に入ったってのにこんな辺境でお山の監視とかやってられないね」

 トリステイン南西部に位置する国境警備隊。
 砦周辺に目立った村落もなく、週に一度訪れる行商人の存在が唯一の娯楽と言えた。

「まあ、主立った都市勤務はお偉い領地持ちの貴族さまの手駒で十分手が足りるからな」
「そうそう、俺ら貧乏貴族は田舎で山を監視して過ごすのも仕方ないさ」
「世知柄い世の中だよな、まったく」

 トリステインで最後に大規模な戦が起きてから、かなり長い時が流れた。
 たとえ小規模なものでも、それこそ前王の時代にまで遡らなければ、それらしい会戦は見当たらない。

 この隊に詰める者たちも、誰もが実戦経験など皆無に等しい。ましてや国境を接する隣国が友好国とまでは行かずとも、それなりの関係を維持しているガリアともなれば、緊張感を保つのも難しい。
 国境警備と言っても、もはや名ばかりの存在と言えた。

「まあ、領地持ちでもない貧乏貴族がエキュー稼ぐためにはお仕事お仕事ってね」
「あーあ、さっさと交代にならねぇかな」

 ぼんやりと砦の物見から国境沿いを監視する。
 そのとき、空の向こうに幾つかの点が見えた。点はみるみる大きくなり、直ぐにそれが無数のフネと知れた。
 最初は呆気にとられて空を見上げていた隊員達だったが、直ぐに顔を見合せ訝しむ。

「おい、こんな時間に航行予定の船団なんかあったか?」
「いや、たぶんなかったと思うが……連絡ミスか?」
「とりあえず確認を……って、もう砦から竜が出たか」

 報告を入れるまでもなく、砦から数騎の風竜が飛び立ち、船団へ臨検に向かうのが見えた。
 まあ、あれだけ堂々と正面から姿を見せた船団だ。おそらく単なる連絡ミスだろう。
 誰もがそう思った。だから、直ぐに肩の力を抜いて野次を飛ばす。

「ったく、ちゃんと仕事しやがれってんだよ」
「でも、あれが商船なら久しぶりにいい酒が飲めそうだぜ」
「お、いいね。そんときは上司を肴に酒盛りしようぜ」

 笑い合った瞬間、ドンっと耳を貫く低重音が山間部に轟き渡った。
 何が起きたのか理解できぬまま、音の響いた方角を見上げる。
 すると空からぱらぱらと落ちていく無数の影が視界に移った。
 翼を砲弾に射抜かれた竜と、かつて乗り手だった者たちの末路がそれだった。

「なっ、臨検の使節を打ち落としただと……!?」
「バカなっ、連中トリステインに戦争でも仕掛ける……」

 言葉が途中で途切れた。風竜を仕留めたところで、上空に座す船団──いや艦隊が位置をかえ、その砲門が隊員達の詰める砦の方角を向く。


『げっ』


 次々と降り注ぐ情け容赦ない砲撃の嵐。
 制空権を完全に押さえられた状態で、一方的に砲撃を浴びせられ続ける状態に砦を悲鳴が包む。
 建造当初は何人もの土のスクウェアメイジの手で補強がなされた砦と言っても、これでは一溜まりもない。

「くそっくそっくそっエドのやつが殺られた! あいつらよくも……!」
「こんな宣戦布告もない奇襲なんて舐めやがって……っ! やつら空賊か!?」

 砦の各所から怒号と悲鳴が鳴り響き、次々にその声すらも途絶えていく。
 辛うじて指揮系統を維持する警備隊の隊長が、混乱する現場の人員を一喝する。

「落ち着け! ともかく、王都に伝令を飛ばす……いや近隣の領主へ警告が先か?」
「い、いったい何と伝令すれば……?」
「む、それは……」

 実戦から離れて久しいところに、この砲撃。
 隊長もまた混乱していることは隠せなかった。


「ちっ、なにを揉めてやがんだか、上の連中は」
「伝令をどこに飛ばすかだって、よ!」
「はっ、どこだって良いからさっさとして欲しいね。くそったれ共が攻めてきました、至急援軍寄越しやがれって、な!」

 現在進行形で敵艦隊から砲撃の集中砲火を受ける、砦に備えられた砲門部。
 機を見て反撃するが、相手はこちらの砲撃の射程距離を完全に見切っているのか、巧みに位置を変えて届かない。

「ちっ、まるで効いてねぇ……っ!!」
「まずいぞっ! こりゃ下手すると砦そのものが落ちる!」


 突如国境沿いに現れた正体不明の『敵』艦隊に、騒然となる国境警備隊。
 もはや砦の陥落も間近かと思われたそのとき、不意に砲撃が止んだ。
 呆気に取られるこちらを余所に、『敵』艦隊は隊列を整え始めていた。

 ふと、兵士の一人が敵艦隊と反対方向の空を見上げ、それに気付く。

「あれは……?」
「どうした……って、おお、援軍か!?」
「助かった!」

 トリステイン領内から駆けつける艦隊の姿に、砦内から一斉に歓声が上がる。
 これで助かった。一気に志気を盛り返し、駆けつけた援軍を歓呼の声を上げて迎える。
 その中で、一人の兵士が違和感に気付く。

「あれ?」
「何だ、変な顔して。俺たち助かったんだぞ?」
「いや、でも……何かおかしくないか?」
「何がだよ」
「いや、だってよ」


 救援に来たはずの艦隊の砲門が、なぜか『敵』艦ではなく、警備隊の詰める砦を向いていた。




              * * *



「呆気ないものだな」

 突然の奇襲の騒然となっていた砦の後方。トリステイン領内より援軍を装い距離を詰め、無防備な砦に急襲を仕掛けた艦隊の指揮を取るド・ポワチェ提督は、あまりの手応えのなさに詰まらなそうにつぶやく。

「いえ、これも全ては提督の采配の賜物でしょう」
「そうかね?」
「ええ、ええ。さすが元帥杖に最も近いと言われし提督! お見事です!」

 本来であれば守るべき砦を攻撃する後味の悪さから静まり返る艦内、ド・ポワチェ提督の側に控え喝采を上げる男が一人。その名はアルビオン内乱鎮圧以降、密かにトリステインに亡命していた、元アルビオン貴族派艦隊指令官、サー・ジョンストン。彼のあからさまな提督への持ち上げに艦橋勤務の幾人かは眉を潜めるが、持ち上げられた提督当人は悪い気はしないのか、面はゆげに胸を反り返らせる。

「まあ我が祖国ながらあまりの手応えのなさにいささか拍子抜けしたものだが、これで全ての手筈は整った」
「ええ、ええ。貴族が貴族らしく生きたあの時代。トリステインの先王陛下の治世を、再び我等の手に!」
「誇りを失い堕落した現王家に、もはやトリステインを統治する資格はなし!!」

 賛同の声を上げる麾下の幕僚達の発言を満足げに見渡すと、ド・ポワチェはニヤリと口端をつり上げ、制圧される砦に視線を移す。


 革命万歳! 我等が革命軍の手に王権を!!

 新生レコン・キスタ万歳!! 新盟主灰色卿グリ・シニヨール 万歳!!


 歓声を上げる兵士たち。そう、もはや元帥杖などどうでもいい。なぜならオレは王になるのだからな。ド・ポワチェは野心に瞳を燃やす。顔も見せない新盟主など何程のものか。今回の戦働きで、いずれ追い落としてみせる。

 笑いが止まらなかった。砦の陥落と同時に、トリステイン領内の同士達もまた動き出している。既にトリステイン南西部の大半は我等が手に落ちたも同然。だが油断はしない。クロムウェルの二の舞いを演じるつもりはない。そう、オレ達は上手くやる。

「さあ、革命の再開だ」

 この先に待つ栄光を夢想し、彼は笑みを深めた。




 俗物は探すまでもなく、何処にでも居るものだな。
 興奮に沸き立つ艦橋の片隅。静かに佇む漆黒の女──シェフィールドは自らの繰る人形の滑稽な姿を見据え、嘲笑う。



 艦隊を率いるド・ポワチェへ、最初にこの砦を落とすようジョンストンに提案させたのは、シェフィールドの指示だった。
 トリステイン南西部から国境を超えた更に先、そこにはガリアへ通じるヴェル・エル街道が存在する。
 南西部を落としたいま、ガリアとの間に存在する補給路を遮るものは何もない。もはや公然とトリステインに傭兵部隊を送り込むことが可能だった。

 完全に先手を奪い、これで駒の配置は磐石なものとなった。
 新たな遊戯の始まりにも、シェフィールドが抱く興奮の感情はない。
 ただ自らの仕える主が抱くであろう愉悦を想い、熱い吐息を漏らす。

 さて今度はいったいどう動く、皇太子?
 彼女にとってトリステインなど眼中にない。その視線の先にあるは浮游大陸アルビオン、王都ロンディニウムに座す者ただ一人






 トリステイン第101国境警備隊の壊滅とほぼ同時に、王都トリスタニアに宣戦布告文が届く。
 内容は政府において権力をほしいままにする枢機卿への非難と、王統政府の消極的な政治姿勢に対する抗議が大部分を占め、最後に『聖地奪還ノ為、我等神聖トリステイン共和政府ハ、トリステイン王統政府ニ対シ宣戦ヲ布告ス』と締めくくられていた。


 事件の発生は瞬く間に国を超えて広がり、各国はそれぞれ如何なる対応をすべきか情勢を見定める。
 ゲルマニアは当面の静観を決め込み、ロマリアは形だけながらも遺憾の意を示し、アルビオンではこの急報を耳にした国家要人の一人があまりの衝撃にお茶を吹く。


 ──この状況を決定づけたフィクサーは誰だ?


 トリステインにそれを知る者はまだなく、ただ突如として勃発した戦の準備に向け誰もが走り出す。


 かくして、後に水国動乱と呼ばれることになるトリステイン内乱は始まりを告げた。



  1. 2007/07/18(水) 00:50:00|
  2. ジャンク作品
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:12

コメント

来た来た北来た来たぜーーーーーーーーー!

待ったかいがありました。
  1. 2009/08/28(金) 13:17:03 |
  2. URL |
  3. 左行 #wLMIWoss
  4. [ 編集]


  ┃   ┃━┓                         ┃┃┃
┗┓━ ┃━┓ ┗━━━━━(゚∀゚)━━━━  ┃┃┃
┗┓━ ┗  ┃                         ┗┗┗
  ┗       ┃                    ┗┗┗
キタキタキタキタ━━━(゚∀゚≡(゚∀゚≡゚∀゚)≡゚∀゚)━━━━!!

あばばばばば。待っていました。
  1. 2009/08/28(金) 13:48:40 |
  2. URL |
  3. #-
  4. [ 編集]

これが、かのウェールズ・テューダーが紅茶を吹いた、瞬間か!
  1. 2009/08/28(金) 14:23:05 |
  2. URL |
  3. #-
  4. [ 編集]

ゴールデンウィークは去年のごとく怒濤の更新が無くて、悶々としながら過ごし、
果ては消えてしまったのかと、嘆き悲しんでいた約5ヶ月…

だがしかし!

つ・い・に・キター!!
まぁってました!!

トリステイン内乱編に突入。アンアンでは乗り越えることは不可能なのは間違いないでしょう。
やはり、ここは我らが皇太子が苦労するのでしょうね。
そして!アンアンとの愛を育むより、テファ、おマチさんとより一層親密になって欲しいと妄想する。
  1. 2009/08/28(金) 16:37:51 |
  2. URL |
  3. #kyi7HG76
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お待ちしておりました!!
  1. 2009/08/28(金) 18:12:12 |
  2. URL |
  3. ららら #SFo5/nok
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キタw
  1. 2009/08/28(金) 21:27:03 |
  2. URL |
  3. レネス #qd0pqeIc
  4. [ 編集]

…遅かったじゃないかw
  1. 2009/08/28(金) 23:18:35 |
  2. URL |
  3. #-
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まってました!!
しかし行き成り戦争はじまっちゃいましたかぁ。
まったくのオリジナルになりそうですし、どうなるか楽しみです!
  1. 2009/08/29(土) 08:53:47 |
  2. URL |
  3. #GCA3nAmE
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長生きはしてみるもんだ。こんないいこともある。

ビバ更新再開!!
  1. 2009/09/01(火) 12:24:22 |
  2. URL |
  3. #-
  4. [ 編集]

101と聞いてvolt101を連想したのはオレだけかw
  1. 2009/09/05(土) 06:29:30 |
  2. URL |
  3. #-
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お帰りなさーい!!
  1. 2009/09/12(土) 13:59:35 |
  2. URL |
  3. #-
  4. [ 編集]

考えてみれば枢機卿だけじゃなく高等法院長も外国人じゃありませんでしたっけ?
トリステインはロマリアによって支配されていると言われたらどうなるのでしょうか。
ロマリアの影響を取り除いたトリステインの有るべき姿を取り戻せとか、政務に携わらない王妃とか、トリステインには反乱のネタ山盛りの状態、虚無を持ち出せばルイズを筆頭にしたヴァリエール朝擁立派と現王統保持派に分け当人そっちのけで混乱を加熱させるとか、トリステインまるで隙が無い。
  1. 2009/11/23(月) 20:06:40 |
  2. URL |
  3. #Uh60rX9Y
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