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四月期報告



『四月期報告』



 アラシヤマ渓谷妖精自然保護区では、新規職員の増員にともない、形而上学的知性保有体妖精類(以下、妖精)と人類の新規交流を試みた。

 当初、渓谷に潜む妖精との遭遇は困難を極めることが予測されたが、職員考案による交流法を実施した結果として、妖精との早期接触に成功した。

 なお、接触は職員が事前に検討に検討を重ねた上で実施するに至った計画に乗っ取り実現された予定通りの行動であったため、この時接触するに至った妖精に対しても慎重な対応が可能となった。

 この結果からわかるように、遭遇が偶発的な要素に頼ったものであるなどという事実は何処にもなく、対話においても不確定要素が発生する余地のない、まったくもって問題ない接触となった。


 その後、離散期にあった妖精の活動状態は集合期へと移行。近隣域に生息していた妖精の大半が集まったと思われる。
 人口が密集した個体数の一地点への過密集合化により、文化ならび科学水準の異常活性が認められるようになった。

 この時には、大気中に半固形化して浮かぶ水滴または氷晶(雲粒の一種と思われる)を用いた、妖精が『くも』と称する構造体を有する擬似的な生態系を創造するに至り、これらに対して牧羊と漁業に酷似した活動を行う妖精の集落が形成される過程が確認できた。

 人類種の文化活動を模倣する遊びを好む妖精の性質を鑑みるに、彼らが『くも』の飼育と育成に至るのはまったくもってごく自然な流れと推測できる。


 なお、これら活動の発端になったものとして、『くも』を最初に発生させた焚き火と思しき構造体が発見されているが、この創造に職員が関わったなどという言語道断な事実は断じて認められず、いったい如何なる要素が契機となりあのような活動が発生するに至ったのか、視察を行った職員としても首を傾げるばかりである。


 その後、『くも』は菓子類を好む妖精の嗜好に合わせ品種改良が施されるに至り、甘味を有するような構造体に変化。
 妖精の菓子類に掛ける情熱は広く知られるところだが、この新種の『くも』開発を契機にして、『くも』の無軌道な増産・育成計画が実施された。

 結果として緻密なバランスの上に均衡を保っていた『くも』種の生態系は破壊されるに至り、妖精の活動は離散期への移行を止むなくされた。


 既存の研究報告が記している通り、集合期は比較的短期(五~七日)で離散期へ移行する。
 しかし今回は前述したように、前例にない短期における離散期への移行が確認された。
 これは妖精という種族特有の、自らの創造物に対する持続的感心の希薄さを鑑みた上でも、不可解な結果と考察できる。


 如何なる要素が離散期への移行を促進させたかについては目下調査中であるが、解決の見通しは立っていない。
 職員の対応に不備があった可能性は否定できないが、人類が感知し得ない原因が存在する可能性も鑑みるに、過度な干渉を行ってまで原因を探るような、早計は避けるべきであろう。


 なお、今回妖精に創造された『くも』の一部が渓谷の上空へと拡散したようで、雨天時には地上からも僅かに甘味を含んだ水の粒が確認できる。

 今後『くも』が大気中に発生する水滴または氷晶と同化する事で、さらなる拡散を遂げたり変異・多様化するといった事態の発生する可能性も否定はできない。

 こうした結果を受け、『くも』の創造主たる妖精に対してより詳細なデータを求め調査を行うべきだという意見も出るだろう。

 しかし『くも』の成分に危険性は一切なく、日々発生する大気中の水滴または氷晶雲の絶対数と比較すれば、まったくもって問題にならない程度の量と思われる。

 内政非干渉の立場に立つ一調停官としても、過度な干渉により最悪の事態が発生し得る危険性を鑑みるに、やはり前述したように早計な調査に乗り出すことは賛同できない。


 そもそも集合期の妖精は文化水準が著しく上昇しているため、調停官は人類社会からの過度な影響が起こらないよう留意しなければならない。

 人類種と同等か、より高次の技術体系を有する妖精社会に対する過度の干渉は、調停理事会の理念に反するばかりか、調停業務そのものの存在意義を揺るがしかねないものである。


 そのような観点から考えても、担当職員の至った保留という結論は真っ当なものであり、そうした認識を導く過程においても恣意的な操作を挟み込む余地などあるはずもなくまったくもって実に本当に決してこれっぽっちも何の問題もなかった。


  1. 2009/09/20(日) 00:15:06|
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